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柏崎刈羽原子力発電所の敷地内の断層について(3)

 柏崎刈羽原発活断層問題研究会は、4月初頭、原発敷地内の火山灰(刈羽テフラ)と敷地周辺の火山灰(藤橋40火山灰)とが層序学的にも、また化学組成上も同一のものと公表しました。以降、東京電力(株)は2度にわたって「見解」を出すとともに、6月20日には全県に新潟日報への新聞折り込みチラシを配布しました。ただし、柏﨑地域のものにくらべて、新潟市域のものでは少し簡略にされています。

東電チラシトップ 東京電力(株)が6月20日に柏﨑地域で配布したチラシの表題。

 このチラシは、「簡明で分かりやすい」という評価もありますが、東電としての見解を単純化しただけで、科学的に見れば、「ウソ」でもって国民・県民を欺くものでしかありません。「活断層ではない」と繰り返すだけで、「安全神話」の焼き直しです。

活断層とは何か?

東電活断層 東電チラシの「活断層は何か」への回答
 その典型がこれ。もっともらしく書かれていますが、活断層の定義を書いたこの回答自体にウソがあります。一般の地震(例えば、東南海地震や首都圏直下地震など)を予測する国の地震調査委員会は今後活動しうる断層の目安を数10万年前以降に活動した断層としています。12~13万年前という基準は原子力業界が、福島原発事故前の2006年に、独自に定めたものです。それまでは5万年としていました。2重・3重のウソを重ねた回答です。正しく書くならば、「国の原子力安全委員会が、2006年に、活断層を12~13万年以降に活動したものとしました。それに照らせば、敷地内断層は活断層ではありません。」と書くべきです。福島原発事故の教訓は生かされていません。

 最も国民・県民を愚弄しているのは、次の項です。

 柏﨑市中位段丘を構成する地層

東電柱状 敷地内の地層の積み重なりに関する解釈(左)と、同じ火山灰が見いだされた柏崎市藤橋地域の地層の積み重なりの解釈(右)です。
 藤橋地域は中位段丘が分布する地域なので、その地表面は12~13万年にせざるを得ません。この図では藤橋地域の火山灰が、敷地内のものと同じと言うことが書かれていますが、地面の下の地層がどのように重なっているのか全く書かれていない白抜きのままです。調査していないので分からないのであれば、そう書くべきです。

東電藤橋柱状加筆 東電の解釈に沿って、私の方で書き加えれば、上図の右側の柱状はこのようになります。東電の解釈に基づけば、20~30万年前の地層と12~13万円前の地層の境界が藤橋40火山灰の上位にあるが、調査を行っていないので、どこにあるかは分からないというのが実態です。、

藤橋の柱状研究会 一方、活断層問題研究会の調査・解析に基づけば、藤橋地域の地層の積み重なりはこのようになります。地表の崖などで観察されるのはたかだか20mほどですので、下部がどのようになっているのかは分かりません。
 だからこそ、より精細な調査が必要なのです。

 私たち、研究会は引き続き、現地での調査とともに、必要に応じて、ボーリング掘削で下位の地層と12~13万年前の地層の関係を明らかにしていきます。 

 東電の見解に対して、研究会としても、東電解釈の問題点を「科学を踏まえて」分かりやすく国民・県民に知らせるべく努めます。
 巻原発の建設を止めた県民の良識、あふれる情報の中で正しいものは何かを見抜く力に信頼を寄せて、新しく見いだしたものも含めて科学的知見を発信していきます。
  
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柏崎刈羽原子力発電所の敷地内の断層について(2)

 4月29日に行った記者会見での説明資料です。全部で16葉の図表ですが、ここでは主なものだけを掲出します。要請書で指摘した以下の3つの論点についての説明です。
 1.柏崎平野南部の中位段丘構成層堆積物中の藤橋40火山灰の年代層序について。
 2.大湊砂層の堆積過程と中子軽石(NG)火山灰の年代について。
 3.地殻変動を考慮しない段丘形成過程について。

まず、これらの問題点が、なぜ、敷地内の断層の活動年代に関わる問題になるのか、という点です。

敷地内断層活動年代旧版 図1:敷地内断層の活動年代(東電資料)
    東京電力は、東北地方太平洋沖地震後もしばらくは敷地内23本の断層の活動年代を図1のように示していました。最も新しく活動したα・β断層は、安田層を細分したA3部層の堆積時に活動しているとしていました。下位のA2部層と上位のA3部層は一部不整合としていました。

敷地内断層活動年代新盤 
  図2:敷地内断層の活動年代に関すわ最新(2017.4.25)の敷地内地質層序区分。

 この図でも、A2部層とA3部層は一部不整合とされる。A1ならびにA2部層は高位段丘堆積物(周辺では青海川層と呼ばれる)に相当する。それを部分的にしろ不整合で覆うA3、A4部層を年代的に高位段丘層に相当する20万年前まで連続させることはできない。

 1.柏崎平野南部の中位段丘構成層堆積物中の藤橋40火山灰の年代層序について
 そもそも、地層のおおよその年代は、その地層の固さや色調といった産状から推定される。その上で、微化石や火山灰等で細かく検討されるものである。
 図3は、柏﨑市藤橋において、1992年から93年にかけて、新潟工科大学の建設工事が行われてい当時の、取り付け道路工事に見られた露頭写真である。この露頭は、荒浜砂丘団体研究グループ(1996)とともに、岸ほか(1996)でも、その柱状が記述され、ともに、中位段丘構成層の安田層とされている。この露頭から、藤橋40をはじめ、下位から藤橋10、藤橋20、から、藤橋70までの一連の火山灰が産出した。その柱状は要請書(前回ブログ掲載)の図3に示されている。 
藤橋工事中写真1
  図3: 柏﨑市藤橋の1993年当時の露頭写真。シルト層を主とするが、やや灰色がかった細粒~中粒の砂層を挟む。 この地層は中位段丘堆積物の模式地とされる、柏﨑市横山の安田層と同じ、一連の堆積物である。東京電力は藤橋40火山灰を、下北沖に見いだされたG-10火山灰と対比し、この地層の大部分を高位段丘相当層とせざるを得なくなったのである。

  東京電力が、こうした野外での地層の三条を無視した解釈に追い込まれたのは、敷地内断層の活動年代を、どうしても現在の規制基準(これ自体問題を含む)である、活断層は12~13万年前以降に活動した断層という定義に照らして、より古いものとしなければならないからである。
  その唯一の根拠が、敷地内の刈羽テフラ(=藤橋40火山灰)が、2014年にMatsu'ura ほかが報告した下北半島沖の海底堆積物中に見いだされた一群の火山灰のうち、23万年という年代が推定されているG-10火山灰に主成分組成から対比されるというものである。
 しかし、この主成分組成にもとづく対比には問題がある。
 G-10火山灰と同じ組成を示すのは、より下位にあり、32万年前という年代が推定されるG-14火山灰もほぼ同じ組成を持っている(図4)。
下北沖Gシリーズと刈羽テフラ   図4: 刈羽テフラ(=藤橋40火山灰)と下北半島沖のGシリーズの火山灰の組成

  藤橋の一群の火山灰は、図5に示すように、柏崎平野の北方まで分布する中位段丘構成の安田層中に広く追跡可能な火山灰であり、藤橋40火山灰より下位の地層がすべて、高位段丘堆積物に相当する青海川層に対比されるとする東京電力の解釈は、これら各地の中位段丘を構成する主たる部分もより古い時代の地層とすることとなる。
火山灰対比
  図5: 柏崎平野の安田層(中位段丘構成層)中に火山灰層の対比(荒浜砂丘団体研究グループ、1996)。

 2.大湊砂層の堆積過程と中子軽石(NG)火山灰の年代について
  
 東京電力は、安田層を覆う大湊砂層の下部からカミングトン閃石が産出する火山灰を中子軽石(NG)に対比し、その年代を13万年としている(図1)。
 研究会ではあらためてその産出層準やその構成鉱物の調査を行い、刈羽村十日町や柏﨑市長崎で中子軽石を確認(要請書の図6)した。両地点とも、大湊砂層の最上部の試料から、下の図6に示すような自形の有色鉱物を多く含む、火山ガラスのほとんど見られない火山灰を、中子軽石(NG)と同定した。
長崎顕微鏡写真
  図6: 柏﨑市長崎における大湊砂層最上部の砂層中の火山灰層の顕微鏡写真
 
東京電力は敷地内を含むいくつかの地点で、この中子軽石(NG)を挟む大湊砂層の下位に、汽水性環境下で堆積した安田層下部を認めている。要請書でも触れているが、大湊砂層は、地球温暖化に伴って海面が上昇し、敷地周辺から北部にかけて広く海岸が広がった時期の堆積物であり、その下位に海水準上昇期の堆積物(安田層下部)が存在することは、この安田層と大湊砂層は13万年前以降の最終間氷期(図7)の堆積物であり、大湊砂層の堆積時期は、海面がなお数10mも低い13万年と言うことはあり得ない。汽水環境下の安田層下部の堆積時期が13万年以降であり、大湊砂層は海面が最も高くなった12.5万年以降、中位段丘堆積物が離水する時期の堆積物とするのが合理的である。
海水準変動2     図7: 30万年前以降の海水準変動曲線。下部に酸素同位体ステージ区分が書き込まれている。

  3.地殻変動を考慮しない段丘形成過程について

  柏崎平野周辺の地質を広く調査した岸ほか(1996)は、大湊砂層や安田層の上面の標高分布図を描いた(図8)。東京電力は、かって、この図をもとに、こうした地層は水深20mに及ぶ平底型の潟湖とその海岸線の堆積物とする説を唱えた。一方で、安田層は、現在の平野を流下する河川の勾配に近いので、その分布高度は河川勾配だという説も唱えていた。
  しかし、この図は、敷地周辺地域の12~13万年以降の地殻変動を示している。海水の影響下(その海面高度はほぼ現在のゼロメートルに近い)でほぼ水平に近い傾きを持って堆積した地層が、堆積後北では約45mまで、南では約30mを超す高さまで隆起したことを示す。中心部分でさえ、20mは隆起していることが読み取れる。
東電地殻変動
       図8:柏崎平野の段丘面の高度分布(東京電力の資料から)

  東京電力は、この地域の12~13万年前以降の地殻変動を無視する解釈を一貫して取ってきたが、2007年の中越沖地震で、この西山丘陵地域から東の頸城給料にかけて、傾動したり、褶曲の携帯に調和的な運動が観測されるに及んで、地殻変動の全面的な否定は出来なくなった。
 しかし、4月27日の刈羽テフラの関する東電の見解(1)では、また、過去30数万年前以降の周辺地域の地殻変動を考慮しない、段丘形成過程のイメージを示した(要請書の図8参照)。
 
 5月29日の記者会見では、研究会は、段丘の現在の概念を、とくに、その高度に軸をおいて示した(図9)。 
 
段丘構成層
           図9: 柏崎平野周辺の段丘の高度分布概念図 

  こうした段丘の基本的概念が身についていれば、東電の段丘形成過程のイメージ(要請書の図8)が描かれることはないであろう。なお、東電はその後、さすがにこの指摘には答えざるを得ず、修正を試みている。これについては、次の稿で論ずることとする。

柏崎刈羽原子力発電所敷地内の断層について(1)

 柏崎刈羽原発活断層問題研究会(代表 大野隆一郎)は5月22日、原子力規制委員会に対して、要請書「柏崎刈羽原子力発電所敷地ならびにその周辺の中・上部更新統の層序に関する厳正な科学的審査の申し入れ」を送付しました。同要請書は東京電力にも参考までに送付しました。そして、29日には、その要請書の内容について記者会見を行っています。

 研究会による規制委への要請に対し、同29日、東京電力(株)は 「刈羽テフラに関する見解について(2)」を柏﨑市の全戸訪問で配布するとともに、HPで公表しました。なお、見解(1)は4月27日に出しています。順次報告するとして、ここではまず、研究会の規制委への要請書を掲出します。  

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2017年(平成29年)522

 

原子力規制委員会委員長

田中 俊一 様

 

柏崎刈羽原発活断層問題研究会

代表 大野 隆一郎

 

要 請 書

 

柏崎刈羽原子力発電所敷地ならびにその周辺の

中・上部更新統の層序に関する厳正な科学的審査の申し入れ

 

  東京電力(株)の柏崎刈羽原子力発電所の6・7号機について、貴委員会は、規制基準への適合性審査を進めてこられました。その中で、敷地内に走る23本の断層の活動年代を20万~30万年前とする東京電力(株)の解析・解釈を妥当とし、これらの断層を「規制基準」に照らして、活断層ではないと判断されました。

 私たち研究会は、貴委員会に対してこれらの断層の活動年代に関わる厳正で科学的な審査を要請してきました。しかるに、貴委員会による上記の判断は、中・上部更新統の層序に関する地質学的・地形学的疑念を解明することなく下されたものです。ここにあらためて、この間、明らかになってきた3つの層序学的問題にしぼってその問題点を述べ、貴委員会が敷地内断層の活動年代に関わる中・上部更新統に関する科学的審査のやり直しを要請します。その上で、3点の層序学的問題点に関する科学的回答を求めます。


1.柏崎平野南部の中位段丘堆積物中の藤橋40火山灰の年代層序について 

柏崎平野南部には標高2030mの中位段丘が広く分布します(図1)。東京電力(株)はこの中位段丘とそれを構成する安田層を説明する際に、常に平野南部の佐藤池新田の露頭写真を示し、安田層を上部と下部に区分してきました(東電、平成28930日 規制委員会第404回審査会合東電資料4-2-3。「敷地近傍の地質・地質構造について」11ページ)。この露頭はすでに法面工事が行われ、詳細な観察/調査は不可能です。

横山周辺段丘分布佐藤池軽井川書き込み 

     図1:柏崎平野南部の段丘分布(東電資料加筆)。緑色が中位段丘MI面。紫は高位段丘の分布

 研究会では昨年(2016年)来、その周辺地域であらためて安田層の層序と層相の調査を進めるとともに、荒浜砂丘団体研究グループ(1996)で記述された藤橋地域の中位段丘堆積物の調査を行ってきました(図1)。その調査において、佐藤池新田露頭の西南西約900mに位置するプロスパー(株)敷地(柏﨑市軽井川)の崖に大きな露頭を見いだし、観察の結果、この露頭は佐藤池新田や安田層の模式地横山と同じ層序関係を示す中位段丘堆積物である(図2)。

向陽団地東大露頭層序区分 

   図2: 中位段丘を構成する安田層。向陽団地東のプロスパー(株)(柏崎市軽井川)

 一連の地層中には不整合は認定できない。

 そして、この露頭の最下部には 厚さ10cm(ただし、層相はかなり乱れていて厚さが変化に富む)ほどの2枚の火山灰が新たに見いだされた。その産出標高はおよそ16mである。これをkouyoK10,K20とした。

 1993年当時の露頭調査では、刈羽テフラと一致する藤橋40火山灰は標高およそ13.5mの極細粒砂とシルトの互層の間に産する。また、その下位の標高8mから8.5mの間には藤橋10火山灰と呼ばれた、柏崎平野に広く追跡できる火山灰層(荒浜団体研究グループ、1966)が産する。 一方、荒浜砂丘団体研究グル-プ(1996)が、安田層中に藤橋40火山灰(敷地内刈羽テフラに一致)を含む一連の火山灰層を記述(図3)した柏﨑市藤橋の露頭はすでに見られない。そこで、昨年来あらためて、藤橋において露頭のはぎとりを試み、火山灰試料の採取を行った。

新藤橋柱状切り抜き 

     図3:荒浜砂丘団体研究グル-プが1993年に作成し、火山灰等の試料を採取hした露頭の柱状図。

      この露頭も新潟工科大の整備とともに消滅している。

  藤橋地域における昨年のはぎとり調査において標高8.5から8.8mの間で、FK10-4FK45等の火山灰層を採取した。

  軽井川のkouyo-K10-K20などの火山灰試料と藤橋工科大のFK-10-4,FK45などの 火山灰試料の主成分分析を行った。その結果の一部を図4に示す。なお、図4には参考までに、荒浜砂丘団体研究グループ(1996)の藤橋40火山灰と東京電力から提供を受けた刈羽テフラ(N2シリーズ)の分析結果も示す。

 向陽・藤橋分析結果 

   図4: 柏崎刈羽原発周辺の安田層中の火山灰の主成分化学分析結果。凡例中のKokaならびにKouyoはそれぞ 

      れ、工科大(藤橋地域)と向陽団地東の露頭(軽井川)の試料を示す。


工科大(藤橋)はぎとりの試料FK10-4およびF-45は、向陽団地東(軽井川)の大露頭のK-10,K-20K-30と同じ主成分化学組成を示すことは明らかである。

また、これらの火山灰の主成分組成は、TiO2FeO含有量が低いことを特徴とすることから、荒浜砂丘団体研究グル-プ(1996)の藤橋10あるいは藤橋20の火山灰に類似する。  

層序学的に重要なことは、今回採取・分析したFK10-4やFK45 と番号を付した試料は、刈羽テフラと同一の火山灰と認められた藤橋40火山灰より低い高さから産出することである。

 東京電力は427日の「刈羽テフラに関する見解」で、藤橋40火山灰と刈羽テフラの同一性を認めた上で、これらの火山灰を含む層準を3020万年前の古安田層とし、藤橋地域では、その上に1213万年前の安田層が不整合で覆っているという可能性を指摘した(図5)。しかし、藤橋においても、また軽井川(向陽団地東)の露頭においても、少なくとも露頭においては不整合は認めがたい。東京電力(株)は検証無しの解釈を示したにすぎない。 

藤橋想像 

  図5: 東京電力による、安田層模式地(横山)と隣接する藤橋地域の堆積物の解釈。


藤橋40火山灰より下位に産出する火山灰と同じ組成を有する火山灰が、藤橋周辺だけでなく、東京電力(株)が柏崎平野周辺の中位段丘とする段丘分分布域の各地から広く産出する(荒浜砂丘団体研究グループ、1996)ことは、これらが高位段丘堆積物相当の青海川層相当とする東京電力(株)の解釈と大きく矛盾していることは明らかである。

 

2.大湊砂層の堆積過程と中子軽石(NG)火山灰の年代に関する非科学的解釈

 

 東京電力(株)は、岸ほか(1996)をもとに、安田層下部、時には古安田層を直接不整合で覆って、敷地とその北部を中心に分布する大湊砂層の上部に中子軽石(NG)が挟まれるとし、その降灰年代を13万年前としてきた。2011年の安全保安院の意見聴取会で指摘された、海水準変動の矛盾を解消するべく、東京電力(株)は、中子軽石(NG)を特徴付けるカミングトン閃石が大湊砂層のより下部に含まれることをもって、中子軽石(NG)火山灰の降灰時期には大湊砂層が堆積し始めたとした。しかし、その年代は13万年に据え置いたままである。この解析と解釈では、層序と大湊砂層の堆積様式と年代の矛盾は全く解決していない。

 研究会では、東京電力()NG観察地点のLoc.(十日市)ならびにLoc.2(長崎)(図6)において、岸ほか(1996)で記述されたように、大湊砂層の最上部に中子軽石(NG)火山灰を採取・検鏡し、その存在を確認した。

長崎露頭 

    図6:柏崎市長崎における大湊砂層最上部の産状と試料採取位置。両試料とも、斜方輝石、角閃石、カミン

      グトン閃石を多く含み、中子軽石に同定される。


この露頭でも、大湊砂層には重鉱物の平行葉理ないし低角くさび状の葉理が明瞭であり、大湊砂層は前浜堆積物を含む海浜堆積物である。

酸素同位体ステージMIS5eの海進期堆積物である汽水性の安田層下部の堆積物の上位に、広く堆積した海浜堆積物である大湊砂層はシーケンス層序で言う海氾濫期、もしくは高海水準期堆積体である。ところが、東京電力(株)は海面が現在よりも数10mも低い13万年前(図7)に大湊砂層の堆積が始まったとしているが、海進期の堆積体である安田層下部の上位に13万年前の大湊砂層が堆積することはシーケンス層序学的にはあり得ない。

海水準変動ステージ加筆  

  図7: 過去35万年間の海水準変動(サイクル機構による「地層処分技術に関する報告書」に赤数字

     で酸素同位体ステージ区分を加筆)


大湊砂層は酸素同位体ステージ5eの高海水準期の堆積物であり、その年代は12.512万年前とするのが妥当である。

 東京電力(株)は鈴木(2000)や「火山灰アトラス」をもとに、中子軽石(NG)を13万年としているが、これらの文献では対比されるIz-Kt火山灰の年代を13万年前より古いとしているのであり、その年代についてのコンセンサスはない。大湊砂層中の産状を考慮すれば、中子軽石の年代はより若くなるとするのが合理的である。

 

3.地殻変動を考慮しない段丘形成過程の非科学性

 

東京電力(株)の2017427日の「見解」における高位・中位段丘堆積物の堆積のイメージ、ならびに段丘形成過程に関する解釈は、基礎的知識を欠いた非科学的な解釈である(図8)。

段丘形成過程イメージ 

   図8: 東京電力の段丘を構成する地層の堆積のイメージ(東電の4月27日の見解(1)から)。高い岩盤

     の上に、高位段丘が描かれているが、MIS7ステージ(20~24万年前頃)には、この高度(40m)よ

     りも高く海面が上昇していたとする考えである。


現在の海水準は酸素同位体ステージの7や5の高海水準期と同じレベルの高い水準にある(図7)。もし、東京電力(株)の見解にあるような、地層の堆積と段丘の形成を海水準変動に伴う堆積と浸食の繰り返しで説明すれば、現在の高海水準期には酸素同位体ステージMIS7や5の堆積物はすべて海中に没していることとなる。

現実には、柏崎平野周辺の海成高位段丘は海抜高度4060m、海成中位段丘は2030mにある。これらの海の影響下で堆積した地層群が、当時の高海面期の高さ(現在とほぼ同じ)で堆積した地層群は、その後、地殻の隆起に伴って、現在の高さにまでもたらされたものである。高位段丘はおよそ、20万年で4060mへ、中位段丘はおよそ10万年で2030mにまで隆起した。この地殻の変動を考慮しなければ、地層の形成と段丘の形成は理解できない。また、段丘崖の形成も、東京電力(株)は海面低下による浸食で説明しているが、これにも無理がある。陸水による浸食だけでは、普通の山地斜面の勾配で浸食されるだけであり、段丘崖のような急勾配にはならない。海成段丘の段丘崖は高海面期に波浪で浸食される海食崖である。

 もちろん、海水準変動の速度は、地殻変動の速さをはるかにしのぎ、地層、特に浅海域での地層形成に大きな影響を与える。しかし、これらの地層が段丘化していくには、地殻変動を考慮に入れない形成過程の解釈は成り立たない。

 

  以上、3点にわたって、東京電力()の安田層の堆積年代に関する解析/解釈の科学的問題を述べた。これらの疑念を残したまま、柏崎刈羽原子力発電所が規制基準に適合しているとの判断を示すことは許されない。貴委員会での厳正で科学的な審査を要請するものである。

 

 なお、当研究会は求められれば、この要請書の内容に関わって貴委員会からの聴取に応じる用意があることを付言する。

 

文献(一部のみ示す)

 

 荒浜砂丘団体研究グループ(1996) 新潟県柏崎平野の上部更新統中の火山灰-広域火山灰との対比-.地球科学,502号,194-189

 岸 清・宮脇理一郎・宮脇明子(1996) 新潟県柏崎平野における上部更新統の層序と古環境の復元。第四紀研究、351号、1-16.

  

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*柏崎刈羽原発活断層問題研究会     代表 大野隆一郎(元高校教員)

  飯川健勝(元高校教員:理学博士),武本和幸(技術士:測量士),立石雅昭(新潟大学名誉教授:理学博士),寺崎紘一(元高校教員),徳間正一(元高校教員),中島哲宏(元高校教員),渡辺秀男(元中学校教員:理学博士),卜部厚志(新潟大学准教授.理学博士)

         代表連絡先  〒 951-8126 新潟市中央区学校町通二番町598番地

                         大野 隆一郎



柏崎刈羽原発と東電救済策

 経産省が12月9日に開催した第6回「東電改革・1F問題委員会」。ここで経産省は福島第一原発の賠償・除染、廃炉と汚染水対策の総費用を三年前の見積もりの倍、21兆5000億とした。その費用、とりわけ、賠償費用を今後何10年にもわたって電気料金として国民にも負担させる等々、この委員会の目的はまさに、「原発という安い電力で恩恵を受けた国民」の負担で「東電を救済」する道筋作りと言える。
 そして、この「改革」なるものの柱が、東電柏崎刈羽原発の再稼働。東電への不信払拭のために、国が前面に出るとともに、「先進的」な同業者との連携、共同企業体によって再稼働を進める、と謳う。知事選において示された県民の意思や思いに逆行する、柏崎刈羽原発再稼働ありきの東電救済策の問題をみんなで考えたい。

東電1号機 

 提言原案骨子案http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/touden_1f/pdf/006_01_00.pdf)
に示された「II.福島への責任、国民への還元を目指した非連続の経営改革の姿」の「1.再編、統合に向けた共同事業体の設立」で、次のように謳う。
   5)柏崎刈羽原子力発電所は重要課題。

      自主的バックフィットに対する躊躇

      メルトダウン隠蔽問題を生みだした体質の根本的治癒

      地元本位の事業体制

      安全優先の組織文化

      規制要求を越える自立対応理念

      先進的な他電力の協力も躊躇無く要請

      他の原子力事業者を越える改革

 

新潟県の「原発の安全管理に関する技術委員会」での議論も踏まえつつ、これらの項を見るとき、私は少なくとも次の3つの点を、県民が共有してほしい課題だと感じています。

   

まず、安全優先の組織文化

はじめに再稼働ありき、そのための組織再編、というこの改革案の流れ自体が「原発」の危険性を後方に追いやる発想です。安全優先というならば、安全、すなわち、県民の命と暮らしが守れるかどうかが問われるのであり、県民の安心のためには何が重要かを示すべきです。少なくとも、「新しい規制基準は世界一」といううたい文句を撤回し、福島原発事故の教訓をくみ尽くす姿勢が見えない限り、安全優先とは言えません。


 次に、隠蔽体質

隠蔽は東電だけではありません。ムラぐるみの隠蔽体質こそが問われています。

 メルトダウンという技術的用語について、原発関連事業者はもちろん、規制機関を含む政府も、そして研究者も、メルトダウンの定義・判断基準が存在することを知らなかった、という言い訳はあり得ません。受け取れば、直ちに避難命令を発しなければならない「15条通報」の項目には「炉心溶融=メルトダウン」が存在します。この用語の定義存在を5年間隠してきたのは、官邸、経産省も含む、ムラです。東電が隠蔽と言わざるをえないとしたこのことについて、政府・経産省、そして、ほかの電力事業者は自らの組織的対応の過ちを一切不問にしています。安全文化、隠蔽体質について語る資格を有しません。


 3つめ、先進的他電力の協力を要請。

 ここに言う先進とは何か。九電、関電、四電を言うのか、そこでどのように地元同意を取り付けたかを学ぶべし、協力を仰げ、という提起は、「本末転倒」。それとも、東電が無視し、対策を怠った津波の試算結果について、対応していた東北電力を先進としているのだろうか。東北電力管内に立地する柏崎刈羽原発の再稼働に東電と共同で当たれ、という「国策」?

 連携して別会社を作るが、その儲けは東電救済に回す、って、資本主義における民間企業のありようとは考えられない発想ですね。


 「国が前面に出る」とはこういう国民負担による東電救済策を国民に押しつけることなのでしょうかね。

 まだ、思いつきにすぎない。しかし、黙っていると、原発を進め、そこから多大な密を得てきたムラの権力の意向の元で、私たちの負担と危険性が増大する事態を看過できません。旺盛で闊達な議論をお願いしたいですね。

 なお、参考までに、この問題に関しては、全体として、東洋経済online原発処理21.5兆円、東電支援策は不安だらけ(http://toyokeizai.net/articles/-/149084)がおすすめ。

 また、この項を考える機会を与えていただいた、新潟日報東京支社の記者の方に御礼申し上げます。日報では、丹念な取材を踏まえて、関連した記事作りを進めているとのことです。

柏崎刈羽原発の地下水問題

 12月3日、柏崎刈羽原発差止訴訟原告弁護団で地下水問題を学習しました。内容を簡単に報告します。


柏崎刈羽原発での地下水くみ上げ量は福島第1の4倍


 今なお、収束のめどが立たない福島第1原発。その収束・廃炉を妨げている要因の一つは膨大な汚染水を今なお生み出している地下水。稼働時のくみ上げ量は毎日800トン。

 しかし、柏崎刈羽原発では毎日2千数百トンから3千トンがくみ上げられている。新潟では積雪の影響で、冬場の地下水量が多い。(表1)。


サブドレイン排出量 表1: 柏崎刈羽原発の毎日の地下水くみ上げ量(平成26年度と27年度)

 この膨大な地下水の流入に対して、建屋周辺に流れ込む地下水を集め、排水する設備が設置されている。 原子炉建屋の下には集水管が網の目状に施され(図1・図2)、原子炉建屋やタービン建屋の四隅に掘られたドレインに導かれる。ドレインに流入した水が一定の高さになると、ポンプが働き、排水路を経て、海に流される仕組みである。図1の緑色は鮮新~更新統の西山層、黄土色は埋め戻し土である。
サブドレイン断面(7号機)図1:サブドレイン設備断面図
集水管設置状況   図2:サブドレイン配置平面図と断面図

 浮力で建屋を浮かす地下水ー事前調査は必須

 
 なぜ、こんな地下水対策が施されているのか、それは、この膨大な地下水による浮力が建屋を浮かすからです。従って、当然、建設前に地下水の量やその流れのシステムの解析が行われます。
 
 柏崎刈羽原発差止訴訟の原告弁護団では、昨12月3日、柏崎刈羽原発1号機の建設前に敷地の地下水の調査を担当された,元電力中央研究所の本島 勲さんをお招きして、勉強会を開きました。

 これまで、東電は原告側からの地下水に関する求釈明に対して、十分な回答を寄せていませんでしたが、それは地下水に関してほとんど注目せず、資料の管理もずさんであったことの裏返しでもあります。
 本島さんは1975年と76年の調査に基づいて、79年に調査報告を出されました。それに沿って必要な普段の地下水に対しては対策がとられているとのことです。
 その調査報告では敷地内で網目状に掘った井戸の地下水位データを元にした、等地下水位線も描かれていた由です。等地下水位線図(図3)があれば、表2の透水係数や地層の分布をもとに、地下水の流れも解読できます。
等地下水位線 
図3:柏崎刈羽原発の等地下水位線図(網目交点に掘られた井戸の地下水面の高度から描かれている)。この図と、地層各層の上限面図など地質との関連の解析が必要)
透水係数 表2: 敷地を構成する地層の透水係数

 この各層の水の通しやすさを示す透水係数は、試料を採取し、実験で求めます。この表では安田層
は一つの値になっていますが、東電自身の現在の知見で言えば、安田層は中期更新世から後期更新世にかけての堆積物で、その性状もかなり多様です。一つの代表値で表すのは間違っています。
ちなみに、柏崎刈羽原発の1~4号機側に設置された防潮堤が地震に伴う液状化を引き起こす可能性が否定できないことが大きな問題になっていますが、このことはとりもなおさず、これまで液状化しないとしてきた「安田層」のより詳細な解析でもってその可能性が出てきたものです。

中越沖地震直後急増したくみ上げ量


2007年の中越沖地震のあと、このくみ上げ量は表3に見るように、急増しています。
地震直後くみ上げ量 表3:中越沖地震前後の柏崎刈羽原発における地下水くみ上げ量

  その理由は現在のところ全く不明です。9月以降のデータがあるのかどうかも分かりません。


地震によるサブドレインシステムの損傷は未検討


 問題は、地震による影響が考えられていないことです。ドレインは一般建設物と同じ耐震性にすぎず、
大きな地震動が襲えば、福島第1と同様、ドレイン自体が地震動で損傷したり、液状化を引き起こし、その機能を失わせ、膨大な地下水が建屋を浮かそうとするでしょう。

 こうした地震時の対策がとられていないこと、そして、それらのドレインなど地下水対策が、規制基準には含まれず、審査対象外にされています。
 福島事故の教訓を踏まえるならば、当然、地下水に対する対策がどのように施されているか、審査するきです。
プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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