柏崎刈羽原子力発電所敷地内の断層について(1)

 柏崎刈羽原発活断層問題研究会(代表 大野隆一郎)は5月22日、原子力規制委員会に対して、要請書「柏崎刈羽原子力発電所敷地ならびにその周辺の中・上部更新統の層序に関する厳正な科学的審査の申し入れ」を送付しました。同要請書は東京電力にも参考までに送付しました。そして、29日には、その要請書の内容について記者会見を行っています。

 研究会による規制委への要請に対し、同29日、東京電力(株)は 「刈羽テフラに関する見解について(2)」を柏﨑市の全戸訪問で配布するとともに、HPで公表しました。なお、見解(1)は4月27日に出しています。順次報告するとして、ここではまず、研究会の規制委への要請書を掲出します。  

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2017年(平成29年)522

 

原子力規制委員会委員長

田中 俊一 様

 

柏崎刈羽原発活断層問題研究会

代表 大野 隆一郎

 

要 請 書

 

柏崎刈羽原子力発電所敷地ならびにその周辺の

中・上部更新統の層序に関する厳正な科学的審査の申し入れ

 

  東京電力(株)の柏崎刈羽原子力発電所の6・7号機について、貴委員会は、規制基準への適合性審査を進めてこられました。その中で、敷地内に走る23本の断層の活動年代を20万~30万年前とする東京電力(株)の解析・解釈を妥当とし、これらの断層を「規制基準」に照らして、活断層ではないと判断されました。

 私たち研究会は、貴委員会に対してこれらの断層の活動年代に関わる厳正で科学的な審査を要請してきました。しかるに、貴委員会による上記の判断は、中・上部更新統の層序に関する地質学的・地形学的疑念を解明することなく下されたものです。ここにあらためて、この間、明らかになってきた3つの層序学的問題にしぼってその問題点を述べ、貴委員会が敷地内断層の活動年代に関わる中・上部更新統に関する科学的審査のやり直しを要請します。その上で、3点の層序学的問題点に関する科学的回答を求めます。


1.柏崎平野南部の中位段丘堆積物中の藤橋40火山灰の年代層序について 

柏崎平野南部には標高2030mの中位段丘が広く分布します(図1)。東京電力(株)はこの中位段丘とそれを構成する安田層を説明する際に、常に平野南部の佐藤池新田の露頭写真を示し、安田層を上部と下部に区分してきました(東電、平成28930日 規制委員会第404回審査会合東電資料4-2-3。「敷地近傍の地質・地質構造について」11ページ)。この露頭はすでに法面工事が行われ、詳細な観察/調査は不可能です。

横山周辺段丘分布佐藤池軽井川書き込み 

     図1:柏崎平野南部の段丘分布(東電資料加筆)。緑色が中位段丘MI面。紫は高位段丘の分布

 研究会では昨年(2016年)来、その周辺地域であらためて安田層の層序と層相の調査を進めるとともに、荒浜砂丘団体研究グループ(1996)で記述された藤橋地域の中位段丘堆積物の調査を行ってきました(図1)。その調査において、佐藤池新田露頭の西南西約900mに位置するプロスパー(株)敷地(柏﨑市軽井川)の崖に大きな露頭を見いだし、観察の結果、この露頭は佐藤池新田や安田層の模式地横山と同じ層序関係を示す中位段丘堆積物である(図2)。

向陽団地東大露頭層序区分 

   図2: 中位段丘を構成する安田層。向陽団地東のプロスパー(株)(柏崎市軽井川)

 一連の地層中には不整合は認定できない。

 そして、この露頭の最下部には 厚さ10cm(ただし、層相はかなり乱れていて厚さが変化に富む)ほどの2枚の火山灰が新たに見いだされた。その産出標高はおよそ16mである。これをkouyoK10,K20とした。

 1993年当時の露頭調査では、刈羽テフラと一致する藤橋40火山灰は標高およそ13.5mの極細粒砂とシルトの互層の間に産する。また、その下位の標高8mから8.5mの間には藤橋10火山灰と呼ばれた、柏崎平野に広く追跡できる火山灰層(荒浜団体研究グループ、1966)が産する。 一方、荒浜砂丘団体研究グル-プ(1996)が、安田層中に藤橋40火山灰(敷地内刈羽テフラに一致)を含む一連の火山灰層を記述(図3)した柏﨑市藤橋の露頭はすでに見られない。そこで、昨年来あらためて、藤橋において露頭のはぎとりを試み、火山灰試料の採取を行った。

新藤橋柱状切り抜き 

     図3:荒浜砂丘団体研究グル-プが1993年に作成し、火山灰等の試料を採取hした露頭の柱状図。

      この露頭も新潟工科大の整備とともに消滅している。

  藤橋地域における昨年のはぎとり調査において標高8.5から8.8mの間で、FK10-4FK45等の火山灰層を採取した。

  軽井川のkouyo-K10-K20などの火山灰試料と藤橋工科大のFK-10-4,FK45などの 火山灰試料の主成分分析を行った。その結果の一部を図4に示す。なお、図4には参考までに、荒浜砂丘団体研究グループ(1996)の藤橋40火山灰と東京電力から提供を受けた刈羽テフラ(N2シリーズ)の分析結果も示す。

 向陽・藤橋分析結果 

   図4: 柏崎刈羽原発周辺の安田層中の火山灰の主成分化学分析結果。凡例中のKokaならびにKouyoはそれぞ 

      れ、工科大(藤橋地域)と向陽団地東の露頭(軽井川)の試料を示す。


工科大(藤橋)はぎとりの試料FK10-4およびF-45は、向陽団地東(軽井川)の大露頭のK-10,K-20K-30と同じ主成分化学組成を示すことは明らかである。

また、これらの火山灰の主成分組成は、TiO2FeO含有量が低いことを特徴とすることから、荒浜砂丘団体研究グル-プ(1996)の藤橋10あるいは藤橋20の火山灰に類似する。  

層序学的に重要なことは、今回採取・分析したFK10-4やFK45 と番号を付した試料は、刈羽テフラと同一の火山灰と認められた藤橋40火山灰より低い高さから産出することである。

 東京電力は427日の「刈羽テフラに関する見解」で、藤橋40火山灰と刈羽テフラの同一性を認めた上で、これらの火山灰を含む層準を3020万年前の古安田層とし、藤橋地域では、その上に1213万年前の安田層が不整合で覆っているという可能性を指摘した(図5)。しかし、藤橋においても、また軽井川(向陽団地東)の露頭においても、少なくとも露頭においては不整合は認めがたい。東京電力(株)は検証無しの解釈を示したにすぎない。 

藤橋想像 

  図5: 東京電力による、安田層模式地(横山)と隣接する藤橋地域の堆積物の解釈。


藤橋40火山灰より下位に産出する火山灰と同じ組成を有する火山灰が、藤橋周辺だけでなく、東京電力(株)が柏崎平野周辺の中位段丘とする段丘分分布域の各地から広く産出する(荒浜砂丘団体研究グループ、1996)ことは、これらが高位段丘堆積物相当の青海川層相当とする東京電力(株)の解釈と大きく矛盾していることは明らかである。

 

2.大湊砂層の堆積過程と中子軽石(NG)火山灰の年代に関する非科学的解釈

 

 東京電力(株)は、岸ほか(1996)をもとに、安田層下部、時には古安田層を直接不整合で覆って、敷地とその北部を中心に分布する大湊砂層の上部に中子軽石(NG)が挟まれるとし、その降灰年代を13万年前としてきた。2011年の安全保安院の意見聴取会で指摘された、海水準変動の矛盾を解消するべく、東京電力(株)は、中子軽石(NG)を特徴付けるカミングトン閃石が大湊砂層のより下部に含まれることをもって、中子軽石(NG)火山灰の降灰時期には大湊砂層が堆積し始めたとした。しかし、その年代は13万年に据え置いたままである。この解析と解釈では、層序と大湊砂層の堆積様式と年代の矛盾は全く解決していない。

 研究会では、東京電力()NG観察地点のLoc.(十日市)ならびにLoc.2(長崎)(図6)において、岸ほか(1996)で記述されたように、大湊砂層の最上部に中子軽石(NG)火山灰を採取・検鏡し、その存在を確認した。

長崎露頭 

    図6:柏崎市長崎における大湊砂層最上部の産状と試料採取位置。両試料とも、斜方輝石、角閃石、カミン

      グトン閃石を多く含み、中子軽石に同定される。


この露頭でも、大湊砂層には重鉱物の平行葉理ないし低角くさび状の葉理が明瞭であり、大湊砂層は前浜堆積物を含む海浜堆積物である。

酸素同位体ステージMIS5eの海進期堆積物である汽水性の安田層下部の堆積物の上位に、広く堆積した海浜堆積物である大湊砂層はシーケンス層序で言う海氾濫期、もしくは高海水準期堆積体である。ところが、東京電力(株)は海面が現在よりも数10mも低い13万年前(図7)に大湊砂層の堆積が始まったとしているが、海進期の堆積体である安田層下部の上位に13万年前の大湊砂層が堆積することはシーケンス層序学的にはあり得ない。

海水準変動ステージ加筆  

  図7: 過去35万年間の海水準変動(サイクル機構による「地層処分技術に関する報告書」に赤数字

     で酸素同位体ステージ区分を加筆)


大湊砂層は酸素同位体ステージ5eの高海水準期の堆積物であり、その年代は12.512万年前とするのが妥当である。

 東京電力(株)は鈴木(2000)や「火山灰アトラス」をもとに、中子軽石(NG)を13万年としているが、これらの文献では対比されるIz-Kt火山灰の年代を13万年前より古いとしているのであり、その年代についてのコンセンサスはない。大湊砂層中の産状を考慮すれば、中子軽石の年代はより若くなるとするのが合理的である。

 

3.地殻変動を考慮しない段丘形成過程の非科学性

 

東京電力(株)の2017427日の「見解」における高位・中位段丘堆積物の堆積のイメージ、ならびに段丘形成過程に関する解釈は、基礎的知識を欠いた非科学的な解釈である(図8)。

段丘形成過程イメージ 

   図8: 東京電力の段丘を構成する地層の堆積のイメージ(東電の4月27日の見解(1)から)。高い岩盤

     の上に、高位段丘が描かれているが、MIS7ステージ(20~24万年前頃)には、この高度(40m)よ

     りも高く海面が上昇していたとする考えである。


現在の海水準は酸素同位体ステージの7や5の高海水準期と同じレベルの高い水準にある(図7)。もし、東京電力(株)の見解にあるような、地層の堆積と段丘の形成を海水準変動に伴う堆積と浸食の繰り返しで説明すれば、現在の高海水準期には酸素同位体ステージMIS7や5の堆積物はすべて海中に没していることとなる。

現実には、柏崎平野周辺の海成高位段丘は海抜高度4060m、海成中位段丘は2030mにある。これらの海の影響下で堆積した地層群が、当時の高海面期の高さ(現在とほぼ同じ)で堆積した地層群は、その後、地殻の隆起に伴って、現在の高さにまでもたらされたものである。高位段丘はおよそ、20万年で4060mへ、中位段丘はおよそ10万年で2030mにまで隆起した。この地殻の変動を考慮しなければ、地層の形成と段丘の形成は理解できない。また、段丘崖の形成も、東京電力(株)は海面低下による浸食で説明しているが、これにも無理がある。陸水による浸食だけでは、普通の山地斜面の勾配で浸食されるだけであり、段丘崖のような急勾配にはならない。海成段丘の段丘崖は高海面期に波浪で浸食される海食崖である。

 もちろん、海水準変動の速度は、地殻変動の速さをはるかにしのぎ、地層、特に浅海域での地層形成に大きな影響を与える。しかし、これらの地層が段丘化していくには、地殻変動を考慮に入れない形成過程の解釈は成り立たない。

 

  以上、3点にわたって、東京電力()の安田層の堆積年代に関する解析/解釈の科学的問題を述べた。これらの疑念を残したまま、柏崎刈羽原子力発電所が規制基準に適合しているとの判断を示すことは許されない。貴委員会での厳正で科学的な審査を要請するものである。

 

 なお、当研究会は求められれば、この要請書の内容に関わって貴委員会からの聴取に応じる用意があることを付言する。

 

文献(一部のみ示す)

 

 荒浜砂丘団体研究グループ(1996) 新潟県柏崎平野の上部更新統中の火山灰-広域火山灰との対比-.地球科学,502号,194-189

 岸 清・宮脇理一郎・宮脇明子(1996) 新潟県柏崎平野における上部更新統の層序と古環境の復元。第四紀研究、351号、1-16.

  

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*柏崎刈羽原発活断層問題研究会     代表 大野隆一郎(元高校教員)

  飯川健勝(元高校教員:理学博士),武本和幸(技術士:測量士),立石雅昭(新潟大学名誉教授:理学博士),寺崎紘一(元高校教員),徳間正一(元高校教員),中島哲宏(元高校教員),渡辺秀男(元中学校教員:理学博士),卜部厚志(新潟大学准教授.理学博士)

         代表連絡先  〒 951-8126 新潟市中央区学校町通二番町598番地

                         大野 隆一郎



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柏崎刈羽原発と東電救済策

 経産省が12月9日に開催した第6回「東電改革・1F問題委員会」。ここで経産省は福島第一原発の賠償・除染、廃炉と汚染水対策の総費用を三年前の見積もりの倍、21兆5000億とした。その費用、とりわけ、賠償費用を今後何10年にもわたって電気料金として国民にも負担させる等々、この委員会の目的はまさに、「原発という安い電力で恩恵を受けた国民」の負担で「東電を救済」する道筋作りと言える。
 そして、この「改革」なるものの柱が、東電柏崎刈羽原発の再稼働。東電への不信払拭のために、国が前面に出るとともに、「先進的」な同業者との連携、共同企業体によって再稼働を進める、と謳う。知事選において示された県民の意思や思いに逆行する、柏崎刈羽原発再稼働ありきの東電救済策の問題をみんなで考えたい。

東電1号機 

 提言原案骨子案http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/touden_1f/pdf/006_01_00.pdf)
に示された「II.福島への責任、国民への還元を目指した非連続の経営改革の姿」の「1.再編、統合に向けた共同事業体の設立」で、次のように謳う。
   5)柏崎刈羽原子力発電所は重要課題。

      自主的バックフィットに対する躊躇

      メルトダウン隠蔽問題を生みだした体質の根本的治癒

      地元本位の事業体制

      安全優先の組織文化

      規制要求を越える自立対応理念

      先進的な他電力の協力も躊躇無く要請

      他の原子力事業者を越える改革

 

新潟県の「原発の安全管理に関する技術委員会」での議論も踏まえつつ、これらの項を見るとき、私は少なくとも次の3つの点を、県民が共有してほしい課題だと感じています。

   

まず、安全優先の組織文化

はじめに再稼働ありき、そのための組織再編、というこの改革案の流れ自体が「原発」の危険性を後方に追いやる発想です。安全優先というならば、安全、すなわち、県民の命と暮らしが守れるかどうかが問われるのであり、県民の安心のためには何が重要かを示すべきです。少なくとも、「新しい規制基準は世界一」といううたい文句を撤回し、福島原発事故の教訓をくみ尽くす姿勢が見えない限り、安全優先とは言えません。


 次に、隠蔽体質

隠蔽は東電だけではありません。ムラぐるみの隠蔽体質こそが問われています。

 メルトダウンという技術的用語について、原発関連事業者はもちろん、規制機関を含む政府も、そして研究者も、メルトダウンの定義・判断基準が存在することを知らなかった、という言い訳はあり得ません。受け取れば、直ちに避難命令を発しなければならない「15条通報」の項目には「炉心溶融=メルトダウン」が存在します。この用語の定義存在を5年間隠してきたのは、官邸、経産省も含む、ムラです。東電が隠蔽と言わざるをえないとしたこのことについて、政府・経産省、そして、ほかの電力事業者は自らの組織的対応の過ちを一切不問にしています。安全文化、隠蔽体質について語る資格を有しません。


 3つめ、先進的他電力の協力を要請。

 ここに言う先進とは何か。九電、関電、四電を言うのか、そこでどのように地元同意を取り付けたかを学ぶべし、協力を仰げ、という提起は、「本末転倒」。それとも、東電が無視し、対策を怠った津波の試算結果について、対応していた東北電力を先進としているのだろうか。東北電力管内に立地する柏崎刈羽原発の再稼働に東電と共同で当たれ、という「国策」?

 連携して別会社を作るが、その儲けは東電救済に回す、って、資本主義における民間企業のありようとは考えられない発想ですね。


 「国が前面に出る」とはこういう国民負担による東電救済策を国民に押しつけることなのでしょうかね。

 まだ、思いつきにすぎない。しかし、黙っていると、原発を進め、そこから多大な密を得てきたムラの権力の意向の元で、私たちの負担と危険性が増大する事態を看過できません。旺盛で闊達な議論をお願いしたいですね。

 なお、参考までに、この問題に関しては、全体として、東洋経済online原発処理21.5兆円、東電支援策は不安だらけ(http://toyokeizai.net/articles/-/149084)がおすすめ。

 また、この項を考える機会を与えていただいた、新潟日報東京支社の記者の方に御礼申し上げます。日報では、丹念な取材を踏まえて、関連した記事作りを進めているとのことです。

柏崎刈羽原発の地下水問題

 12月3日、柏崎刈羽原発差止訴訟原告弁護団で地下水問題を学習しました。内容を簡単に報告します。


柏崎刈羽原発での地下水くみ上げ量は福島第1の4倍


 今なお、収束のめどが立たない福島第1原発。その収束・廃炉を妨げている要因の一つは膨大な汚染水を今なお生み出している地下水。稼働時のくみ上げ量は毎日800トン。

 しかし、柏崎刈羽原発では毎日2千数百トンから3千トンがくみ上げられている。新潟では積雪の影響で、冬場の地下水量が多い。(表1)。


サブドレイン排出量 表1: 柏崎刈羽原発の毎日の地下水くみ上げ量(平成26年度と27年度)

 この膨大な地下水の流入に対して、建屋周辺に流れ込む地下水を集め、排水する設備が設置されている。 原子炉建屋の下には集水管が網の目状に施され(図1・図2)、原子炉建屋やタービン建屋の四隅に掘られたドレインに導かれる。ドレインに流入した水が一定の高さになると、ポンプが働き、排水路を経て、海に流される仕組みである。図1の緑色は鮮新~更新統の西山層、黄土色は埋め戻し土である。
サブドレイン断面(7号機)図1:サブドレイン設備断面図
集水管設置状況   図2:サブドレイン配置平面図と断面図

 浮力で建屋を浮かす地下水ー事前調査は必須

 
 なぜ、こんな地下水対策が施されているのか、それは、この膨大な地下水による浮力が建屋を浮かすからです。従って、当然、建設前に地下水の量やその流れのシステムの解析が行われます。
 
 柏崎刈羽原発差止訴訟の原告弁護団では、昨12月3日、柏崎刈羽原発1号機の建設前に敷地の地下水の調査を担当された,元電力中央研究所の本島 勲さんをお招きして、勉強会を開きました。

 これまで、東電は原告側からの地下水に関する求釈明に対して、十分な回答を寄せていませんでしたが、それは地下水に関してほとんど注目せず、資料の管理もずさんであったことの裏返しでもあります。
 本島さんは1975年と76年の調査に基づいて、79年に調査報告を出されました。それに沿って必要な普段の地下水に対しては対策がとられているとのことです。
 その調査報告では敷地内で網目状に掘った井戸の地下水位データを元にした、等地下水位線も描かれていた由です。等地下水位線図(図3)があれば、表2の透水係数や地層の分布をもとに、地下水の流れも解読できます。
等地下水位線 
図3:柏崎刈羽原発の等地下水位線図(網目交点に掘られた井戸の地下水面の高度から描かれている)。この図と、地層各層の上限面図など地質との関連の解析が必要)
透水係数 表2: 敷地を構成する地層の透水係数

 この各層の水の通しやすさを示す透水係数は、試料を採取し、実験で求めます。この表では安田層
は一つの値になっていますが、東電自身の現在の知見で言えば、安田層は中期更新世から後期更新世にかけての堆積物で、その性状もかなり多様です。一つの代表値で表すのは間違っています。
ちなみに、柏崎刈羽原発の1~4号機側に設置された防潮堤が地震に伴う液状化を引き起こす可能性が否定できないことが大きな問題になっていますが、このことはとりもなおさず、これまで液状化しないとしてきた「安田層」のより詳細な解析でもってその可能性が出てきたものです。

中越沖地震直後急増したくみ上げ量


2007年の中越沖地震のあと、このくみ上げ量は表3に見るように、急増しています。
地震直後くみ上げ量 表3:中越沖地震前後の柏崎刈羽原発における地下水くみ上げ量

  その理由は現在のところ全く不明です。9月以降のデータがあるのかどうかも分かりません。


地震によるサブドレインシステムの損傷は未検討


 問題は、地震による影響が考えられていないことです。ドレインは一般建設物と同じ耐震性にすぎず、
大きな地震動が襲えば、福島第1と同様、ドレイン自体が地震動で損傷したり、液状化を引き起こし、その機能を失わせ、膨大な地下水が建屋を浮かそうとするでしょう。

 こうした地震時の対策がとられていないこと、そして、それらのドレインなど地下水対策が、規制基準には含まれず、審査対象外にされています。
 福島事故の教訓を踏まえるならば、当然、地下水に対する対策がどのように施されているか、審査するきです。

六ヶ所村核燃サイクル施設の耐震安全性

 青森県六ヶ所村の日本原燃(株)による核廃棄物再処理工場などの耐震安全性に関して、依頼を受けて、原稿を書き送りました。この地域の活断層の認定に関して、東洋大学渡辺満久教授ほかの調査によって、日本原燃などの調査・解析の不十分さが指摘されていました(渡辺ほか、2008,2009)。福島原発事故前には地元の日本科学者会議松山力会員や「黙っちゃおられん津軽の会」の方たちとともに、それらの報告について地質学的な調査を現地で行ってきましたが、福島事故後はほかの地域の調査に出かけることが多く、この地域については、原子力規制委員会での審査さえ十分にをフォローできていませんでした。原稿執筆依頼を受け、原燃などの報告を見直してみて、原子力規制委員会の審査の杜撰さをあらためて感じています。その一端をここにご紹介します。

 出戸西方断層の露頭
出戸西方断層 
 六ヶ所村の核燃サイクル施設のすぐ北を東流する老部川の左岸(北側)に見られる出戸西方断層の露頭です。日本原燃と東京電力による、この露頭のスケッチを示します。
出戸西方断層スケッチ東京電力出戸西方断層スケッチ
 両者とも、2008年の資料です。似たようなスケッチに見えます。この露頭で確認される逆断層の最新の活動時期について、両者とも、十和田レッド(To-Rd)火山灰(およそ8万年前)までが変位に巻き込まれていることを示している点では共通しています。しかし、大きく違うのは、大きくずれた中期中新世の基盤(鷹架層)の上位に不整合で重なる段丘堆積物の年代です。
 日本原燃は、右下、段丘堆積物の上位に重なる風成のローム層中の阿蘇4(Aso-4:8.5~9万年前)をもとに、この地点の段丘を中位段丘のM3面としています。一方、東京電力は、原燃による露頭の更に西まではぎ取って、そこに洞爺(Toya)火山灰(およそ11.2~11.5万年前)を見いだし、その段丘を中位段丘のM1面としているのです。
 原子力規制委員会はこの出戸西方断層の評価に関わる、両電力事業者の解釈の違いを詰めること無く、日本原燃の評価を妥当としました。一方で、原子力安全保安院は東京電力の東通原発の審査においては,東電の解釈を妥当として、設置許可を出していたのです。
 なお、原燃のこの露頭に関する調査時期は、東電が調査した時期よりも後です。東電はこの場で二つの露頭を記述していますが、原燃調査に際にはそのうちの一つはすでに無くなっていました。

  断層が観察されるこの段丘の年代の違いは、六ヶ所悪念サイクル施設の敷地やその周辺の地殻変動の解析に関わって大きな問題なのです。

 六ヶ所撓曲を形成する敷地直下の六ヶ所断層
 両者の露頭スケッチにおける重要な共通点はもう一つあります。それは地表面の傾斜です。いずれも、西の標高28mから東の24.5mほどの高さまで、緩やかに傾斜した地形面が描かれています。その間に,段丘崖と呼ばれる急な崖地形はありません。
 渡辺ほか(2008,2009)は、この明瞭な段丘崖を示さない、高く位置する古い段丘面が、緩やかな勾配で傾き下がり、低い面に連なることを重視し、敷地ならびに周辺地域のこの地形を六ヶ所撓曲と呼んでいます。
 六ヶ所撓曲
 そして、渡辺ほか(2008,2009)はこの撓曲地形を形成するためには、撓曲地形の東端部から、西に傾き下がる逆断層が地下に埋もれていて、それが中位段丘堆積後、たびたび動いて、西側が隆起市、東に傾き下がる地形を形成したとしているのです。
 図の右下に示すように、電力事業者や原子力規制委員会の解釈はこの撓曲地形の否定によって成り立つのです。出戸西方断層の露頭の地形をはじめ、その北から、核燃サイクル施設の南まで、およそ15kmに渡って撓曲地形が認められます。

 日本原燃ならびに原子力規制委員会は、あらためて、出戸西方断層と六ヶ所断層について科学的評価を行うべきです。

新潟県の新しいリーダー米山知事とともに

新潟県の新しいリーダー米山知事とともに

  柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を止め、原発ゼロへ

2016年10月16日、新潟県政史上、また新たな1頁が刻まれました。
県政史上初めて、野党系と呼ばれる知事が誕生しました。
共産党・自由党・社民党・新社会党・緑の党と市民連合から構成される「新潟県に新しい知事を誕生させる会」が擁立した米山隆一さんです。米山さんは「福島原発事故の検証なくして、柏崎刈羽原発の再稼働論議はしない」としてきた泉田知事の路線継承を謳い、現状では再稼働に反対する旨訴え、多くの県民の支持を得たのです。NHKの出口調査では、柏崎刈羽原発の再稼働に反対するひとは74%に上りました。
 自民党が圧倒的な県議席を占める中、米山知事がその公約を果たしていくのは容易ではありません。県民の願い・思いを実現するためにも、米山知事とともに力を尽くしましょう。

  この選挙期間中ではありましたが、10月11日、急遽、新潟県の原発の安全管理に関する技術委員会委員の一人として、「原子力行政と知事選」に関わる記者会見をさせていただきました。選挙中と言うこともあり、持って回った言い回しもありますが、ここにその内容を改めて載せておきます。一部のテレビや新聞等でも報道されました。

柏崎刈羽原発 
柏崎刈羽原子力発電所: 420万m2、東京ドーム90個分という広大な敷地に、総出力821万kw、世界でも最大規模を誇る7つの原子炉からなる原発である。2007年の中越沖地震で、世界で初めて地震で被災し、修理・補強を経て、5~7号機、及び1号機は順次再稼働してきたが、2011年3月の東北地方太平洋沖地震で福島第一原発が被災して、柏崎刈羽原発も全号機停止。現在、6・7号機について、規制委員会で規制基準への適合性が審査されている。

新潟県の原子力行政と知事選について
                
     新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会 委員
                  新潟大学名誉教授  立石 雅昭

 16日投票で戦われている新潟県知事選挙において、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題は最も重要な争点の一つです。
 この柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関して、知事選挙に立候補されている4人の候補者はいずれも反対、もしくは慎重な姿勢を公約に掲げておられます。しかし、その公約や報道されている演説内容を見聞きするなかで、今後の新潟県の原子力行政について、危惧の念が湧いてきました。私は、泉田知事が進めてこられた新潟県の原子力行政のもとで、県技術委員会委員の一人として、不十分ながらも、県民の命と暮らしを守る立場で努力してきたつもりです。その立場で、県知事選に立候補されている方々の原発政策を見るとき、強い疑念を抱かざるを得ません。今日は、主な候補者である米山隆一さんと森民夫さん、お二人の公約に照らして、県の原子力行政のありようについて、思うところを述べさせていただきます。

 まず、原子力発電所への対応の基本は、県民の安全の確保であることは論を待ちません。事故から5年半経ってもなお収束の見通しが着かず、多くの方が避難生活を余儀なくされている福島原発事故を経験した私たちは、何をおいても、住民・国民の安全が最優先されるべきであると考え、そのことを原子力行政上も基本とする、というのは誰もが求めるものです。しかし、このこと自体は、原子力規制委員会による「規制基準に適合している」との判断のもと、原発が再稼働されるに至っている立地県においても、謳われてきたことです。要は、どのようにして、県民の安全を担保するか、その具体的施策が問われているのです。森民夫候補の言う「県民の安全の確保が最優先」という、具体策の無いお題目だけの政策では安全を担保することにはなりません。

 1.東京電力には原子力発電所を扱う資格が欠落している。
柏崎刈羽原子力発電所の安全性を問うに当たって、事業者である東京電力の能力と資質が問われなければなりません。そもそも、県の技術委員会は、2002年に発覚した東京電力のデータねつ造、隠蔽に端を発し、「国の安全審査だけでは県民の安全は担保できない、県でも独自に検討が必要」との意向で、東京電力との協定締結を踏まえ、2003年、泉田知事の前任の平山知事の下で作られました。東京電力はその後、このデータねつ造や隠蔽を再び起こさないために、ということで、再発防止策を打ち出し、2009年にまとめました。
 しかし、ご承知のように、福島原発事故の際に、社長の指示のもと、炉心の溶融=メルトダウンという国民の安全にとって枢要な事象を国民に知せることを恣意的に覆い隠すとともに、炉心溶融の判断基準を記述したマニュアルの存在を5年間にわたって隠蔽してきました。2009年の隠蔽防止策は何らの効果も持たなかったことになります。東京電力の虚偽、隠蔽体質は改まっていないと言わざるをえません。このような事業者に、ひとたび事故を起こせば、県民の安全に破壊的な影響を与える原子力発電所を管理・運営する能力・資格はありません。
東京電力の体質が温存されたままでの柏崎刈羽原発再稼働は容認できません。
東京電力の隠蔽体質が改められ、周辺住民・国民の安全を最優先にする企業に大きく変わったことが確認されて初めて、原子力発電所の再稼働を容認するかどうかの県民議論の俎上にのせることができます。

2.県技術委員会による福島原発事故の検証は不可欠。
2007年の中越沖地震によって柏崎刈羽原発が大きく被災したあと、県技術委員会は、当時の安全保安院の審査とは別に、独自にその安全性を検証するために審査を重ねてきました。不十分ではあったにしても、安全性に関わって何が問題なのかを県民にわかりやすく提示する上でも大きな役割を果たしてきたと思います。
また、福島原発事故のあとは、知事の意向のもと、福島原発事故の検証を粘り強く勧めてきました。今般の東京電力による「炉心溶融=メルトダウン」隠蔽の実態を明らかにしたのは、新潟県の技術委員会における福島原発事故の検証です。県技術委員会による福島原発事故の検証はなお半ばであり、特に、県民・国民の被曝を最小限に低減するための広報や防災の在り方が引き続き検証されなければなりません。
 県技術委員会の経緯と歴史を踏まえ、福島原発事故の検証を引き続き進めるとともに、そこでとりまとめられる教訓を柏崎刈羽原発の管理と運営、そして、住民の防災・避難計画に生かさねばなりません。
「福島原発事故の検証なしに、柏崎刈羽原発の再稼働の議論を始めない」という泉田知事の路線継承を訴える米山隆一候補の提案は安全を担保する具体的提案と言えます。

3.「防災・避難計画の実効性の検証」は原発立地自治体の責務。
原子力規制委員会自身が認めるように、「規制基準」に適合しているからと言って、原発の安全性は万全とは言えません。原発事故は起こりえます。事故の際に県民の命と暮らしを守るために自治体として何をしなければならないか、このことを問うのが、防災・避難計画です。新潟県は立地自治体を中心に原子力防災計画・避難計画の策定を進めてきました。しかし、それらの計画を実効性という視点で見ると、多くの課題も残されています。すでに県が行った事故時の放射能拡散シミュレーションからしても、国の言う30km圏内に限った防災・避難計画では不十分なことは明らかです。
原発を抱える自治体として、米山隆一候補の掲げる「避難計画の実効性の検証」は県民の命と暮らしを守る上で、必須の課題です。

4.「人々の健康と生活への影響の検証」の進め方について
米山隆一候補は具体的施策の一つとして「原発事故の人々の健康と生活への影響の検証」を掲げておられます。県民の要望も踏まえた重要な提案だと思いますが、特に健康への影響については、専門家の間でも大きな意見の隔たりがあるのが現実です。その検証は実態に即して多面的に検証しなければなりません。県にはすでに「新潟県放射性物質の循環に関する実態調査検討委員会」が設置されていますが、この課題の検証には、専門家の意見も踏まえて、別途、専門家からなる委員会を設けて進めることが必要でしょう。

「国や東京電力に対しても言うべきことをしっかり主張します」という森民夫候補は政府与党や電力業界をはじめとする経済界の全面的支援を受けています。これでは県民の命と暮らしに関わる肝心のことが政府や電力事業者に言えないことは明らかです。

新潟県では、これまで県民の安全確保、環境保全、地域振興、情報公開等を課題として、原子力行政を進めてきました。原子力行政の基本は県民の命と暮らしを守る視点であり、そのために、県民の意見や思いを大切にすると言うことだと思います。6割から7割の県民が原発の再稼働に反対もしくはどちらかと言えば反対されている現在、そうした願いに寄り添いつつ、県政を進める知事であって欲しいと思います。
プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
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 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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