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柏崎刈羽原発直下の活断層

柏崎刈羽原発敷地直下の活断層の活動性

  東京電力の柏崎刈羽原発の原子炉建屋やタービン建屋など重要構造物の直下には23本の活断層があります。東京電力はそれらの活動年代を30万~20万年前とし、規制基準に言う活断層の活動年代「12~13万年前」より古いので、活断層ではなく、今後活動しない、と強弁。原子力規制委員会もそれを妥当としました。
 規制基準に言う、12~13万年前以降に活動していないことが明らかであれば、今後活動しないという基準は科学的には根拠のないものである。日本における地震活動の評価を統括する地震調査研究推進本部では、2010年に、40万年前以降に活動した断層について,今後も活動する可能性のある断層としての目安にしています。原発の耐震安全性を考える際には、少なくともこの40万年を目安とするべきです。

 東京電力による断層の活動年代の決め手ー刈羽テフラ

 一方、東京電力が敷地内断層の活動年代を30万年から20万年としていますが、この上限の値は、敷地内に見られる刈羽(y-1)テフラ(火山灰)が、下北半島の東沖合、太平洋底でのボーリング掘削で見いだされた火山灰と化学組成が似ていることから、その火山灰の堆積年代をおよそ20万年前と推定しているのです。不思議なことに、対比されるこの火山灰は、唯一、この下北沖だけに産出し、東北地方から関東北部、どこにも見いだされていません。まあ、20万年前というと、高位段丘堆積時ですから、保存が悪く、かつ、未調査も多いので、見いだされていないだけ、という可能性もあります。また、その時代の堆積物は平野地下でもあまり掘削されていません。

 私たちはおよそ25年以上前になりますが、柏崎平野周辺の大地の歴史、形成過程を明らかにするために、調査を進めていました。その調査の中で、敷地の中の刈羽火山灰と同じと考えられる火山を、柏崎刈羽原発周辺の何カ所かでも見いだしていました。柏崎市藤橋でも、かって、新潟工科大学の建設に際しての道路工事で見いだし、藤橋40火山灰と命名し、化学分析を含めて記載しています(荒浜砂丘団体研究グループ、1996)。活断層を記載した刈羽村寺尾西でも見つけていました。東京電力は寺尾西の火山灰は敷地内の刈羽テフラと同一のものであることを認めています。

 この火山灰がなぜ、重要かというと、東京電力は規制基準への適合審査の申請書では刈羽テフラを下北沖のおよそ20万年前の火山灰に対比し、この火山灰を挟む地層を、中位段丘堆積物である,安田層から分離し、より古い時期に堆積した古安田層としているのですが、藤橋における藤橋40火山灰は、中位段丘堆積物安田層の下部に挟まれているからです。刈羽テフラは古安田層、しかし、それと同じ火山灰である藤橋40火山灰が安田層となれば、東京電力の層序の解釈は大きな矛盾を持つことになり、20万年前という根拠が否定されるからです。

 柏崎刈羽原発活断層研究会(荒浜団体研究会とほぼ同じメンバーですが、こちらは原発の安全性を地質学的視点から追求することを目的にしています)では、安田層の堆積した年代を定めるために、福島原発事故後、あらためて調査・検討を進めています。これまでに三度、原子力規制委員会に「厳正な科学的審査」を求めてきました。
 
 7月初めには、藤橋の工科大学前の林道脇の藪で、安田層中の火山灰を掘り出し、火山灰試料を採取しましたが、昨日は少し離れた向陽団地の東の大きな露頭(写真1)で、安田層の観察・記載を行いました。
向陽団地東露頭

 この露頭は、東京電力がすでにその佐藤池新田の露頭(写真2)として、報告しているところと同じものです。よく似ているとは思っていたのですが、東京電力が記載した当時より、左手やや奥を鍵型に掘り込んであり、少し見かけが違っていたのです。

東京電力佐藤池球場

写真1と2を比べると、やや青みがかった灰色の泥層の高さが違います。現在の露頭(写真1)の上部の赤みがかった地層の真ん中にある白っぽい地層のすぐ下までが、写真2では灰色に見えているのです。表面を覆う風化した粘土を取り除くと、新鮮な暗灰色の泥層が出てきます。そして、東京電力の解釈でも、この暗灰色の泥層が安田層下部、白い層(砂)から上が安田層上部に分けられています。

 私たちは,昨日の観察・調査で、この下部の泥層から、3枚の火山灰層準を見いだしました。その中に、藤橋40火山灰と同じ火山灰があれば、東京電力の安田層・古安田層層序の誤りは決定的です。

 刈羽テフラと向陽団地東の露頭の火山灰が同一のものかどうかの対比が決め手
 いくつかの地点に産出する火山灰層が同じものであるかどうかは、その層序、産状、砂粒組成、ガラスの屈折率や化学組成など、いくつかの点について検討しなければなりません
 火山灰の分析には今少し、時間が必要です。分析結果が出れば、またご報告します。

 ちなみに、安田層下部の上半部は海の影響が強い環境で堆積した地層で、地球が温暖で海面が高い時期に堆積しました。この写真の暗灰色の部分です。
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柏崎刈羽原発の耐震脆弱性(1)

 柏崎刈羽原発の耐震脆弱性(1)

 規制委員会,年内にも基準適合判断?
 東京電力(株)は新潟県の柏崎刈羽原発6・7号炉の再稼働に向け,1昨年9月に,規制委員会に対して,規制基準への適合性審査を申請しています.柏崎刈羽原発は福島第一原発と同じ沸騰水型の原子炉です.規制委員会は,この柏崎刈羽原発について,沸騰水型原子炉の中でも優先的に進めるとして,この春以降,急ピッチで審査を進めています.規制庁の審査会合をフォローしてきたメディアによると,規制委員会は,年内にも、基準に適合しているとの判断を示すのではないかとの示唆を受けました.
 原子力ムラにとって,東京電力(株)柏崎刈羽原発の再稼働が本命であり,早晩,この時期を迎えるとは思っていました.
 勿論,規制委員会が基準に適合しているとの判断を示したからと言って,即再稼働になるわけではありません.泉田県知事の基本的姿勢や,新潟県の原発の安全管理に関する技術委員会での審議もあります.しかし,規制委の適合判断は再稼働への大きな一歩であることも事実です.原発ゼロ,柏崎刈羽原発の再稼働に反対する運動の遅れは決定的です.
 こうした状況を踏まえ,この11月6日に,柏崎刈羽原発活断層問題研究グループを開き,審査の過程で明らかになってきた点を踏まえながら,グループとして,急いで,問題点を整理し,厳正な審査を改めて要望する方向を確認しました.要望書などはまだ詰めが必要ですが,ここでは,私の方で捉えている,柏崎刈羽原発の耐震脆弱性について,まとめてみました.
 まずはその1回目として,原発が立地する地域の地質層序と年代、それが示す地殻変動についてです.

 なぜ,この層序と年代が重要かというと,原子炉など敷地内の重要構造物の直下にある23本の断層の活動時期を特定する鍵になるからです.私はこれらの断層は活断層だと考えていますが,規制基準では,12~13万年前以降に活動した履歴を持つもののみを活断層として,それより以前に活動した断層であれば良いとしています
 
1.東京電力(株)の新しい層序区分


 敷地とその周辺には数段の段丘が発達しています(図1).
 段丘分布 図1 柏崎刈羽原発敷地周辺の段丘分布(東京電力作成)

この地域に分布する中位段丘を構成する堆積物は従来,安田層と呼ばれていました.中位段丘は,最終間氷期(およそ12~13万年前から以降の温暖な時期)の堆積物です.敷地内の断層はこの地層の一部を切断しているために,規制委員会は東京電力に対して,その活動時期を特定するための再調査を求めていました.東京電力(株)はこの指示に基づき,敷地並びに敷地北方における新たなボーリングを行い,その試料中の花粉やケイ藻などの微化石分析,および,挟在する火山灰の分析を行い,その分析結果に基づいて,新しい層序を提唱しました.すなわち,従来,安田層として一括していた地層を二つに区分したのです.下位の方をおよそ30数万年前から20万年前の中期更新世の古安田層(海洋酸素同位体ステージMIS9と7の海進期と高海水準期の堆積物を主とする)とし,それを不整合で覆う12~13万年以降の安田層とその相当層である大湊砂層(MIS5eの海進期と高海水準期堆積物)に区分しました(図2).
層序指標テフラ年代 
図2 柏崎刈羽原子力発電所敷地及びその周辺の地質層序と指標火山灰のおよその年代

そして,東京電力は,敷地内の断層は古安田層の一部を切断しているが,その活動時期はおよそ,30万年~20万年であり,活断層ではなく,今後活動しない,としたのです.規制庁審査チームは、その解釈を妥当だと認めようとしているのです.

仮にこの解釈が妥当だとすると,この地域の地殻変動に、大きな問題を新たに生じます.

2.数回の海進期(温暖期)の堆積物の累重の意味ー後期更新世に沈降から隆起に転換 

  東京電力(2015)によれば,敷地とその北方に分布する古安田層は標高―40mから標高30mに分布し,それを覆う大湊砂層と安田層は標高20数mから40mに分布するとしています(図3).
敷地層序まとめ
図3 敷地とその周辺のボーリング試料柱状図と対比

 数回の温暖期と寒冷期を繰り返した30数万年前から12~13万年前に古安田層とそれを覆う安田層・大湊砂層がこの地域で積み重なっているとすると,その間,この地域は基本的に沈降し続けなければなりません.
 この時期の海面変動曲線は図4のように推定されています.
海水準変動曲線
図4 敷地内G-16孔のボーリング試料の微化石ならびに指標火山灰の分析結果と海水準変動曲線
 
この図の下部にある海水準変動曲線は,図の横軸が年代で,MIS9,7(これらを酸素同位体ステージ区分と言います)の時期の海水準が描かれています.もう少し新しい時期,それが最終間氷期と言われる12~13万年をピークとする海水準の高い時期で,酸素同位体ステージの5eと言われる時期です.この海水準変動曲線を見れば,酸素同位体ステージの9,7,そして,5のどの時期も海水準のピークはほぼ同じ,現在よりも少し高いかほぼ同じなのです.もし,この地域が全く沈降していなければ,どの海進期においても最も高い海水準は変わらないのですから,その時期の堆積物が順次上に累積していくためには,その場がしずむしかありません
その上で,当時の海面が現在とほぼ同じ高さのMIS5e期の堆積物(安田層や大湊砂層)の現在の高度分布をみれば,これらの分布域は、それらの地層の堆積後,隆起に転じたことになります.MIS5eの高海水準期の海浜堆積物とされる大湊砂層が現在,標高30~40m近くに分布することから,明らかにこの地は,大湊砂層堆積後,少なくとも,20数mから40m近く隆起したことになります.こうした中期更新世から後期更新世初期にかけては沈降していた場が,その後,隆起に転じた場というのは、変動の激しい日本列島においても決して一般的ではありません.
 地層の積み重なりを解釈するだけでなく,そのことが意味する地殻変動について,明瞭に説明しなければなりません.

 3.周辺段丘分布域では中期更新世以降一貫して隆起

図1に示すように,原発敷地の周辺段丘地域,とりわけ,南西部の米山周辺では,年代的に古安田層と同時期の堆積物とされるされる青海川層(図2)が高位段丘を構成し,標高50~60mに分布します.安田層相当層はより低い中位段丘を構成しています.従って,こうした段丘地域では,中部更新統が一貫して隆起してきたことは明らかです.
 東京電力と規制委員会は,柏崎刈羽原発周辺の地殻変動について,周辺段丘地域と原発が立地する西山丘陵地域との相違を,ネオテクトニクスの観点から説明することが求めらます.

3.西山丘陵における旧汀線高度分布が意味する地殻変動について

 最終間氷期(酸素同位体ステージ5)の安田層や大湊砂層の高度の分布(図5)について,東京電力はこれまで一貫して,敷地とその周辺地域における後期更新世以降の地殻変動を否定してきました.
高度分布図5 敷地とその周辺における大湊砂層・安田層の高度分布

そして,東京電力は安田層や大湊砂層の堆積物の高度分布を,佐呂間湖のような水深の深い海跡湖があり,盆の低いところに堆積した砂泥堆積物と海浜堆積物を同時期のものとして説明してきました.まさに荒唐無稽.海浜堆積物,大湊砂層が標高30~40mにあることを全く説明できなかったのです.
 中・上部更新統の旧汀線高度は,後期更新世以降の地殻変動を検討する上で,重要な指標です.東京電力による新しい層序区分では、かって最終間氷期期堆積物としたものが層序的に異なるとしたのですから,この層序区分と旧汀線高度分布を整理し,この地形発達史について,矛盾無く説明することが求められます.
 規制委員会はこんな非科学的解釈を受け入れるのでしょうか.

4.刈羽テフラ(y-1),藤橋40(F40) 火山灰層についてー古安田層最上部の火山灰層対比と年代は誤り
 
  東京電力が敷地内北部の露頭(現在は削り取られています)に見いだしていた火山灰鍵層(白色ガラス質火山灰質)(刈羽テフラy-1)を敷地内安田層の最上部に位置づけ,遠く,下北半島沖のmatsu‘ura et al(2014)のG10テフラに対比し,およそ23万年前とした上で,安田層最上部をおよそ20万年頃までのの堆積物としています(図2).

  しかし,この白色ガラス質火山灰層は,敷地周辺各地にその分布が確認されています.私を含む研究グループが1996年に記載・報告した藤橋40(白色ガラス質火山灰)です(荒浜砂丘団体研究グループ,1996,地球科学50巻,194-198).同じ火山灰は寺尾や大湊にも産出し,対比されます(図6).
火山灰対比 図6 敷地周辺の火山灰層対比 (荒浜砂丘団体研究グループ,1996)

  また,その柱状図やその上下の地層の珪藻分析などの結果も報告しています(図7)(荒浜砂丘団体研究グループ,2001,堆積学研究,53号, 29-36;荒浜砂丘団体研究グループ,2008,地団研専報,57号,123-135).
珪藻分析図7 柏崎市藤橋における安田層の堆積柱状とケイ藻・花粉分析結果

  東京電力も,寺尾の露頭に産出する火山灰を、敷地内の白色ガラス質火山灰(刈羽テフラ)に対比できることを認めています. また,私たちが行った藤橋40火山灰に含まれる火山ガラスの化学成分は,刈羽テフラ(y-1)と一致します(図8).
化学分析図8 藤橋40他の火山灰ガラスの化学成分
 

 しかし,層序的には,藤橋40火山灰は,図7に示すように安田層下部下半部で,藤橋10火山灰より上位に産出します.東京電力も,この層準は全て,古安田層ではなく,安田層下部に対比しています(図9).
横山層序図9 柏崎市横山におけるボーリング柱状
  この図には,柏崎市の横山(安田層の模式地)の露頭で見られる安田層が,古安田層ではなく,MIS5e期の安田層であることが描かれています.

  従って,刈羽テフラが,古安田層,しかも,年代およそ23万年とすることには大きな疑義があります..
  柏崎市横山でのボーリング試料ではこの火山灰は見いだされていないが,そのボーリング試料の再検討も含めて,周辺地域でこれに相当する火山灰層を見出し,その火山灰層と古安田層,安田層との層序関係を検証しなければ,古安田層の年代を決めることはできません.
  下部に,従来考えていた年代より古いものを含むことは加久藤火山灰や阿多鳥浜火山灰を挟むことから間違いないとしても,その上部が,数度の海面低下期の削りきみによる不整合や時間間隙を挟む可能性も含めて, 検証することが必要です.敷地内断層の活動時期を決める上で,重要な指標だからです. 


柏崎刈羽原子力発電所の断層に関する厳正な審査を規制委に要請

柏崎刈羽原発活断層問題研究会は原子力規制委員会へ厳正な科学的審査を求める要請書を送付するとともに,要請内容を4月20日の記者会見で公表しました.以下,要請内容をアップします.
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2015年4月18日
原子力規制委員会委員長
田中 俊一 様 
                         柏崎刈羽原発活断層問題研究会*
                              代表 大野隆一郎

               要 請 書
柏崎刈羽原子力発電所の周辺の断層に関する
厳正な科学的審査の再度の申し入れ


  貴委員会の指示に基づき,東京電力(株)が柏崎刈羽原子力発電所の敷地周辺の断層について,昨年3月以来進めてきた追加調査の結果が先般,規制庁審査チームに報告され,その報告に基づいて,審査チームでは現地調査も行われました.東京電力(株)の調査結果については,すでに第201回審査会合や,現地調査の際に,石渡 明規制委員や審査チームの方々から疑問が呈されてもいるところです.当研究会では東京電力(株)の調査結果,特に北2測線ならびに敷地北東方約600mに位置する寺尾付近の断層について検討いたしました.東京電力(株)の調査結果の解釈には,なお,地質科学的に見て,以下に述べるような重要な問題点があります.
 昨年1月,当研究会は貴委員会に対して,柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性に係わる敷地ならびに敷地周辺の断層に関する厳正な審査を申し入れておりますが,ここに,東京電力(株)の追加調査の問題点を指摘し,再度,厳正な科学的審査を求めるものです.

東京電力(株)寺尾付近の断層に関する追加調査結果の問題点
1. 東京電力(株)が今般,寺尾西の旧土砂採集場で掘り出したA断層は,1993年,荒浜砂丘団体研究グループが報告した断層とは異なる断層である可能性について


 2月27日の第201回審査会合における東京電力(株)の資料1-3の6頁の寺尾地点周辺位置図とはぎ取り断面図を添付資料1として,添付します.
 その図の左上の荒浜団研のA断層との位置関係を示した図を左に示します.
 東電はぎ取り位置図 
 この図のスケール,全体で25mと言うのは明らかな誤りです.添付資料1のはぎ取り/トレンチ位置図のスケールと照らし合わせると,おそらく,この全長で100mでしょう.こうしたミスは時々ありますから,修正すれば良いと思います.
 問題は、荒浜砂丘団体研究グループ(1993)(以下荒浜団研と記述します)や、その後の東京電力(株)や資源エネルギー庁(1996)によるトレンチとの位置関係です.
 下に,資源エネルギー庁(1996)による,荒浜団研(1993)と同じ露頭全体のスケッチを示します.この図は東京電力(株)によるスケッチを転載したものです.図の右にAトレンチ(荒浜団研のいう第1トレンチ)があり,図の左上にS(南)があります.すなわち,この露頭は若干の屈曲はありますが,ほぼ南北に近いものです.
 寺尾資源エネ調
 なお,この図の上端はおよそ41m,下端は36mの高度です.AトレンチでのA断層の高度は約38.32m(荒浜団研のデータ)で,そこではA断層は走向N10°Eで,70°W傾斜(荒浜団研データ)です.図ではややその南でN23°E,72°Wとなっています.露頭は第1トレンチから南へ約40mあります.南の端ではA断層は大きく屈曲し,走向N48°W,52°SW傾斜となっています.さらにその南には斜交する断層群が発達しています,また,この地点ではA断層は安田層の中を切っています.なお,同じ露頭の荒浜団研による簡略なスケッチは,昨年の要請書の添付資料3にあります.
 この露頭の方向,長さ,ならびに添付資料1に示す今回の東京電力(株)によるはぎ取り断面の最北部でのA断層の高さは36.3mということを考えれば,上図のA断層は,当然,はぎ取り露頭の北部に重なるはずです.にもかかわらず,新しいはぎ取り断面では断層は安田層と椎谷層の境をなし,走向なども大きく異なります.上図や,昨年の要請書添付資料3で示される,A断層と大きく斜交する断層もありません.明らかに断層の産状が異なります.
 地層や断層の立体的な分布を考えれば,近接場所でも同じ断層の見かけが異なるということはあり得ますが,東京電力(株)は今回の調査結果の説明に当たって,まず,同一の断層だという検証を行うべきです.
 荒浜団研や東京電力(株)の調査によれば、旧土砂採取場には、A断層のさらに高所にも、同様の断層が多数発達していました.昨年1月の要請書の添付資料2を,本要請書でも添付資料2として再掲します.今回のはぎ取り調査の対象とした断層はこれらの断層の一つである可能性があります.

2.A断層を地すべりとする説の最大の欠点である、高い方に滑る地すべりという矛盾について

 これらの断層が、東から西に向かって,すなわち,低地から山側(高い方)へすべるという地すべりにとってもっとも説明不能な問題は全く解決していません.
 寺尾断層の周辺の地形と旧土砂採取場の位置を次に示します.
 寺尾西地形

 東京電力(株)は2月27日の審査会合で現在の地形解析から周辺地域には多くの地すべり地形が存在する,と言う資料を出しましたが,委員から批判されたように,こうした論の立て方は科学的とは言えません.東京電力(株)は従来地すべりが生じたときの地形は現在とは異なるから,現在の地形上高い方に向かって滑っていても良い,と主張してきました.この断層は荒浜団研によるトレンチでは番神砂層をも切断しています.番神砂層の上部にはおよそ5万年前の噴出物とされる大山倉吉テフラ(DKP)*が挟まれています.数万年の間に,東京電力(株)が主張する地殻変動が無いところで尾根筋が谷筋に地形が転換するものでしょうか.東京電力(株)は地すべり発生時期を科学的に推定し、当時の地形の復元図を出すべきです.   (*なお,最新の知見ではDKPの噴出時期を6.5万年とされています.)

3.左横ずれ成分の卓越する断層という解釈について

 東京電力(株)は今回のはぎ取りならびにトレンチ調査で,断層面に見られる条線の解析を行い,左横ずれ断層成分の卓越する断層だとしています.条線の方向は,添付資料1の断層位置図に記入されています.これを見ると,確かに第1トレンチ周辺では,西に急傾斜する断層上に南への条線が卓越しています.しかし,条線の記述を追うと,北部と南部ではかなり,鉛直方向になっているように見られます.露頭全体でこの断層は横ずれが卓越すると言えるのかどうか,はなはだ疑問です.
 なお,この条線に関して,私どもが観察した結果では,北の椎谷層と安田層の境をなす断層面上では褐鉄鉱の汚染されたやや古く形成されたと思われるものが認められ,一方,南部の第2トレンチ付近の椎谷層と安田層を境する断層上の条線は粘土化し,まだ,軟らかいものです.これらの断層活動には少なくとも2度の活動履歴が想定されます.
 仮に,この断層が東京電力(株)の解釈のように,左横ずれ成分の卓越する断層だとして,地すべり地塊のどこを見ていると言う解釈なのでしょうか.これも,地すべり地塊全体の復元図の中で位置づけるべきです.次に地すべり地塊と断層の性状との関係をわかりやすくモデル化した図を掲げます。
地すべりモデル


 4.地すべり基底のすべり面は椎谷層中の古い層面すべり断層の再動か?

 東京電力(株)は寺尾西の露頭で東西に並ぶボーリング解析をもとに,地表付近の断層が深いところでは椎谷層中に走るほぼ水平な層面すべり断層に収束するとしています.下に東京電力(株)によるボーリングの試料解析に基づく,断層の東西分布断面を示します。
 寺尾ボーリング断層対比
 はぎ取り面で見られる椎谷層はほぼ東西走向で,10数度南に傾斜しています.東京電力(株)はこの地すべりの基底面も地層に沿って南に傾斜し,南に深くなるとするのでしょうか.椎谷層中にははぎ取り面で見られるように,多数の断層がありますが,特に顕著なのは椎谷層の傾斜方向とは逆に,北もしくは北西に急傾斜した断層群です(添付資料1). これらの断層は数10cm程度のずれを持つ正断層です.はぎ取り面の南端に層面すべり面と思われる断層がありますが,東京電力(株)の層面すべり面とする地すべり基底面はどちらに傾斜しているのか検証されていません.固結した中新~鮮新統(椎谷層)が上載する中~後期更新統ともども地すべりを起こすには,その基底面は古い断層の再動だと考えられます.しかも.この図のA断層は左横ずれ成分が卓越する地すべり断層だとするならば、その右(東)の地塊もすべったものなのかどうか,東京電力(株)の解釈は局部的な現象の把握と都合の良い解釈にとどまり,主張する地すべりの全体像が明らかにされていません.

5.北2測線に見られる東落ち断層群と寺尾断層との関係について
 東京電力(株)は追加調査において,規制委員会の指示に基づき,後谷背斜の活動性を検討するとともに,荒浜砂丘団体研究グループが2009年に見いだした,西山丘陵と柏崎平野の境界部に推定される断層について検討するために,改めて北2測線に沿って数多くのボーリング掘削を行い,その解析の結果を第201回審査会合において,資料1-2(追加地質調査結果 北-2測線に関する調査)として報告しています.その資料の一部を添付資料3として示します.この図において,先の寺尾西の土砂採取場の南に位置するボーリング北-2-⑭などでは東落ち,東傾斜の正断層群が描かれ,これも地すべりだとしています.ボーリングは尾根筋で行われたものであり,ここでも,いつ,どこから,その地すべり地塊が滑ってくるのか全く不明です.すべり面の一部は椎谷層と古安田層の境界をなし,それを境に東西で古安田層の層厚が大きく異なります.当然,この断層の一部は古安田層の堆積時から活動しなければ,古安田層の厚さ分布は説明できません.その断層がここでも番神砂層を切断していますから,活動時期は少なくても番神砂層上部の堆積後に再活動していることになります.さらに,この断層群の北への延長部,すなわち,先に検討した寺尾西の旧土砂採取場の荒浜団研等のトレンチなどの東に,明瞭な東落ち,東傾斜の断層群が発達しています(添付資料4).なお,この添付資料は今回初めて公表するものです.この露頭は今ではありませんが,1993年,荒浜団研の第1トレンチなどを調査した東京電力(株)は当然把握していたものと推察されます.尾根筋に今回見いだされた断層群と,この寺尾西の旧土砂採取場東部に認められる東落ち,東傾斜の断層群との関連は当然言及されなければなりません.
 これらの表層部における断層群の発達様式について,昨2014年の要請書の添付資料12に示した,電力中央研究所の上田圭一氏による「模型実験結果にもとづく西山丘陵における小断層の形成説の一つ」(上田,2011)を考慮すれば,こうした断層群は東に位置する逆断層,真殿坂断層が後期更新世以降も活動し,それに伴って,断層の西側の表層部に形成される正断層群の可能性が高いと言えます.

6.西元寺周辺のボーリング調査結果に見る非科学性
 
 さらに東京電力(株)は,北-2測線の東部,西山丘陵と柏崎平野との境界部において新たなボーリング掘削を行い、下に示すような解釈図を示しています。
 東電ボーリング解析3
 この掘削調査は,荒浜団研が地元住民団体の協力も得て,2008年暮れ,刈羽村西元寺地内でボーリング掘削し,その存在の可能性を示唆した落差20mにおよぶ断層の追試のためです.荒浜団研が掘削したボーリングの位置は図の北-2-T3と同じ位置です. 
 荒浜団研ではその掘削コアの上部約7mほど(地表から現標高約10mまで)は地すべりに伴う乱れた堆積物としています(昨年の要請書添付資料11)が,その下位は地層の乱れのない堆積時の構造を良好に保存しているとしました.東京電力(株)の今回のボーリング掘削試料の解析にはこうした記述はなく,西山層との境界(現標高-31m)までの全体を地すべり地塊としています.ここでも,東京電力(株)はこの地すべりがいつどのようにして発生したのか,ということは一切説明していません.切断関係からすれば,地すべり発生は番神砂層堆積後でしょうが,その当時,この深さまで滑る空間が,別山川沿いの低地になければなりません.海面低下期であっても,低地側にも上に風成の番神砂層が堆積している状態でこの深さまで地すべりを発生させるだけの空間を復元することはできません.

7.中~上部更新統層序と地殻変動について

 東京電力(株)は,敷地内断層の活動性に関わって,敷地並びにその周辺地域の中~上部更新統の層序と年代に関する調査を行い,新しい層序区分を提案しています.私たち研究会では,この東京電力(株)の層序と年代に関する提案についても検討を進めていますが,当面,下記の2点の問題について,十分な審議を求めます.

 まず,東電のいう大湊砂層に挟まれる中子軽石火山灰(NG)についてです.東京電力(株)は従来から,大湊砂層(私たちの言う番神砂層下部)の上部にNGがあるとし,新しい層序でも,基本的にはこの考えを踏襲しています.しかし,この考えは大湊砂層が海浜の堆積物でMIS5eの海面上昇期から高海面期の堆積物とする解釈と整合性がありません.NGは現在の知見ではおよそ130ka,MIS6の低海面期末葉のテフラとされています.この点はすでに規制庁審査チームによる審査の過程でも問題にされていますが,大湊砂層の堆積環境と合わせ,その年代論に関する解明が求められます.
 
 2つめの問題は,大湊砂層など,海成~汽水成堆積物の分布高度です.添付資料5に,東京電力(株)が岸ほか(1996)をもとに描いた下末吉離水面の高度分布を示します.この等高線は離水面とされていますが,大湊砂層の上限面はほぼ最高位汀線を示します.他方の安田面は安田層から構成され,その上部は淡水成ですが,下部は汽水~海成です.しかし,大湊砂層と安田層上部が指交関係とするならば,当然,その堆積面はほぼ当時の海面を示します.当時の海面はたかだか,現在よりも4~5m高いレベルですから,この高度分布はこの地域が最終間氷期(MIS5e)以降,少なくとも20m,周辺地域では40~45m隆起したことを示しています.最終間氷期以降のこの地域の地殻変動を全面的に否定してきた東京電力(株)は,自らが作成したこの高度分布について,当時,この地に巨大な網走湖のような海跡湖があり,もともとそういう高度差があった状態で堆積したとしました.そうした海跡湖の存在自体,非科学的な説と考えられますが,仮に,そういう潟が存在したとしても,高度分布の最も低い20m強の高さに海が入り込むことはあり得ません.大湊砂層とそれに指交する安田層上部の堆積過程とその後の地殻変動について,科学的な審査を求めます.

  なお,海成層の高度分布に関わって,東京電力(株)が今般,刈羽テフラと命名した火山灰層は刈羽村寺尾西のはぎ取り・トレンチ露頭にも産しますが,この火山灰は,荒浜砂丘団体研究グループが柏崎市藤橋で記載した火山灰藤橋40に同定されます(荒浜砂丘団体研究グループ,1996).藤橋40火山灰を挟む層準は安田層下部下半部で,今は消失した藤橋の連続露頭で採取した試料のケイ藻化石分析(添付資料7)からすると,その層準自体は淡水環境ですが,上下に汽水~海成種の豊富な層準があります(荒浜砂丘団体研究グループ,2008).上位の汽水成層はCorbicula japonica(ヤマトシジミ)やAnadara sp.(二枚貝フネガイ科)を産します.この層準を私たちはMIS5e相当と考えていますが,これは東京電力(株)の柏崎市横山のボーリングYk-2の厚さや上部層との関係(添付資料6)からも妥当だと考えられますが,そうだとすると,刈羽村寺尾西あるいは敷地内などでは,東京電力(株)が刈羽テフラをMIS7中としていることと矛盾します.この中~上部更新統の層序と年代は,敷地並びにその周辺地域の断層の活動性との関連で重要な課題であり,私たち研究会でも引き続き検討を重ね,また,必要に応じて,問題提起をさせていただきます.
―――――――――――――――――――――――――――――――――
以上,7点にわたって,東京電力(株)の柏崎刈羽原子力発電所の敷地周辺,特に北方の追加調査の結果について,その問題点を指摘しました.
 貴規制委員会におかれましては,これらの指摘もふまえて,東京電力(株)の追加調査の報告内容について,さらに厳正な科学的審査を進められるよう求めます.

 また,当研究会は,現地において,貴委員会あるいは,審査チーム立ち会いの上,東京電力(株)担当者との真摯な科学的検証を求めます.それがかなわないのであれば,せめて,審査チームによる当研究会へのヒアリングを求めます.それが柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性に関する地元の危惧や不安に対する必要な手だてであると思います.よろしくご高配ください.
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  参考資料
1. 荒浜砂丘団体研究グループ(1993) 新潟県荒浜砂丘地域に発達する後期更新世の断層.地球科学,47巻4号,339-343.
2. 荒浜砂丘団体研究グループ(1996) 新潟県柏崎平野の上部更新統中の火山灰-広域火山灰との対比-.地球科学,50巻2号,194-198.
3. 荒浜砂丘団体研究グループ(2008)柏崎刈羽原発の地盤の変動-柏崎平野周辺の上部更新統の層序と構造運動-. 地学団体研究会専報57号「柏崎・刈羽をおそった地震の被害と地盤」,123-133.
4. 柏崎刈羽原発活断層問題研究会(2014)要請書[柏崎刈羽原子力発電所の敷地および周辺の断層に関する厳正な科学的審査について,ならびに添付資料.
5. 岸清・宮脇理一郎・宮脇明子(1996)新潟県柏崎平野における上部更新統の層序と古環境の復元.第四紀研究, 35 (1) p. 1-16 .
6. 資源エネルギー庁(1996) 東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所付近の西山丘陵地域の断層について.資源エネルギー庁原子力発電安全企画審査課.23頁. 
7. 東京電力、刈羽村寺尾西土取場トレンチにみられる断層について.13頁.
8. 東京電力(1993)寺尾地点の断層について.「補足説明」東京電力(株)柏崎刈羽原子力建設所.5頁.
9. 東京電力(株)(2013) 柏崎刈羽原子力発電所 安田層の堆積年代に関する地質調査報告書.149p.
10. 東京電力(株)(2015) 柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉 追加地質調査結果.資料1-2 「北-2測線に関する調査」、資料1-3「寺尾付近の断層に関する調査」,ならびに資料1-5 「柏崎刈羽原子力発電所6号炉及び7号炉 敷地及び敷地近傍の古安田層の年代評価.原子力規制委員会第201回原子力発電所の新規制基準適合性に係わる審査会合.
11. 上田圭一(2011)模型実験による逆断層・活褶曲帯の発達過程の研究.電中研報告,N10049,32p.
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*柏崎刈羽原発活断層問題研究会     代表 大野隆一郎(元高校教員)
  飯川健勝(元高校教員:理学博士),卜部厚志(新潟大学准教授:理学博士),武本和幸(技術士:測量士),立石雅昭(新潟大学名誉教授:理学博士),寺崎紘一(元高校教員),徳間正一(元高校教員),豊島剛志(新潟大学理学部教授:理学博士),中島哲宏(元高校教員),長谷川正(元高校教員),渡辺秀男(元中学校教員:理学博士)
  代表連絡先  〒 951-8126 新潟市中央区学校町通二番町598番地
                         大野 隆一郎
 (この研究会は柏崎平野の形成過程に関する学術調査グループとしての荒浜砂丘団体研究グループとは趣旨が異なりますので、柏崎刈羽原子力発電所の安全に関わる活断層問題の研究会として別途呼びかけて検討を重ねています)

  添付資料1: 第201回審査会合 東京電力(株)資料1-3 6頁
東電はぎ取り

  添付資料2: 刈羽村寺尾西土取場の見取り図
   上: 荒浜砂丘団体研究グループ,1991年作成(この時点ではまだトレンチはくっさくされていない).
   下: 東京電力(株), 1993年作成
荒浜団研土取場見取り図
 東電寺尾土取場見取り図

添付資料3: 第201回審査会合 東京電力(株) 資料1-2
北2測線断面

北2測線位置図

添付資料4: 寺尾西土砂採取場 東部法面の断層分布
             (荒浜砂丘団体研究グループ,1992年作成)

  寺尾西土砂採取場東部の断層(19921010)

添付資料5: 大湊砂層ならびに安田面高度分布 東京電力(株) 2013
旧汀線高度分布

添付資料6: 敷地並びに敷地周辺の中~上部更新統の層序 (東京電力(株),2015)

安田層層序まとめ2

添付資料7: 柏崎市藤橋における安田層のケイ藻化石分析(荒浜砂丘団体研究グループ,2008)
藤橋ケイ藻













柏崎刈羽原発の耐震安全性ー寺尾断層(2)

ずさんな東電のはぎ取り.トレンチ調査-寺尾断層
  規制庁審査チームは厳正な審査を


   東京電力は柏崎刈羽原子力発電所の敷地北東約600mに位置する,刈羽村寺尾西の旧土砂採取場で,断層のはぎ取り・トレンチ調査,ならびにボーリング調査を昨年の3月以来,およそ10ヶ月行い,この2月にその結果を規制庁審査チームに報告し,石渡明規制委員をはじめとする規制庁審査チームは3月17日に,現地調査を行いました.
  そもそも,この地の断層が問題にされているのは,地元の研究グループが1991年からトレンチを含む地質調査を行い,この地に多数見られる断層を活断層として研究成果を学術雑誌に報告したからです(荒浜砂丘団体研究グループ,1993:新潟県荒浜砂丘地域に発達する後期更新世の断層.地球科学,47巻4号,339-343).この報告に対して,東京電力もそのトレンチを含む土砂採取場の断層の調査を行い,地すべりと結論づけました.当時の資源エネルギー庁もその東京電力の調査報告に沿って,これを地すべりとする見解を発表しました(資源エネルギー庁原子力安全規格審査課,1996:東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所付近の西山丘陵地域の断層について).しかし,東電や資源エネルギー庁の見解には多くの疑問があり,柏崎刈羽原子力発電所の再稼働申請の適合性審査が本格化する昨年1月には,研究グループが,規制委員会に対してその厳正な審査を申し入れていました.規制庁審査チームも敷地内だけでなく,敷地周辺の地殻変動に関するこうした問題を重視し,東京電力に対して地質に係わる多くの課題を指示し,東電は昨年3月来,調査を行い,ようやく,その調査結果を報告する段階にこぎ着けたものです.
  この調査報告はなお,周辺の活断層を地すべりとするものですが,順次その内容を批判していきます.一部はすでにこのブログでも私の意見を述べていますが,きわめて重要な問題であり,規制庁審査チームの厳正な調査を促すために,問題点を列挙していきます.なお,これらの問題点が,研究グループでオーソライズされたら,規制委員会への申し入れと記者会見を行う予定です.

東京電力のA断層は研究グル-プの指摘した断層とは異なる可能性について
  まず,多大な費用と労力を要したと推察される,今回の調査報告の対象とした断層が,荒浜砂丘団体研究グループ(1993)や資源エネルギー庁(1996)のA断層と同一,あるいはその延長だという検証についてです.わたしは,かなり疑わしいと思っています.

次の図は今回の調査の露頭でのはぎ取りとトレンチの図です.
東電はぎ取り

その左上の図(荒浜砂丘団体研究グループ:1993によるトレンチとの位置関係を示しています)を拡大します.
東電はぎ取り位置図
 この図のスケール,全体で25mと言うのは明らかな誤りです.最初の図のはぎ取り図のスケールと照らし合わせると,おそらく,この全長で100mでしょう.こうしたミスは時々ありますから,修正すれば,良いと思います.
問題は,荒浜砂丘団体研究グループや,その後の東電,資源エネルギー庁によるトレンチとの位置関係です.

 次に掲げるのは,資源エネルギー庁の図です.東電が当時行ったほぼ南北方向の露頭のスケッチの引用です(同様の図は研究グループの図にもあります)が,この図で見れば,明らかなように,大きなトレンチ(この図ではAトレンチ,先の位置図では荒浜団研の第1トレンチ)から,南へ40mほどのスケッチがあります.そうすると,当然,A断層の南部は,今回のはぎ取り面(最初の図の右側,一番北にA断層の矢印があります)の断層と重なることになります.この矢印のある高さは36m30cmほどです.
寺尾断層東電スケッチ
 この図の上面は高さ約41m,下面は高さ約36mです. そして,今ひとつ重要な点は,この図では,A断層は安田層(当時は中位段丘相当とされていました)の中を切断していました.しかし,今回のはぎ取り図では,A断層は椎谷層(中新世から鮮新世の地層)と安田層の境界をなしています.
 こうしたことからすれば,同じ断層だとするのに,かなり無理があると言えます.

 規制庁審査チームはまずこの点を東電に検証させるべきです.

  東電は相変わらず,地すべり説に固執していますが,その点についての問題は次回にします.


柏崎刈羽原発の耐震安全性-寺尾断層

柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性-寺尾断層
   規制委員会の厳正な調査・審査を求める


3月17日,規制庁審査チームが柏崎刈羽原発の敷地内及び敷地周辺の断層を現地調査ましした.それに先立つ2月27日,審査チームによるヒアリングで,東京電力は昨年3月以来進めてきた敷地内外の地質の追加調査の結果が一部を除き,ほぼまとまったとと言うことで,その報告を提出しましたが,今回の現地調査はその報告を受けて石渡明規制委員ほかの審査チームメンバーが露頭などを観察したものです.
現地調査の様子はメディアにも公開されました.本来であれば,問題点を指摘してきた我々研究グループや住民団体にも公開してしかるべきだと思うのですがね.
 今日,この件に関して,テレビ新潟の記者とカメラマンが自宅にインタビューに見えました.
 30日には,私達活断層研究グループが,大学で会合を持ち,改めてみんなで議論して,東京電力の解釈の問題や,今後の対応を検討しますが,テレビ局としてはそれも取材した上で,4月1日に報道したいとのことです.

  これまでもこのブログで,東京電力が刈羽村寺尾で進めてきた崖のはぎ取り調査中の露頭観察について報告しました.その際撮影した写真の一枚を示します.この写真の中央を右から左に走るのが東京電力が今回 A断層(私達が1992年,論文として公表した際のA 断層)の続きとしたものです.
IMG_1099.jpg
断層の上位はすべて,中位段丘堆積物である安田層で,黒く見えるのは泥炭層です.断層の下側は茶色の椎谷層(およそ500万年前後の地層)と,中央左の安田層中の泥層です.もう一つこの写真で重要な点は,この右の矢印の高さは36.3mと言うことです.

 今の時点で私が東京電力によるこの寺尾での断層の解釈について,問題だと思っているのは,次の4点です.

 1. 今回,東京電力が寺尾西の旧土砂採集場で掘り出したA断層は,1992年,荒浜団研が報告した断層とは異なるものです.
    → 東電資料の断層の分布図をチェックすれば分かります.私達荒浜砂丘団体研究グループの第1トレンチ南面では,A断層の最も高いところで,38.32m,走向10°Eで70度西傾斜です.この断層は南に行くと走向45°W,南西傾斜と, かなりカーブしますが,その段切りでは,36mより下で沈み込みます.また,この南西部の露頭位置ではA断層は安田層の中を切断しています.これは私達の92~93年頃の測量図やスケッチ,あるいは東電の93年の測量図でも明らかです.
  荒浜団研資料_1  
  赤い矢印で高さや断層のカーブを書き込みました.

 東京電力によると,この断層がさらに南に行くと,今回のはぎ取り面での断層につながると主張しています.次の図の左上の断層のトレースに示されています.
 東電はぎ取り

  この新しく掘り出された断層の最北部は,最初の写真で示した36.30mの高さにあります.そこでは断層の走向と傾斜は,30°E,56°Wです.また,ここでは基盤である椎谷層と安田層の間を切っています.西に傾斜する断層ですから,例え,走向がかなり曲がりくねっても,こういう風に現れるのは無理です.それは当初,私が,今回の新しい露頭を見たときから感じたことです.「同じ断層ではない」.これはある意味,1990年代前半に,現地で観察・記載していない人たちが担当している東京電力とそのコンサルタントでは抱きようがない感覚なのかも知れません.

   2.西に向かって,すなわち,山側(高い方)に滑るという地すべりにとってもっとも説明不能な問題は全く解決していません.

  東電は2月27日,現在の地形解析から周辺地域には多くの地すべり地形が存在する,と言う資料を出しましたが,この現世の地形を援用しても,寺尾の断層は全く説明できません.この点は2月27日のヒアリングでも,石渡委員の方から,指摘されました.一方で,東電は,地すべりが生じたときの地形は現在とは異なると言っておきながら,現地形解析を資料
として出すのですから,首尾一貫した首長となっておらず,また,科学的手法としては間違っています.
  当時の地形の推定図こそ出すべきです.

   3.地すべり地塊のモデルを示すべき.
 東電は今回,改めて断層面に見られる条線の解析を行い,左横ずれ断層成分の卓越する断層だとしています.条線の方向は,先の図にあります.これを見ると,確かに第1トレンチ周辺では,南への条線が卓越しています.しかし,条線の記述を見ると,北と南ではかなり,鉛直方向になっています.横ずれが卓越すると言えるのかどうか,はなはだ疑問です.また,この断層が左横ずれ成分の卓越する断層だとして,地すべり地塊のどこを見ていると言う解釈なのでしょうか.これも,地すべり地塊全体の復元図の中で位置づけるべきです.
地すべりモデル
 
  4.地すべりの主体は硬い椎谷層?表層すべりではなく,深層すべりの地すべり?

  3とも関わりますが,表層の数多く走る西傾斜の断層は,東電によるとボーリングで見いだされた椎谷層中に走るほぼ水平な層面滑り断層に収束するとしています.東西方向にほぼ水平(ただし,東西方向に配列したボーリングですので,その断層面は南北どちらかに傾斜しているとするのでしょう.椎谷層自体は南に10°以上傾斜しています) な地すべり断層(もとは椎谷層中の古い断層?)まで,この地すべり地塊は比較的硬い椎谷層中を中心に地すべりが発生したことになります.表層部の軟らかい地層が主として滑るのではなく,椎谷層で滑ったことになります.地すべり発生機構が理解できないと思います.
  この断面図で赤で書かれた断層が下位の方で収れんしているように書かれているのは全くの創作です.ボーリング4本で何が確認できるのでしょうか.そこの深さに断層面があると言うだけで,カーズするとか,収れんするというのは全くの証拠のないものです.

断層対比

  30日,研究グループで再度検討した上で,規制委員会に対して,厳正な調査・審査を再度申し入れたいと思います.

 




 
プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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