東電・フィルタベント仕様への質問

東電のフィルタベント装置に関する質問を提出

 東京電力(株)は規制委による新規制基準で沸騰水型原子力発電所で設置が義務付けられたフィルタ-ベント本体を10月24日、柏崎刈羽原子力発電所に搬入しました。
 このフィルターベントについては、放射能を放出する装置であるとの認識に立って、新潟県としてももっとも問題にしてきたものです。その性能・機能について、12月19日の第3回新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会で、東京電力(株)から概要の説明を受けました。「概要」はhttp://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/496/1020/131219_no3,0.pdf にアップされています。

その2頁目に目的と役割が書かれています。
FV目的1

 委員会の場では、私は、役割の第一項目、

炉心損傷防止のためのベント
事故時に格納容器の圧力を下げ,原子炉の減圧,低圧注水を確実に行えるようにするとともに,原子炉の熱を大気に逃がします。これにより,炉心の損傷防止による放射性物質の閉じ込めを,より確かにすることができます。

 について、これまでの原子力発電所の安全設計思想の根幹であった「止める・冷やす・閉じ込める」という機能の基本的な転換をはかるものではないのか、とただしました。福島第1原発の事故の経緯において、「冷やす」機能と「閉じ込める」機能との両立は困難なことが明らかに成り、放射能を含む蒸気(ガス)を大気中に放出して、格納容器内の圧力を低減することによって、格納容器へ注水し、冷却し続けることとしたのがこの装置の役割と言わざるをえないと思ったからです。勿論、その正否は別にして、電力事業者や国は「閉じ込める」機能を放棄すると言うことを明確に説明するべきだと思います。ベントすれば、放射能を閉じ込めることができると言う文言は矛盾です。

 東京電力の担当者からは、一定の回答がありましたが、回答を誤って伝えるとまずいので、近いうちに公開される議事録で、確認いただければと思います。

 委員会の場では時間も限られていますしたので、仕様や性能についてはあらためて質問を出すので、別途回答をお願いしたい旨、申しました。

今日、以下の質問状を新潟県の原子力安全対策課に送りました。
年明けてから、回答が寄せられるものと思います。


                                        2013年12月29日

フィルター付きベントの仕様・性能についての質問
        
                        新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会
                                        委員 立石雅昭

 12月19日の第3回技術委員会において、東京電力(株)から説明を受けました「フィルターベント設備の概要」について、特にその仕様ならびに性能に関して、以下、質問します。回答方よろしくお願いします。

Q1:フィルター付きベントは、例えば、火力発電の排気筒には脱硫などのため取り付けられ、化学プラント工場の排気筒にはそれぞれの目的に適合したフィルター付きベントが設置されています。このような既存のベント装置の知見が原発のベントにどのように生かされているのでしょうか?

Q2:福島第1原発における汚染水タンクの杜撰な設計・施行をみれば、ベント装置本体の性能・機能維持に危惧を抱きます。格納容器は厚さ約3cmの鋼鉄製ですが、高圧時には微小なクラックも爆発を誘発する危険性があると思われます。排気管等はその鋼板に穴を開けて取り付ける事になりますが、開口や溶接による応力歪などで、格納容器に微小なクラックができる可能性が無いと言えるのでしょうか。又、クラックなどができていないことを確認する手順はどのようにお考えなのでしょうか。

Q3:ベント装置の能力として、説明では31.6(kg/s)の蒸気を処理が可能とされ、定格出力の1%に相当する蒸気量は15.8 (kg/s)なので、2倍の能力、とされています。ベントタンクの大きさは高さ8m、直径4m。一方、100 万kW級の圧力容器は高さが約22m、内径が約6.4m。ベントタンクに流入する大量の高圧の水素ガス・水蒸気を適正に処理できるのかどうか、説明してください。

Q4:ベントタンクの水とはどういう水ですか?薬水ではないのですか?「水」の沸点は?高温下でもこの「水」は沸騰しないのでしょうか?沸騰しても処理能力は変わらないのですか?

Q5:フィルターの性能として粒子状放射性物質を、99.9%以上除去、とありますが、粒子状放射性物質とはヨウ素やセシウムの原子を核に水蒸気が付着したエアロゾル状の微粒子のことでしょうか? それらの粒径はどの程度をお考えですか?

Q6:フィルターによる主たる除去核種はヨウ素とセシウムと思われますが、アクアクラスバーとメタルフィルターはそれぞれどのような機能なのでしょうか。アクアスクラバーでヨウ素もセシウムも捕集、ただし、ヨウ素は融点が113.6度Cで昇華性のため、昇華したヨウ素をメタルフィルターで吸着するということでしょうか? アクアクラスバーの捕集性能・容量とメタルフィルターの吸着性能・容量をご説明ください。

Q7:フィルター付きベントのシミュレーションプログラムについて説明してください。3次元熱流体解析ソフトだと思われますが、こうしたソフトは今、開発途上だと思います。実験結果をもとに、プログラムの改良と解析が進められなければなりません。原子力発電所のフィルター付きベント装置は巨大でかつ複雑な構造です。その上、それより更に巨大な格納容器に接続しています。そのような原子炉からベント装置にいたる3次元熱流体の挙動を正確に解析できるシミュレーションソフトとはどのようなものでしょうか? また、それを解析できるスパコンとはどのようなものですか?



  フィルターベントは、低減するとは言え、大量の放射性物質を大気中に放出し、周辺住民に被ばくを強いるものと言わざるを得ません。こんな装置を付けなければ安全を担保できないような原子力発電所など、稼働させるべきではないのです。
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活断層を地すべりと強弁する東京電力

敷地直近の寺尾断層を地すべりとした東電並びに資源エネルギー庁 - 規制庁はあらためて全面的な科学的調査を! 

 柏崎平野の形成過程の調査を進めていた荒浜砂丘団体研究グループ(荒浜は地名)(私も一人のメンバーとして参加)は1991年、柏崎刈羽原子力発電所の敷地の北東方、約1.5kmに位置する刈羽村寺尾の土砂採取場で、後期更新世の安田層とその上位の番神砂層、そして、それらによって不整合で覆われる鮮新世から前期更新世の椎谷層、西山層を切断する規模の大きな断層を見いだし、調査・解析を行いました。さらに翌年にはその近傍でユンボによるトレンチ掘削を行い、断層の性状を詳しく調査しました。
 これらの調査成果は学会で発表したり、学術雑誌に投稿しています(荒浜砂丘団体研究グループ、1993,地球科学47巻4号)。
 原子力発電所敷地を含む西山丘陵地域が12~13万年前以降、活断層を含む地殻変動を被った場であることを如実に示すこうした研究成果に対して、地元住民団体や国会議員による要請もあり、東京電力は独自に調査を行って、これらの断層をいずれも地すべりとする見解を明らかにしました。さらに資源エネルギー庁は1994年、その東電の報告をもとにこれらの断層を「地すべり」としました.
 以降、寺尾断層は、2007年の中越沖地震後も触れられることはありませんでした。昨年、安全保安院の下での地震・津波に関する意見聴取会で、この断層への言及があり、敷地内の建屋直下の断層群の活動性と関わって、あらためてその実態の解明が求められています。年明けにも、柏崎刈羽原子力発電所の断層問題として再整理し、規制委に厳正な科学的調査を申し入れる予定でいますが、ここではどのような断層が問題になっているのかを簡単に説明しておきます。

柏崎断層_20131227_0049_NEW  柏崎断層_20131227_0032_NEW

 この土砂採取場は高さが30mを越す砂丘地で、安全のために5mごとに段切りがされています。左の写真は高さや距離を計測しているところで、中央部下から上に並ぶポールが断層の位置を示しています。この写真の右側が東・平野側。左側が西で高くなっていて,尾根をなしています。写真手前のポールの更に下方のより低いところにみられる断層を詳しく観察しました。右写真の、淡褐色の塊状泥岩からなる西山層の上面(番神砂層で不整合に覆われる)が断層を介して、右上部から左下へ、1m50cm近くずれた正断層をなしています。


柏崎断層_20131227_0021_NEW  柏崎断層_20131227_0022_NEW

 左の写真は92年に掘削した一つのトレンチの壁面についての荒浜砂丘団研によるスケッチ展開図、右の写真は東京電力による同じトレンチのスケッチの展開図。それぞれ、スケッチの左側は堀込んだ南側の面、中央部が奥の面(西)、右側は北側の面のスケッチ。東電の図は当然ながら、下請けした地質コンサルタントによるスケッチです。最下位の地層は椎谷層(鮮新世の地層,左の写真ではオレンジ色に塗色)。間に後期更新世の地層・安田層(黄緑に塗色)を挟んで、最上位の地層は同じく後期更新世の地層である番神砂層(黄色に塗色)であり、これらの正断層は三層を明瞭に切断しています。

 これらの断層の形成過程に関する議論で最も重大な点は、この断層が奥、すなわち西に向かって50度~60度傾斜していることです。西というのは、現在の地形でいうと、高まり側です。少なくともこの数万年という期間に変位したことが明らかな断層が、現在の平野側ではなく、山側に向かって滑ることなどあり得ません。
 東電は、これらの断層が正断層のみであることや、変位量が下位に向かって小さくなること、断層が下方で面無しになることなどを地すべりとする根拠にあげていますが、いずれも誤った評価であり、科学的に正当な判断とは言えません。下左の写真は、少し広い範囲で見た断層の分布と、二つ目のトレンチの荒浜団体研究グループによるスケッチです。一部、逆断層センスの断層があることが分かります。下右の写真は東電による第一のトレンチの下部の写真。この部分を東電は面無し断層と記述しています。2段目の写真の左側で見れば明らかなように、変位も下ほど大きくなっています。東電はこれを無理矢理、対比のできない地層の変位から下ほど変位量が小さくなっていると強弁しているのです。

柏崎断層_20131227_0024_NEW  柏崎断層_20131227_0029_NEW

 最後に、小雨の中、断層の観察・記載を行う団体研究メンバー。もう20年以上前だね。みんな結構若い。でも、柏崎刈羽原発の安全性にかかわって、地質科学的にその問題を追求してきた私たちは、福島を経て、今あらためて、私たちの役割を再認識しています。
 
柏崎断層_20131227_0035_NEW 
 東電や規制委との闘いはこれからが本番。調査を継続して、社会に発信していきたいと思います。1月10日にも年明け初会合を予定しています。 

北陸電力志賀原発敷地とその周辺の活断層最終報告について

  昨日(2013年12月19日)、北陸電力((株))は石川県志賀原発の敷地及びその周辺の活断層に関する調査結果をプレス発表という形で公表しました。概要2頁だけですが、ここに貼り付けます。ご関心お有りの方は、北陸電力のHPから見てください。
 この間、住民団体とともに、周辺の断層調査を進めてきた立場から、以下にその報告書の問題点を書き留めます。なお、この文章は地元住民団体の方々にもお送りさせていただいております。

陸電最終報告1

陸電最終報告2

 1.敷地内シーム群の活動性評価の非科学性
 (1)敷地内に認められるシーム群(S-1からS-8)の分布は、一見して、これらの破断が北北西―南南東の圧縮応力によってほぼ同時期に形成された共役断層であることを示しています。この応力の配置は、能登半島におけるGPS観測による地表のひずみ方向やプレート配置から推定される現在の応力分布とは調和的ではありません。しかし、北北西にのし上がったM6.9の2007年の能登半島地震とは調和的ですし、南に位置する邑知潟断層帯の動きとも調和的です。敷地内シーム群の活動性について、能登半島の地塊構造や現在の地殻変動との関係で解析を行わなければ、その活動性を科学的に否定したことにはなりません。
 (2)断層活動に伴うシームS-1の活動時期に関して、北陸電力はトレンチなどの調査・観察で、シームの上に重なる地層の変位・変形から、その活動時期を推定し、将来活動する可能性を否定しています。敷地前面の海岸での断層を見れば、同方向に延びる断層が多数存在することは明らかであり、敷地内においても既に知られた断層以外にも平行して多数の断層が想定されます。これらの断層群が活動する時、異なる挙動をする可能性が高いのです。北陸電力の報告は、トレンチ調査などで対象としたシームS-1が、原子炉建屋直下のS-1と同一のものである、とする根拠が不十分で、恣意的選択の可能性が排除できません。
 (3)2012年7月の「地震・津波に関する意見聴取会」で、委員から「典型的な活断層」と指摘された設置許可時のトレンチスケッチのS-1シームに沿う段差を2013年6月の報告と同様、海岸浸食によるものとしていますが、北陸電力による調査においても、このシームS-1は深さ300mに達する破断面であり、明らかに断層運動によってできたものです。北陸電力はまず、シーム群が断層運動でできたものであることをまず認めるべきです。その上で、シームS-1の活動時期を検証するには、上載する新しい地層のずれとともに、その地層の変位・変形がどこまで及んでいるかを、地層の層状構造や構成する粒子群の配列などの検討から解析しなければなりません。防潮堤基礎部や海岸の断層に沿った地形と似ている、というだけの論拠で、新しい時期の活動を否定するのは非科学的と言わざるを得ません。

2.福浦断層との関連性否定の科学的論拠の不十分さ
 (1)北陸電力は志賀原発の設置許可申請時、原発の東1.5kmの地点をほぼ南北に走る福浦断層を活動性無しとしてきましたが、今回の報告で初めて、「12~13万年前以降の活動性が否定できない」ことを認め、はじめて福浦断層を耐震評価の検討対象としました。しかし、評価の結果の詳細は明らかにされていませんが、「安全性に影響を与えるものではない」との結論を導いています。北陸電力はこの福浦弾道の長さを2.7kmと推定しています。今日の活断層と地震の規模に関する調査・研究の到達点で言えば、地表に地震断層として痕跡を残す地震の規模はM7.2以上とされています。勿論、それより小さい規模でも地震断層が現れることもありますが、M7.2でも現れない場合も知られています。こうした科学の最前線の知見からすれば、志賀原発敷地東1.5kmのところでM7.2を想定し、入力しなければなりません。福浦断層が活動しても「安全性に影響がない」というならばその論拠を示すべきです。
(2)北陸電力は福浦断層と敷地内シーム群との関連を否定しています。その論拠は、シームS-1が福浦断層に連続しないから、というものです。先にも述べたようにS-1の延びに対する恣意的選択を別にして、仮に連続しないとしても、敷地内シーム群がどのようにして形成されたかも解析しないで、連続していない、すなわち福浦断層から派生していない、と言う論拠だけで、福浦断層と敷地内シーム群との関連を否定する論法は「結論ありき」の解析だと言わざるを得ません。シーム群がどのように形成されたと考えるのか、明らかにするべきです。北陸電力は「周辺の断層が活動したと想定し、地殻変動に伴う影響などを数値計算に基づき解析した結果、シームは剪断破壊しないことを確認」、とありますが、机上の計算では関わりがないように解析することができるようにパラメータを入れれば済むことで、これでは関わりを否定したことにはなりません。福浦断層の活動を引き起こす応力や福浦断層が活動した時の周辺の岩体への副次的影響などを、入力するパラメータとともに明らかにするべきです。
周辺で大きな地震が引き起こされた時も、敷地内シーム群が動かないと言うことを立証するべきです。

3. 敷地並びに周辺地域の12~13万年前以降の隆起変形を無視。
北陸電力の最終報告の最大の問題は、志賀原発が高度20m前後に達する海成の中位段丘面に立地するという厳然たる事実を無視していることです。海成中位段丘は12~13万年前、現在とほぼ同じ海面高度で堆積した海成の地層から成っています。したがって、志賀原発が立地する段丘は、12~13万年の間に、20m前後まで隆起してきたことが明らかです。それが地震の度に間欠的に隆起してきたものかどうかの検討なしに、志賀原発の耐震安全性を確認する事はできません。


プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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