柏崎刈羽原発の耐震安全性-寺尾断層

柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性-寺尾断層
   規制委員会の厳正な調査・審査を求める


3月17日,規制庁審査チームが柏崎刈羽原発の敷地内及び敷地周辺の断層を現地調査ましした.それに先立つ2月27日,審査チームによるヒアリングで,東京電力は昨年3月以来進めてきた敷地内外の地質の追加調査の結果が一部を除き,ほぼまとまったとと言うことで,その報告を提出しましたが,今回の現地調査はその報告を受けて石渡明規制委員ほかの審査チームメンバーが露頭などを観察したものです.
現地調査の様子はメディアにも公開されました.本来であれば,問題点を指摘してきた我々研究グループや住民団体にも公開してしかるべきだと思うのですがね.
 今日,この件に関して,テレビ新潟の記者とカメラマンが自宅にインタビューに見えました.
 30日には,私達活断層研究グループが,大学で会合を持ち,改めてみんなで議論して,東京電力の解釈の問題や,今後の対応を検討しますが,テレビ局としてはそれも取材した上で,4月1日に報道したいとのことです.

  これまでもこのブログで,東京電力が刈羽村寺尾で進めてきた崖のはぎ取り調査中の露頭観察について報告しました.その際撮影した写真の一枚を示します.この写真の中央を右から左に走るのが東京電力が今回 A断層(私達が1992年,論文として公表した際のA 断層)の続きとしたものです.
IMG_1099.jpg
断層の上位はすべて,中位段丘堆積物である安田層で,黒く見えるのは泥炭層です.断層の下側は茶色の椎谷層(およそ500万年前後の地層)と,中央左の安田層中の泥層です.もう一つこの写真で重要な点は,この右の矢印の高さは36.3mと言うことです.

 今の時点で私が東京電力によるこの寺尾での断層の解釈について,問題だと思っているのは,次の4点です.

 1. 今回,東京電力が寺尾西の旧土砂採集場で掘り出したA断層は,1992年,荒浜団研が報告した断層とは異なるものです.
    → 東電資料の断層の分布図をチェックすれば分かります.私達荒浜砂丘団体研究グループの第1トレンチ南面では,A断層の最も高いところで,38.32m,走向10°Eで70度西傾斜です.この断層は南に行くと走向45°W,南西傾斜と, かなりカーブしますが,その段切りでは,36mより下で沈み込みます.また,この南西部の露頭位置ではA断層は安田層の中を切断しています.これは私達の92~93年頃の測量図やスケッチ,あるいは東電の93年の測量図でも明らかです.
  荒浜団研資料_1  
  赤い矢印で高さや断層のカーブを書き込みました.

 東京電力によると,この断層がさらに南に行くと,今回のはぎ取り面での断層につながると主張しています.次の図の左上の断層のトレースに示されています.
 東電はぎ取り

  この新しく掘り出された断層の最北部は,最初の写真で示した36.30mの高さにあります.そこでは断層の走向と傾斜は,30°E,56°Wです.また,ここでは基盤である椎谷層と安田層の間を切っています.西に傾斜する断層ですから,例え,走向がかなり曲がりくねっても,こういう風に現れるのは無理です.それは当初,私が,今回の新しい露頭を見たときから感じたことです.「同じ断層ではない」.これはある意味,1990年代前半に,現地で観察・記載していない人たちが担当している東京電力とそのコンサルタントでは抱きようがない感覚なのかも知れません.

   2.西に向かって,すなわち,山側(高い方)に滑るという地すべりにとってもっとも説明不能な問題は全く解決していません.

  東電は2月27日,現在の地形解析から周辺地域には多くの地すべり地形が存在する,と言う資料を出しましたが,この現世の地形を援用しても,寺尾の断層は全く説明できません.この点は2月27日のヒアリングでも,石渡委員の方から,指摘されました.一方で,東電は,地すべりが生じたときの地形は現在とは異なると言っておきながら,現地形解析を資料
として出すのですから,首尾一貫した首長となっておらず,また,科学的手法としては間違っています.
  当時の地形の推定図こそ出すべきです.

   3.地すべり地塊のモデルを示すべき.
 東電は今回,改めて断層面に見られる条線の解析を行い,左横ずれ断層成分の卓越する断層だとしています.条線の方向は,先の図にあります.これを見ると,確かに第1トレンチ周辺では,南への条線が卓越しています.しかし,条線の記述を見ると,北と南ではかなり,鉛直方向になっています.横ずれが卓越すると言えるのかどうか,はなはだ疑問です.また,この断層が左横ずれ成分の卓越する断層だとして,地すべり地塊のどこを見ていると言う解釈なのでしょうか.これも,地すべり地塊全体の復元図の中で位置づけるべきです.
地すべりモデル
 
  4.地すべりの主体は硬い椎谷層?表層すべりではなく,深層すべりの地すべり?

  3とも関わりますが,表層の数多く走る西傾斜の断層は,東電によるとボーリングで見いだされた椎谷層中に走るほぼ水平な層面滑り断層に収束するとしています.東西方向にほぼ水平(ただし,東西方向に配列したボーリングですので,その断層面は南北どちらかに傾斜しているとするのでしょう.椎谷層自体は南に10°以上傾斜しています) な地すべり断層(もとは椎谷層中の古い断層?)まで,この地すべり地塊は比較的硬い椎谷層中を中心に地すべりが発生したことになります.表層部の軟らかい地層が主として滑るのではなく,椎谷層で滑ったことになります.地すべり発生機構が理解できないと思います.
  この断面図で赤で書かれた断層が下位の方で収れんしているように書かれているのは全くの創作です.ボーリング4本で何が確認できるのでしょうか.そこの深さに断層面があると言うだけで,カーズするとか,収れんするというのは全くの証拠のないものです.

断層対比

  30日,研究グループで再度検討した上で,規制委員会に対して,厳正な調査・審査を再度申し入れたいと思います.

 




 
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原発の耐震安全性-中越沖地震の教訓は生かされているか(1)

原発の耐震安全性-中越沖地震の教訓は生かされているか(1)

  原子力規制委員会は鹿児島県の九州電力川内原発に続いて、福井県の関西電力高浜原発が、1昨年7月に施行した「規制基準」に適合しているとの判断を示した。国民過半数の願いに反して、政府/電力事業者が原発再稼働の動きを加速している中、2007年の中越沖地震で新潟県の東京電力柏崎刈羽原発が被災した教訓を改めて共有しなければならない。先般、昨年の福井地裁による大飯原発運転差し止め判決に対する控訴審での関西電力の地裁判決への反論を読ませていただいたが、その内容は1995年の兵庫県南部地震以降地震学が長足の進歩を遂げ、地震の発震機構や、地下地質構造に関わる地震波の伝搬・増幅機構が良く理解できるようになったことから、それらの成果を取り入れた原発は、耐震安全性が十分確保されている、というものであった。まさに安全神話そのものである。原発を扱う事業者や規制機関がこのような立場にあるとすると、再び福島が再来することは目に見えている。

 特に、その関西電力の反論は中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災の教訓を無視していることから、ここでは2回に分けて、原発の耐震安全性を脅かす地震動に関わって未解明の問題を明らかにしておきたい。
  
  柏崎刈羽原発を襲った上下動

 下の図表は、中越沖地震後に東京電力が公表した1~7号機の各原子炉建屋基礎版での地震計記録である。
  基礎版での地震動の大きさ
  この記録をもとに、東京電力や原子力安全基盤機構は、その東西方向の水平動に注目して、1~4号機側は、5~7号機側に比して、有為に大きいとし、その要因解析を進めた。その解析結果の問題は次回に取り上げる。
 今回は、その上下動の問題を検討する。
 なお、この問題について、私は、新潟県の「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」のもとに設置された「地震,地質・地盤に関する小委員会」の第20回会合(平成21年7月24日)で、資料(http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/tateishi.pdf)を提出し、問題提起をしたが、議事録を見れば分かるように、満足のいく回答はなされていない。この問題は、以前から電力事業者の耐震安全設計に関わって分析を進め、問題を提起されてこられた東井怜さんの分析結果に基づいている。

 従来の耐震設計では、上下動地震動は十分に考慮されず、基準地震動を策定する際には、水平方向の1/2といった漠としたものであった。しかし、中越沖地震による地震動はこうした設定が誤りであることを明確に示している。
 さらに、水平動では1.5倍近い揺れを示した(とされる)1~4号機側が、上下動では逆に5~7号機側より揺れが小さかった。なぜ、こうしたことが起こるのか、解明されたとは言えない。

 ところが、東電によると、この原子炉建屋基礎版での観測値をもとに推定された、深さ約150~300 mの解放基盤面での揺れ(これをはぎ取り波と呼んでいる:次の表や図では推定波とされている)をみると、地震動の大きさが逆転する。解放基盤での推定値は、ほかの号機では基礎版観測値より大きくなるにもかかわらず、基礎版で最大の上下動を示した6号機だけは小さくなり、全体として、5~7号機側が1~4号機側より小さくなるのである。
 1~4号機側と5~7号機側では、その解放基盤の深さが違う。1~4号機側は総じて深く,およそ290m、一方、5~7号機側は浅いが、6号/7号は同じ167m。やや時代の古い硬い地層が浅いところにあると言うことになる。しかし、6/7号機は同じ傾向になるはず。

 次の表とそれをグラフ化した図は、新しい基準地震動Ssを算定した際の上下動の値である。修正前とあるのは、基準地震動Ssを算定するに当たって、当敷地に最も大きな影響を及ぼすと考えられた海底下のF-B断層の長さを修正する前の上下動推定値、修正後というのは、その断層の長さを,安全保安院の合同ワーキングなどでの指摘を受け、長くした場合の値である。表で分かるように、この修正後の、1~5号機の値は東電の報告書では示されていない。
 
上下動比較表

上下動比較

  これらの数値をつぶさに眺めると、操作が行われていることは明らかである。

  要するに、地震の上下動と地下地質との関係はほとんど解明されてないままであるし、また、原発への影響も明らかにされているとは言えない。
  なお、ここで、建屋基礎版で最大の上下動を記録した6号機が、7号機とともに、再稼働申請されていることを付言しておく。
プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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