自治体学校 分科会「原子力地域防災と再生可能エネルギー自立への道」

第57回自治体学校in金沢
 
  7月下旬の3日間,金沢でひらかれますが, 初日,記念講演が 宮本憲一さん, 私はこれまで,なかなか機会が無く,お話を伺えませんでしたが,ようやくかないそうです.

自治体学校パンフDSC_0171

 2日目に開催される分科会,その第3分科会のテーマが「原子力地域防災と再生可能エネルギー自立への道」ということで,地元実行委員会から依頼されて,助言者をお引き受けしました.1昨年,新潟で開催した際は,地元実行委員長をお引き受けしたのですが,今回はフル日程で参加できそうです.

 ここに,昨日,事務局に送ったレジメの一部を紹介します.

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3. 実効性ある原子力防災/避難計画を求める運動

 実効性ある防災/避難計画を求める運動は,原発再稼働に反対する運動を立地並びに周辺地域で大きく前進させる上で,重要な環の一つになっている.稼働を求めるあるいは賛成という立場の人にとっても,安全性の確立は切実な要求であり,まして,原発の再稼働が現実になってきた今日,立地並びに周辺地域の住民の命を守る運動として大きく発展させなければならない課題となっている.住民の命と暮らしを守る立場で行政を進める自治体にとっても,この課題は,起こりうる原発の過酷事故から住民の被ばくを防ぐ,きわめて重要な課題であり,立地並びに周辺自治体にとって,防災/避難計画を策定することは,困難ではあるが,少しでも実効性を高める観点からの取り組みが求められている.
《中略》

 (1) 複雑で難解な,原子力防災・避難の仕組み
 原発での事故の状況を的確に判断し,必要な体制を講じて,住民の被ばくを防ぐシステムがきわめて煩雑である.原子力災害対策重点区域は原発からの距離によって大きく3つに分けられている.事故による放射能の放出前に予防的防護措置(避難等)を準備する区域(5km圏内),環境モニタリング等の結果を踏まえ,避難・屋内待避等を準備する緊急防護措置を準備する区域(5~おおむね30km圏内),プルーム通過時の被ばくを避ける防護措置を実施する地域でおおむね30~50圏内.そして,緊急事態のレベル区分も3つに分けられ,その判断基準が示されている.これを緊急事態判断基準(EAL)と呼んでいる(資料3.4).さらに,「避難」などの防護措置は,被ばく状態や汚染状態をさらに細かく区分した運用上の介入レベル(OIL)と呼ばれる基準に沿って定められている.
  資料3.  中央防災会議資料より
避難EAL
  
  (こうなると,自治体職員で十分理解できる人ってどれだけいるのでしょうね.)

(2)防災・避難計画を検討する際のいくつかの視点
  まず,原発で生じている異常事態を正しく把握し,それを正確に伝える.これが基本.福島では事態の把握も,正確な情報の発信もなされなかった. 15条通報に至れば,それを受けて,災害対策本部(官邸),現地対策本部(オフサイトセンター),さらには道府県に対策本部が立ち上げられ,それぞれの役割分担に応じて,機能的に判断,指示する仕組みになっている.組織体制はが作り上げられていると言うことと,緊急時にそれがうまく機能するかどうかは別の問題.福島の経験からすれば,まず正確な情報発信が行われず,その通報に基づく判断も,15条通報から避難指示が出るまで,4時間以上のロスがあった.事前の度重なる訓練で,当初の目的通り機能するかどうかのチェックが必要.
  その上で,現在の計画の大きな課題は
災害弱者援護の視点の欠落:例えば,福井エリアの検討結果では,欠落.現状ではそれぞれの施設任せ.
複合災害の視点の欠落: 自家用車あるいはバス等で避難する際,高速道は地震等で被災し,ほぼ直ちに通行止めとなり,ほとんど使用をあてにできない.しかし,福井エリア検討結果では,災害時における高速道通行対象車両は「応急対策車両」となっており,避難車両は含まれない.そこで,避難する車両には交通規制をかけないという方法も可能かどうか打診し,可能との見解を確認したでとどまっている.船舶による避難(愛媛の伊方原発や石川の志賀原発など)を考える際も,港湾施設が被災したり,悪天候で着岸できない場合があることを想定しておかねばならない. 現状の避難計画はほとんど絵に描いた餅,数合わせに過ぎない.
汚染地域への運転手.医療従事者,ヨウ素剤配布等,避難/防護に必要な人材派遣が可能か:現行法制下では,自治体首長は公務員あるいは一般民間人にどこまで指示/命令が可能なのか.この点は新潟の県知事から原子力規制委員会へその法的整備を求めた要望書が数回にわたって提出されている.
避難の長期化への無策:福島の現状を見れば,避難が長期化することが予想されるが,防災/避難計画は避難するまでで終わっている.現実に予想される様々な混乱・苦難に対して無策.

4. 2030年のエネルギー構成政府案
 2013年7月の新規制基準公布を受け,電力事業者は全国14原発23基の原発再稼働を申請している.一方,この4月に,経産省資源エネルギー庁は2030年時点でのエネルギーミックス案を提示(資料5),7月1日まで意見(パブリックコメント)を公募していた.
 
 資料5 2030年のエネルギー構成案(経産省資源エネルギー庁資料から)
energy mix

 このエネルギーミックス案では,2030年の電力需要推計は17%の省エネを見込んで,10,650億kwh/年であり,その20%~22%を原子力でまかなうとすると,2030年時点で原発による発電電力量は約2130~2343億kwh/年となる.その電力を生み出す原発の設備容量は,稼働率70%と見込むと,3474~3821万kwが必要となる.福島原発事故後,廃炉が決まったのは,福島第1原発の6基と,原子炉等規制法(炉規法)の「改正」で原則40年とされた運転期間の関係で,日本原電の敦賀1号,関西電力の美浜1・2号,中国電力の島根1号,九州電力の玄海1号の計5基である.したがって現在の日本における原発の設備容量は43基の4363.5万kwとなる.炉規法40年 の原則を当てはめれば,2030年には18基,1918万kwとなる.政府が維持したいと考える設備容量の55%しかない(資料6).
  資料6 原子力発電の40年運転制限制
エネルギーミックス

 どうするか,現在申請中の23基すべての原発の再稼働に加えて,
  1)事故前には60%前後だった稼働率を80%に高める.
  2)すでに設置許可が下りている電源開発の大間原発,中国電力の島根原発を稼働させる,東電の青森東通原発も?
  3)43基の半分は炉規法で1回だけ認められている60年へ稼働年数を延長させる.

 これらの方策の実現はいずれも簡単ではない.原発のリプレースや新設が必要だとする動きが強まることが想定される.

  《後略》
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 自治体学校,大変興味深い内容なのですが,議員や自治体職員を対象としている側面が強く,少々高額.著うっと参加しづらいところがありますね.



 
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伊方原発,断層長480kmでも基準地震動650ガル!?

 四国電力の伊方原発,原子力規制委員会による審査書案がパブリックコメントにかけられています.今日,6月19日が締め切りです.この審査書案には伊方原発の耐震安全性にかかわって大きな問題があります.何より,耐震設計の基礎になる,基準地震動の策定にかかわる問題です.審査の結果,規制基準に適合していることを確認したとされますが,その根拠が書き込まれていません.
 先のブログでは,伊方原発が位置する佐田岬半島はこの12~13万年の間に,30m近く隆起してきたことを現地での観察を踏まえて述べましたが,四国電力も,規制委員会も,佐田岬が隆起してきた過程について,解析を行っていません.
 さらにここでは,四国電力が行った新しい基準地震動について,簡単に見てみます.

 特定震源
  上図は昨年暮れに,四国電力が基準地震動を見直した際の活断層中央構造線の長さに関する資料です.中央構造線に関して3つのケースを検討しています.最も長い,東は近畿地方金剛山地から,西は大分県大分平野に延びる,全長480kmの中央構造線を見積もっています.

  伊方原発の沖合海底に見いだされた伊予灘断層の分布を,衛星写真の上に重ねたのが次の図です.
中央構造線伊予灘断層

 原発に近接して,中央構造線の一部をなす伊予灘断層西部が半島に近接して走ることが見て取れます.この断層は伊方原発の建設時にはその活動性が否定されていました.高知大学岡村 眞教授らの調査で,この図のやや東,上灘沖でその活動性が指摘されて初めて,四国電力もその活動性を認めました.そして,東北地方太平洋沖地震を踏まえて,断層の連動の可能性を考慮することとなり,最大480kmの連動で,巨大な地震が起こる可能性が考慮することとされたのです.

 断層長480kmで,基準地震動650ガルは低すぎます.
 
 ところが,この長大な断層による基準地震動の値は,650ガル.この値は,2007年,新潟県の東京電力柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震の教訓を踏まえ,原子炉関連構造物や機器・配管に大きな影響を与える短周期の地震動について,1.5倍に引き上げて策定したものです.
 それまで,その1/3の長さの130km,あるいは伊予灘断層などが単独で動くとして求められていた値,570ガルに比して,480kmと伸ばしても,その上積み分はわずか,80ガルです.この値について,東大地震研纐纈一起教授は,これだけしか変わらない,という結果に対して,「違和感」を感じるとし,「もう少し大きくなってもいい気はする」と述べています(愛媛新聞3月21日付).
  地震を引き起こす断層を特定した上で,その断層から発せられる地震動を推定する手法は種々改良が加えられてきましたが,その計算の過程では,地震の発生する深さの幅(中央構造線ではどのケースでも12kmと見積もられています),断層の傾き,応力降下量(アスペリティーと呼ばれる岩盤が固く癒着した部分で,壊れると大きな地震動を発生する部分で,推定される破壊の前後の力の低下量,大きければ,それだけ放出されるエネルギーが大きくなる),など,さまざまなパラメーターが必要ですが,これらのパラメーターを操作して,発生する地震の規模を過小に押さえ込むことが可能となります.地震動を低く見積もる手法の問題点は,大阪府立大学名誉教授の長沢啓行氏が,伊方原発訴訟における意見書(http://www.ikata-tomeru.jp/wp-content/uploads/2012/01/nagasaw107goushou.pdf)で,指摘されています.
 長沢氏は,伊方だけではなく,川内,大飯・高浜,そして,この伊方,と各地の原発における地震動評価の問題を科学的・系統的に解析されています.それに対する電力事業者や規制委員会からの科学的反論は見たことがありません.

  原子力規制委員会は,伊方原発の規制基準適合判断を撤回し,耐震安全性に関する厳密な科学的審査を改めて行うよう求めます.

 
 

  

四国電力,伊方原発の立地地盤は活構造地域


四国電力の伊方原子力発電所は,佐田岬半島の根元に立地します.
衛星写真
佐田岬は奇妙な形をしています.どうしてこのような地形ができたのでしょうね.
衛星写真には伊方原発が見えますが,ここで事故が起こり,放射能が放出されると,半島の西の方たち(5千人の人口とお聞きしました)はどう避難するのでしょうか.海路しかないのではないでしょうか.

この佐田岬は12~13万年以降,30mも隆起しています.
少し詳しくみると,伊方原発の立地する場には段丘がありませんが,約3km西の伊方町大成からさらに西,佐渡岬の先端にかけて,中位段丘と呼ばれるおよそ12~13万年の海で堆積した地層からなる段丘が、標高25m~30mの高度で分布しています.以下の図は四国電力が平成21年に,当時の安全保安院のワーキンググループに示したデータ(WG3第16-2-5号)に記述された資料です.

段丘高度

この図の縦軸は標高.横軸は距離です.図のM段丘が中位段丘.より高いところにこれも東西に描かれているのは高位段丘で,20数万年前から30万年前頃の堆積物です.
下の写真は深い霧の中でしたが,昨日,地元の方に案内していただいて見てきた,伊方町大成の段丘の遠望です.
DSC_0158.jpg
 さほど大きな平坦面ではありませんが,明らかに段丘地形です.手前の小屋の脇の電柱の少し上の中腹に家屋が見えていますが,この家屋の建つ面が段丘面です.ここではおよそ30mの高さにあります.

 先に挙げた四国電力の報告の中にこの港の遠景写真があったのを頼りに,急遽,案内していただいたものです.

 12~13万年前,地球は今よりも暖かく,海面も今より少し高かったとされています.しかし,高いと言っても、今の海面よりは5mほどです.その海の堆積物が今,高さにして,30mの位置しているのですから,12~13万年の間にそれだけ隆起したことになります.
 その隆起運動が地震に伴う隆起であるのかどうか、その重要な手がかりの一つは,海岸の崖の下に広がる,隆起海食棚ですが,佐田岬半島では,海に面したこうした崖の下に,隆起した海食棚が見られません.しかし,隆起したことは事実です.

 原発立地地域の地形形成過程を無視する電力事業者と規制委員会

四国電力はもとより,その耐震安全性にお墨付きを与えた原子力規制委員会も,この半島が12~13万年の間に,どのようにして,隆起してきたという事実を全く説明していません.
  2006年に改訂された原子力発電所(軽水炉)の耐震設計審査指針では,立地地域の変動地形学的著巣あを含めて,周辺の地形形成過程を明らかにすることを求めています.しかし,この要求項目に関わり,原発立地地域の地形形成仮定を説明している原発はありません.
 原発が立地する地盤はその多くが標高20~30mの段丘面上,あるいはそれを削ってより低く平にならした地盤に建てています.ほぼすべての原発が,この12~13万年の間に20mから30m近く隆起してきたこと過程を明らかにしなければならないはずです.

 伊方原発の耐震安全性の確認を求めます

 伊方原発の耐震安全性を確認したというなら,この半島の隆起とそれをもたらした断層運動に関する審査結果を公開するべきです.

 
プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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