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「核のゴミ」 特性マップの非科学性

 7月28日、経済産業省資源エネルギー庁が、「国が前面に出て選定する」としてきた「核のゴミ」の最終処分場を選定する一歩として、今後、この地域を対象に、詳細な調査を行うとする場を示す『科学的特性マップ』なるものを公表しました。しかし、このマップは『科学』の名を冠するに値しません。
 「大阪から公害をなくす会」からの求めに応じて、下記のような原稿を作成しました。若干の図を補足しつつ、ここに掲載します。なお、赤字は今回、補足した部分です。

特性マップ  
 まず、経済産業省資源エネルギー庁のHPに公表された「科学的特性マップ」(http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/index.html)を示しておきます。

 日本の原子力発電は、196310月の原研の動力試験炉の運転開始に始まり、爾来40数年、処理のあてのないまま、膨大な核のゴミを生み出してきました。7月末現在、約18000トンの使用済み燃料が各原発や青森県六ヶ所村再処理工場で保管されています。すでに再処理された分もあわせると、ガラス固化体にして25000個分の高レベル廃棄物となります。「国が前面に立ってこの核のゴミの最終処分場を策定する」ための一歩として、728日、経済産業省は「科学的特性マップ」を公表しました。このマップは、地盤の長期安定性や人間の生産活動の観点から、現時点で処分場としてふさわしくない場を示すとともに、今後の調査で処分場として好ましい特性が見込める地域を表しています。


 マップ要件/基準 表1 マップに示す、最終処分場として「好ましくない」及び「好ましい」要件/基準


 「マップ」では最終処分場として「好ましくない」要件・基準として、火山や活断層の近傍、隆起・侵食が大きい地域などの「地下深部の長期安定性」に問題がある地域とともに、将来経済活動が行われうる石油・天然ガスや石炭など「鉱物資源が賦存する地域」も好ましくない地域としています(表1)。他方、「好ましい」地域としては、海岸からの陸上輸送が容易な場として、海岸から20kmの範囲を示すとともに、これらの要件・基準に該当せず、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域が示された。この「好ましい」地域と「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域は合わせると国土の23に達し、将来的に処分地選定調査の対象になる可能性があるとされました。

しかし、この特性マップは、科学的に真摯に検討したものとはとても言えません。処分場としてふさわしくない場として現在の科学的到達点をも無視しており、処分場選定に向けた国民的議論の土台となる代物ではありません。ここでは、活断層と火山の問題点を見てみます。

 好ましくない要件の一つとされている活断層は、震源断層となりうるすべての断層が把握されているとは言えない現状をおいておいても、このマップでは活断層の地表のトレースとその長さの100分の1の幅だけが適さない地域と表示されているにすぎません(図1)

断層基準 図1 処分場として好ましくない要件しての活断層の基準

 断層の傾きを無視しているのです。M7.5を引き起こしうる長さ40kmの断層でも、幅は400mだけが不適と表現されています。内陸活断層を震源とする場合、数kmから20kmほどの深さで地震が起こります。この地震を引き起こす断層が傾いていれば、地表や海底に現れた断層の軌跡から少なくとも幅数kmは震源断層の直上となります。2007年の中越沖地震では、柏﨑市の沖合10km、深さ17kmで発生したM6.8の地震で、原発の直下、およそ300mの解放基盤で1600ガルを越える地震加速度が観測されています(図2)300mというのは、地層処分場を建造するとする深さです。

 中越沖地震震源断層F-B断面図2 中越沖地震の震源断層のモデルとその断面(地震長推進本部による中越沖地震の評価から)、 右の断面図のもっとも右端に、柏崎刈羽原発が立地します。


地震調査研究推進本部による地震動予測地図(JーSHISマップ)では、そうした断層の傾斜を考慮した震源断層のモデル図が公表されています(1例、近畿地方:図3、 特性マップでは地方毎の図も示されています:図4; 比べると特性マップの杜撰さが見えます)。

近畿断層モデル 図3 近畿地方の震源断層モデル(J-SHISマップから)

科学的特性マップ近畿   図4 資源エネルギー庁による「科学的特性マップ(近畿地方)」


 さらに、フィリピン海プレートが西日本の下に沈みこんでおり、日本防災会議は、浜岡原発を含め、西南日本の太平洋沿岸が広く東・南海地震の震源の真上にあることを明らかにしています(図5)

南海地震震源域 図5: 中央防災会議による東海・南海地震(及び津波地震)の震源予測


資源エネルギー庁の科学的特性マップはこうした成果をも全く無視しているのです。

 

 火山についても大きな問題があります。「マップ」では火山の中心から15㌔の範囲を好ましくない基準としています。日本では、列島を縦断する火山前線から日本海側へ数10㌔の幅で火山が分布しています。これらの火山は、数10万年という歴史で見れば、この前線から背弧側の領域でその場を変えながら活動してきました(図6)。地下深部の数10万年という長期安全性を言うならば、現在の火山の周囲だけでなく、火山前線から日本海の間の数10㌔の範囲が好ましくないことは明らかです。

火山要件 図6 資源エネルギー庁科学的特性マップにみる火山の要件/基準


核廃棄物の処分問題については、国民的合意を求めて、真剣な議論を始めるべきです。しかし、この「科学的特性マップ」は「核のゴミ」処分の国民的合意を形成する議論の素材としてあまりに不十分です。撤回・再検討を求めます。


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以上、字数制限もあり、要を得ない点もあります。

また、私の知識不足も否めません。多くの方のご意見をお願いします。 

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プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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