大飯原発敷地前面台場浜の断層調査結果

地質学を専門とする研究者数人で、福井県大飯原発の敷地前面の台場浜海岸における断層を調査した結果です。この報告は、先の記事で述べた原発問題住民運動福井県連絡会が9月17日に規制庁と交渉した際、提出しています。
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大飯原発前面、台場浜海岸の断層露頭の調査結果について
                             福井嶺南原発断層調査グループ*

8月18日(日)、地質・応用地質学を専門とする6名と地元議員や住民団体5名が、大飯原発の敷地前面の台場浜海岸で、露頭の観察・調査を行った。また、露頭から試料を採取し、その年代を測定した。観察・調査の結果、断層とその活動性に関する関西電力や規制委専門家による評価がきわめて不十分であることが明らかになった。
台場浜の海岸の露頭は、当初、関西電力が、設置(設置変更)許可申請にあたって、原発の冷却にとって重要な設備である原子炉補機冷却海水設備を横断するF-6断層が連続している露頭と記述した場所である。なお、図はいずれも関西電力の大飯発電所敷地内F-6破砕帯の追加調査現地調査資料や専門家会合の資料からのものである。なお、関西電力は2013年8月の最終報告ではF-6断層はこの海岸までは達していないとしている。
 台場浜 1

  この露頭において、2箇所の観察結果を報告する。

1. 頁岩と超苦鉄質岩の境界における断層

 まず、図1の写真②及び図32の露頭①で示される頁岩と超苦鉄質岩の境界である。
 台場浜 2
  図1  台場浜海岸の遠景と露頭写真

 台場浜3

敷地周辺の基盤は古生代二畳紀の舞鶴層群頁岩層とそれを貫く夜久野岩類(種々の火成・深成岩類からなる)。この図の①では、頁岩と夜久野岩類中の超塩基性岩が断層を介して接している。

  台場浜 4
 図2 台場浜海岸における頁岩と超苦鉄質岩類の境界。
  赤枠は筆者らの写真(図3)の範囲 (規制委評価会合での岡田篤正氏の資料に加筆)

 現地調査を行った規制委の報告では、この境界についての詳細な記述はなく、図32に示す様に破砕帯の幅4~20cm、固結した角礫状破砕帯とされているのみである。しかし、よく観察すると、境界部には数条の亀裂が認められ、明らかに軟質の灰色粘土も、挟まれている。この軟質粘土層から年代測定用試料を採取した。
最も重要な点は、これらの亀裂の内、基盤最上部の風化帯から更にその上の角礫層にまで達しているものが存在することである(図3)。この亀裂の延長上には礫が立って並んでいる。角礫層中に伸びる亀裂は不整合面の

 断層露頭解釈
 図3 台場浜海岸頁岩と超苦鉄質岩の境界部の断層の上方延長  
                 
ずれや礫の配列から角礫層が堆積した後に活動した断層であり、比較的新しい時期に活動した活断層である可能性が高い。また、基盤を不整合で覆う地層は、更に細分が可能だと思われる。断層の活動年代を推定する上で、この地層の区分と年代推定は重要な課題である。規制委の調査において、なぜ、こうした破砕帯の詳細な観察、特に断層の活動時期を検証する上で欠かせない上位層との関係が見過ごされたのか、観察・調査がおざなりだと言わねばならない。
 なお、試料採取した粘土からは添付資料に示す様に、角礫層直下の風化帯の年代は50AD、角礫層まで伸びる基盤の亀裂中の粘土から540ADの年代値が得られている。

2.地すべりと断定するにはデータ不足の「表層地すべりブロック」

海岸の西部に認められる、図34の表層地すべりブロックとされる露頭についての観察結果を報告する。

台場浜34

図37にはそのブロックの拡大写真が示されている。

台場浜37

 関西電力の資料によれば、この岩塊を「岩盤表層地すべりブロック」とする具体的根拠は、すべり面が末端で湾曲している、という点と、固結した岩盤の破砕帯(図34の⑧)がすべり面(図34の⑫)で切断されている、という点である。しかし、これらの断層面やすべり面に見られる条線のデータが示されていない。⑨から⑫のすべり面が地すべりによるものであり、断層⑧を切っているとする根拠が脆弱である。固結した断層と地すべり面の条線のデータを比較検討するべきである。⑫の断層の削痕は、地すべり面であればすべり方向を示すものであるが、N80°Eの方向を示しており(図4)、関西電力が地すべりとする断層の組み合わせで示される最大傾斜角(=地すべりの運動方向)とは斜交する。 
 削痕
   図4  断層⑫に認められる削痕 赤矢印はその方向を示す
  
すべり面とされる⑫は固結しているので、⑨などとは活動時期が違うと考えているのかもしれないが、図37のスケッチのように湾曲しているのではなく、西端にある⑮、⑯と同様のやや低角の断層として、左上から右下に連続
する可能性がある(図5)。この図の固結したすべり面とされる⑫は、⑧から上方に伸び亀裂によってずれているようにも観察される。
  地すべりブロック
  図5 関西電力による”地すべりブロック”の東の境界部

さらに、すべり面⑨は明らかに段丘を構成する礫層を切断しているのであり、活動時期はこの礫層形成後となるが、図34のすべり面⑨の上位の段丘礫層(te)は地すべり体なのか、それとも断層に伴って変位を被ったものかの検討も行われていない。何よりも図34に示されるデータだけからではその地すべり体の3次元的復元ができない。
なお、本露頭のやや南に位置する段丘堆積物に挟まれる黒色腐食土層からの試料の年代値は年代2896BCをえた。従って、この崖の露頭に分布する段丘堆積物(礫層)は縄文最盛期の海進に伴う堆積物を推定される。

3. まとめ

 我々のグループの調査も時間的制約もあり、不十分であることは十分承知している。しかし、関西電力並びに規制委による台場浜海岸の調査結果は、活断層無しとするにはあまりにも杜撰だとしか言えない。以上のような視点で規制委評価会合の資料、例えば、岡田篤正委員が引用した関西電力の写真(図2)をみると、写真に立った礫が写っているにも関わらず、また、活動性を検討する基本となる基盤中の断層の上位層への延長についての言及がない。露頭①の頁岩と超塩基性岩の境界について、規制委員会では断層説と地すべり面説とがあるが,我々の観察では,破砕帯を伴う断層であり,地すべり面ではない.しかも上位の崖錐を切っている活断層である可能性が高い.また、規制委専門家会合ではF-6断層が尾根で終わるとする関西電力の報告を十分な検討もなく受け入れ、この台場浜の断層説,地すべり説,およびF-6延長問題を議論せずに,敷地内には活断層がないという結論を出しているが,この結論はあまりにも早計と言わざるを得ない。規制委専門家会合の科学的調査は再考するべきである。

2013年9月17日
                     福井嶺南原発断層調査グループ
                          立石雅昭 新潟大学名誉教授*
                          志紀常正 元京都大学
                          鈴木博之 元同志社大学
                          川辺孝幸 山形大学教授
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 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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