横浜環状南線の耐震安全性

 横浜南環状線の耐震安全性について
  この1月30/31日の両日、横浜市戸塚公会堂で、「一般国道468号線新設工事(高速道横浜環状南線・横浜市金沢区釜利谷JCTから戸塚区汲沢町)などの工事に関わる公聴会」が開かれる。
 筆者はこの工事に反対する地元住民団体の依頼もあり、その耐震安全性に関して公述人申請を行って、このほど、申請を認める連絡が国土交通省から来た。
 この問題は一度このブログでも取り上げた(2014年12月8日付)。
 ここでは、改めて、その耐震安全性に関わって、口述しようとする内容概要をメモっておきたい。

兵庫県南部地震での高速道被害
 あれから20年もたった。遅ればせながら震災一月後に現地に入ってその惨状に息をのんだことを思い出す。
a038.jpg
 高速道の被害についても,様々な映像が公表されてきたが、これは神戸市がこのほど公開した1000枚に上る阪神・淡路大震災「1.17の記録」 http://kobe117shinsai.jp/ (無料ダウンロード可能)の中の一葉。
 1989年 アメリカ西海岸で、サンアンドレアス断層の活動と考えられるロマ・プリータ地震(M6.9)が発生、高速道も含めて大きな被害が発生した。その時、日本の建築業界の一部では、「日本では高速道が倒壊するなんてことはありえない」との見解が出された。それから6年後の阪神高速道の被災。
 これは日本の習い性なのかな、他国での事故や災害に学ぼうとしない、自国の技術は世界一、っていう盲信。原発も同じだね。スリーマイル事故の後、IAEAのだした5層の深層防護の基準を日本の規制機関と電力事業者はかってにねじ曲げ、3層までで良いとしたあげくの福島原発の事故。

 進展する地震・津波に関する新たな予測と対策提案
 さて横環南線、横浜市の南部、鎌倉市との境に位置する栄区周辺の、今後30年間で震度6強以上の地震に見舞われる確率分布。昨年暮れ、地震調査研究推進本部は全国的な地震動の確率分布を更新し,2014年版を出した。横浜を含む首都圏は、相模湾で沈み込むフィリピン海プレートの上面が従来よりも浅いとする調査結果を踏まえて、M7クラスの地震の発生頻度や各地の震度などが見直されている。各地の確率分布図はJ-SHIS Map(防災科学研究所)で見ることができる。そうした最新の情報を踏まえながら、神奈川県や横浜市でも近年、防災、特に震災対策に力を入れている。
震度6強以上確率分布
 この図は震度6強以上の揺れに見舞われる確率を示している。図は見にくいが、下左に鎌倉市、左に戸塚、中央下に栄区の文字が見える。横環南線の「横」の文字のあたりがJR根岸線の本郷台駅。震度6弱以上にすると、ほとんどの地点が確率の最も高い赤紫(26%以上)に塗りつぶされるので、ここではあえて、震度6強以上の確率を示しました。オレンジ色は6~26%、黄土色は3-6%。

 この地域は震度6弱あるいは強の地震動がこの30年に見舞われる確率が高いと言えるでしょうね。
 
震度6地域の地震動加速度と道路被害について

 問題は、南線の工事計画に当たって、そうした地震動に襲われたときに備えた耐震設計が十分なされているかどうか、でしょう。
 下の図は気象庁のHPにある、震度と加速度の相関です。周期によってかなり異なることが分かりますが、周期0.1から0.2秒のところで、震度6強ともなれば、1000ガル以上の揺れとなることになりますね。
震度と加速度

実際に発生したいくつかの地震で震度6弱あるいは6強とされる地震での最大加速度を見てみます。
震度
  これは、前田宜浩・笹谷努、ほか(2005)による「2004年12月14日留萌支庁南部の地震(M6.1) 」という研究報告です。, Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers (http://hdl.handle.net/2115/14374)で詳しく見ることができます。

 さらに、兵庫県南部地震の際の最大加速度と被災度の関係を示した研究報告(大西・山崎・田山・福田(1997)「高速道路における地震被害と地震動強さの関係」、 第24回地震工学研究発表会講演論文集)です。
  被災度というのは次の指標です。道路震災対策便覧 (震災復旧編)橋梁・高架の耐荷力に関する被災度: As: 落橋、 A: 大被害、 B:  中被害、 C: 小被害。

加速度と地震被害神戸

  高速道路建設において、こうした近年の調査/研究成果を反映し、その教訓を生かした耐震設計が生かされているかどうかが問われます。
  国土交通省における事業評価監視委員会での審議を見る限り、こうした最近の調査研究成果を加味して、十分な審議が行われているかどうかはなはだ疑問に思うのです。
 勿論、国土交通省は,日本の省庁の中でも、最も多くの技術系職員を抱えるところです。プロとしての技術者倫理に沿って,その安全性確保のために業務を進めている方も多いとは思いますが、果たしてどこまで、真剣に対応しているか、見えないのが現実です。

  最後に、米サンフランシスコでは八九年のロマプリータ地震後、高架道路は再建されず、街は海を背にした景観を取り戻しました。市民が再建案を「不要」としたからだそうです。新しく開発され、その環境の良さに惹かれて安住の地として選ばれた栄区の方々が、引き続き、安心して暮らせる環境を守るために,私は、こうした高速道路網建設は再検討する時期に来ていると思います。公共の名の下に、計り知れない犠牲を住民に押しつけることは許されないでしょう。
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立石雅昭

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 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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