原発の耐震安全性-中越沖地震の教訓は生かされているか(1)

原発の耐震安全性-中越沖地震の教訓は生かされているか(1)

  原子力規制委員会は鹿児島県の九州電力川内原発に続いて、福井県の関西電力高浜原発が、1昨年7月に施行した「規制基準」に適合しているとの判断を示した。国民過半数の願いに反して、政府/電力事業者が原発再稼働の動きを加速している中、2007年の中越沖地震で新潟県の東京電力柏崎刈羽原発が被災した教訓を改めて共有しなければならない。先般、昨年の福井地裁による大飯原発運転差し止め判決に対する控訴審での関西電力の地裁判決への反論を読ませていただいたが、その内容は1995年の兵庫県南部地震以降地震学が長足の進歩を遂げ、地震の発震機構や、地下地質構造に関わる地震波の伝搬・増幅機構が良く理解できるようになったことから、それらの成果を取り入れた原発は、耐震安全性が十分確保されている、というものであった。まさに安全神話そのものである。原発を扱う事業者や規制機関がこのような立場にあるとすると、再び福島が再来することは目に見えている。

 特に、その関西電力の反論は中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災の教訓を無視していることから、ここでは2回に分けて、原発の耐震安全性を脅かす地震動に関わって未解明の問題を明らかにしておきたい。
  
  柏崎刈羽原発を襲った上下動

 下の図表は、中越沖地震後に東京電力が公表した1~7号機の各原子炉建屋基礎版での地震計記録である。
  基礎版での地震動の大きさ
  この記録をもとに、東京電力や原子力安全基盤機構は、その東西方向の水平動に注目して、1~4号機側は、5~7号機側に比して、有為に大きいとし、その要因解析を進めた。その解析結果の問題は次回に取り上げる。
 今回は、その上下動の問題を検討する。
 なお、この問題について、私は、新潟県の「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」のもとに設置された「地震,地質・地盤に関する小委員会」の第20回会合(平成21年7月24日)で、資料(http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/tateishi.pdf)を提出し、問題提起をしたが、議事録を見れば分かるように、満足のいく回答はなされていない。この問題は、以前から電力事業者の耐震安全設計に関わって分析を進め、問題を提起されてこられた東井怜さんの分析結果に基づいている。

 従来の耐震設計では、上下動地震動は十分に考慮されず、基準地震動を策定する際には、水平方向の1/2といった漠としたものであった。しかし、中越沖地震による地震動はこうした設定が誤りであることを明確に示している。
 さらに、水平動では1.5倍近い揺れを示した(とされる)1~4号機側が、上下動では逆に5~7号機側より揺れが小さかった。なぜ、こうしたことが起こるのか、解明されたとは言えない。

 ところが、東電によると、この原子炉建屋基礎版での観測値をもとに推定された、深さ約150~300 mの解放基盤面での揺れ(これをはぎ取り波と呼んでいる:次の表や図では推定波とされている)をみると、地震動の大きさが逆転する。解放基盤での推定値は、ほかの号機では基礎版観測値より大きくなるにもかかわらず、基礎版で最大の上下動を示した6号機だけは小さくなり、全体として、5~7号機側が1~4号機側より小さくなるのである。
 1~4号機側と5~7号機側では、その解放基盤の深さが違う。1~4号機側は総じて深く,およそ290m、一方、5~7号機側は浅いが、6号/7号は同じ167m。やや時代の古い硬い地層が浅いところにあると言うことになる。しかし、6/7号機は同じ傾向になるはず。

 次の表とそれをグラフ化した図は、新しい基準地震動Ssを算定した際の上下動の値である。修正前とあるのは、基準地震動Ssを算定するに当たって、当敷地に最も大きな影響を及ぼすと考えられた海底下のF-B断層の長さを修正する前の上下動推定値、修正後というのは、その断層の長さを,安全保安院の合同ワーキングなどでの指摘を受け、長くした場合の値である。表で分かるように、この修正後の、1~5号機の値は東電の報告書では示されていない。
 
上下動比較表

上下動比較

  これらの数値をつぶさに眺めると、操作が行われていることは明らかである。

  要するに、地震の上下動と地下地質との関係はほとんど解明されてないままであるし、また、原発への影響も明らかにされているとは言えない。
  なお、ここで、建屋基礎版で最大の上下動を記録した6号機が、7号機とともに、再稼働申請されていることを付言しておく。
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立石雅昭

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 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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