伊方原発,断層長480kmでも基準地震動650ガル!?

 四国電力の伊方原発,原子力規制委員会による審査書案がパブリックコメントにかけられています.今日,6月19日が締め切りです.この審査書案には伊方原発の耐震安全性にかかわって大きな問題があります.何より,耐震設計の基礎になる,基準地震動の策定にかかわる問題です.審査の結果,規制基準に適合していることを確認したとされますが,その根拠が書き込まれていません.
 先のブログでは,伊方原発が位置する佐田岬半島はこの12~13万年の間に,30m近く隆起してきたことを現地での観察を踏まえて述べましたが,四国電力も,規制委員会も,佐田岬が隆起してきた過程について,解析を行っていません.
 さらにここでは,四国電力が行った新しい基準地震動について,簡単に見てみます.

 特定震源
  上図は昨年暮れに,四国電力が基準地震動を見直した際の活断層中央構造線の長さに関する資料です.中央構造線に関して3つのケースを検討しています.最も長い,東は近畿地方金剛山地から,西は大分県大分平野に延びる,全長480kmの中央構造線を見積もっています.

  伊方原発の沖合海底に見いだされた伊予灘断層の分布を,衛星写真の上に重ねたのが次の図です.
中央構造線伊予灘断層

 原発に近接して,中央構造線の一部をなす伊予灘断層西部が半島に近接して走ることが見て取れます.この断層は伊方原発の建設時にはその活動性が否定されていました.高知大学岡村 眞教授らの調査で,この図のやや東,上灘沖でその活動性が指摘されて初めて,四国電力もその活動性を認めました.そして,東北地方太平洋沖地震を踏まえて,断層の連動の可能性を考慮することとなり,最大480kmの連動で,巨大な地震が起こる可能性が考慮することとされたのです.

 断層長480kmで,基準地震動650ガルは低すぎます.
 
 ところが,この長大な断層による基準地震動の値は,650ガル.この値は,2007年,新潟県の東京電力柏崎刈羽原発を襲った中越沖地震の教訓を踏まえ,原子炉関連構造物や機器・配管に大きな影響を与える短周期の地震動について,1.5倍に引き上げて策定したものです.
 それまで,その1/3の長さの130km,あるいは伊予灘断層などが単独で動くとして求められていた値,570ガルに比して,480kmと伸ばしても,その上積み分はわずか,80ガルです.この値について,東大地震研纐纈一起教授は,これだけしか変わらない,という結果に対して,「違和感」を感じるとし,「もう少し大きくなってもいい気はする」と述べています(愛媛新聞3月21日付).
  地震を引き起こす断層を特定した上で,その断層から発せられる地震動を推定する手法は種々改良が加えられてきましたが,その計算の過程では,地震の発生する深さの幅(中央構造線ではどのケースでも12kmと見積もられています),断層の傾き,応力降下量(アスペリティーと呼ばれる岩盤が固く癒着した部分で,壊れると大きな地震動を発生する部分で,推定される破壊の前後の力の低下量,大きければ,それだけ放出されるエネルギーが大きくなる),など,さまざまなパラメーターが必要ですが,これらのパラメーターを操作して,発生する地震の規模を過小に押さえ込むことが可能となります.地震動を低く見積もる手法の問題点は,大阪府立大学名誉教授の長沢啓行氏が,伊方原発訴訟における意見書(http://www.ikata-tomeru.jp/wp-content/uploads/2012/01/nagasaw107goushou.pdf)で,指摘されています.
 長沢氏は,伊方だけではなく,川内,大飯・高浜,そして,この伊方,と各地の原発における地震動評価の問題を科学的・系統的に解析されています.それに対する電力事業者や規制委員会からの科学的反論は見たことがありません.

  原子力規制委員会は,伊方原発の規制基準適合判断を撤回し,耐震安全性に関する厳密な科学的審査を改めて行うよう求めます.

 
 

  

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立石雅昭

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 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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