震源断層と活断層

震源断層と活断層
 -伊方原発の耐震安全性に関わってー


 原子力規制委員会はこの7月,伊方原発が新規制基準に適合しているとの判断を示し,地元伊方町と愛媛県は10月下旬,再稼働に合意しました. 
 ここでは,伊方原発の耐震安全性に関わる四国電力の報告やそれを了とした規制委員会の審査の問題点の一つを考えます.
 この問題は,他の原発の安全性にも関わる重大な問題です.

  
  中央構造線の浅層での形状

図1には四国電力の基準地震動を算定するために取り上げた検討用地震を示します.敷地に最も大きな揺れを与える地震として,総延長460kmに達する中央構造線が取り上げられました.東は近畿地方の金剛山地東,西は大分県に至る長大な断層です.
検討用地震 図1 伊方原発の基準地震動算定のための検討用地震

 四国電力は震源を特定して求める基準地震動として,規制委員会の指摘を受けて,中央構造線全長が動きうるものとして,650ガルを算定しています.

 中央構造線は伊方原発敷地前面の海底をほぼ東西に走る長大な活断層であり,その構造は多くの研究機関によって音波探査による調査が行われ,図2・3に示すような形態が知られています.四国電力も独自に調査を行って,ほぼ同じ構造を得ていることから,中央構造線をほぼ鉛直,一部急傾斜した断層としています.
推本調査図2 地震調査研究推進本部による上灘沖の中央構造線評価
堤グラーベン図3 堤他による伊予灘沖の中央構造線.

  図2のK-Ahとある線は,鹿児島の南西洋上の薩摩硫黄島(鬼界ケ島)の7300年前の巨大噴火で降り積もった火山灰で、鬼界アカホヤ火山灰と呼ばれるものです.これが,上灘北沖断層でおよそ10mずれています.一方,図3では,南北二つの断層で間が溝状に落ち込んでいます.こういう形態をグラーベンと呼んでいます.この図でもアカホヤ(この報告の出された1990年当時,この火山灰は鬼界カルデラからのものとは見られていませんでした)が顕著な反射面として認められ,断層で大きくずれていることが分かります.

  浅い海域あるいは陸域での中央構造線の形態はほぼ同様の構造を呈した,正断層もしくは横ずれの断層です.

   中央構造線は基盤の構造を分断する低角の大断層


   近年,深部の地下構造を把握するために各地で、大深度の地下構造探査が行われてきました.その結果,この中央構造線は北に低角で傾き,基盤の岩石を分ける断層であることが知られるようになりました.
  図4に,2002年に行われた四国室戸半島から香川県東方,さらに北の瀬戸内海に至る四国東部,瀬戸内横断の反射法地震探査の結果(佐藤ほか,2005)を示します.
中央構造線佐藤 図4 四国東部から瀬戸内横断,反射法地震探査断面の解釈(佐藤ほか,2005)

  この図のMTLが中央構造線で,BTLは仏像構造線と呼ばれ,これも東西に連続する大断層です.
  中央構造線は,西南日本を南北に分ける大きな断層ですが,北に位置する和泉層群の年代などから,およそ1億年ほど前の白亜紀後期から活動をはじめたとされています.同じように,日本列島を東北日本と西南日本に分断する大断層として知られ,今も活動する糸魚川-静岡構造線は,もっと新しく,2~3千万年前頃から活動しはじめたものと考えられます.

  地震を引き起こす断層は地質境界としての構造線,あるいは,表層の活断層?
  

     
   現在の規制委審査は,この問いへの明快な解がないまま,表層における活断層の性状を中心に震源断層を推定しているにすぎないのです.次に、四国電力の中央構造線の傾斜角に関するまとめを見てみましょう.規制委はこれも了としました.

四電解釈三崎沖エアガン

 図5 佐田岬先端に近い三崎沖のエアガン探査断面と解釈.

 この解析に基づいて,四国電力は断層の傾斜角について次のようにまとめました.
四電まとめ1

  どちらとも結論が出ていない状況で、なぜ,この自説に都合の良い(すなわち,高角だと断層面積が小さくなり,発生する地震も小さくなる)解釈に行き着くのか,はなはだ恣意的と言えます.

  しかし,問題はそのことにとどまりません.

  図5の右側の図の縦軸は、音波が反射して,帰ってくる時間,左の図はそれを深さの距離で表してあります.およそ,2秒が2km弱の深さとなります.

  実際に内陸地殻内の地震が発生する深さ(これを地震発生層と言います)は,4~5kmから10数km.実際にその深さの構造は四国電力のデータでは全く欠如しているのです.高角かどうか,浅いところの構造がそのまま深いところまで続くとかってに解釈しているだけなのです.

  ちなみに,瀬戸内西部ではしばしば地震が発生します(図6).
瀬戸内地震分布瀬戸内西部震源

  しかし,その震源の深さと,図4の断面を見比べれば分かるように,この海域での地震は,すべて,下部地殻、もしくは沈み込むフィリピン海プレートのスラブ内断層だとわかります.中央構造線の活動による地震はそれほど頻繁には起こっていないようです.

  浅層の構造と深部での構造の関わりが不明確だということは,表層部分で活断層の離隔距離5kmまでは連動を考慮し,それより離れていれば,連動を考慮しなくても良いとする2011年までの考えの甘さが分かります.地震発生層でこそ,どのようになっているのかが問題で,そのことが明らかでない以上,同じような線上に並ぶ活断層は全て連動する可能性があるものとして扱うべきなのです.

  要するに,今の地質科学や地震学のレベルでは,まだ,地震を発生させる地下の構造を解析できていない、と言うことです.
 
  この問題は全ての原発に当てはまります.
 
  浅層(陸域でも海域でも)で見られる断層の構造が地震発生層ではどういう形状をしているのかというデータ無しで議論しているのです.地震発生層は微小地震や余震による岩石の破壊域,他方で活断層は地質構造上のずれという、手法の異なるものが合体して、浅層での活断層がそのまま地震発生層まで延び,そこで地震を発生させると仮定しているにすぎません.
 
  原発というきわめて危険なものを扱っているという認識が足りず,耐震安全性を検討する上で,最も基本になる震源断層と活断層の関係を明確にしなければなりません.




  
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立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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