志賀原発断層調査報告(福浦灯台下)

志賀原発北方2kmの福浦灯台下海岸での断層調査の中間報告
            2013年10月
             日本科学者会議石川支部
             原発問題住民運動石川県連絡センター
             原発問題住民運動能登地域連絡センター
             原発を考える石川女性の会

 4団体は2013年10月22~24日の3日間、立石雅昭・新潟大学名誉教授の指導のもと、のべ32人(実人数18人)の皆さんが参加して志賀原発の北2kmにある福浦灯台下の海岸(図1)で断層調査を行いました。
  
 福浦灯台下の海岸の地図
   図1ー福浦灯台下の海岸の位置

 福浦灯台下の岩礁海岸には、広い波食棚(台)※1とその陸側に海食崖※2が見られ、波食棚(台)にはたくさんの断層が走っています。これらの断層群の測量と観察により、①福浦灯台下の海岸は、志賀原発敷地西方の海岸部(2013年7~8月に調査)に比べて、断層の密度が高く破砕が進んでいること、②断層の延びの方向の違いなどから、志賀原発敷地およびその西方海岸周辺のブロックと、福浦灯台周辺のブロックの間に小規模な断層が存在し、それぞれのブロックが異なった破砕を被った可能性があること―などが明らかになりました。
 ※1波食棚(台):主に潮間帯(満潮線と干潮線の間の地帯で、1日のうちに陸上になったり海中になったりする部分)にある平坦な台地で、崖の基部である高潮面から低潮面以下にわずかに傾斜しながら広がっています。

※2海食崖:海に面した山地や大地で、おもに波による侵食を受けてできた崖をいいます。山地が沈降(あるいは海面が上昇)して急斜面が沈水すると、その斜面は波による侵食を受けるために、崖の下部に海食ノッチ※3ができます。下部がくぼむとやがて上部は崩れ落ち、これが繰り返されることで崖は後退していきます。

※3海食ノッチ:海食窪ともいい、波食作用や海水の溶解作用によって海食崖の下部にできる微地形で、奥行きより幅が大きいくぼみのことをいいます。なお、幅より奥行きが大きいくぼみは、海食洞といいます。
福浦灯台下海岸の断層群
図2、3は、福浦灯台下海岸の遠景です。図2は北から南に向けて、図3は海側(西)から山側(東)に向かって撮影しています。図4~8に、福浦灯台下海岸のいくつかの断層を示します。
福浦灯台下の海岸1
  図2―福浦灯台下の海岸

福浦灯台下の海岸2
  図3―福浦灯台下の海岸

Fk-1断層(右)とFk-2断層(右)
  図4―Fk-2断層(左)とFk-1断層(右)

Fk-3断層
  図5―Fk-3断層

福浦灯台下 6
  図6―Fk-6断層

福浦灯台下 7
  図7―Fk-8断層

福浦灯台下8
  図8―Fk-12断層

志賀原発の北2kmにある福浦灯台下の海岸は原発敷地西方の海岸に比べて、より強く破砕されており、ここに走る多くの断層群は何回かの活動をしていると考えられます。 (図2、3)。
図9、11は、福浦灯台下海岸の断層群の分布図です。

福浦灯台下9
  図9―福浦灯台下海岸の断層群

西方海岸
  図10―志賀原発敷地西方海岸の断層と原発敷地内の活断層

主要な断層の方向は、Fk-1、Fk-2、Fk-3、Fk-11の各断層に代表される北北東-南南西に延びる断層群で、志賀原発敷地西方の海岸のK-1、K-2、K-3の各断層、原発敷地内のS-2、S-6の両断層と同じ方向に延びています。一方、主要な断層に大きな角度をもって斜交し、西北西-東南東に走る断層群は、原発敷地西方海岸(K-4、K-5)や原発敷地内(S-1、S-7)では明らかですが、福浦灯台下海岸ではFk-8断層以外はさほど目立ちません(図10、12)。また、福浦灯台下の波食棚ではFk-9、Fk-12、Fk-13などの南北~北北西-南南東の断層が、主要断層群から枝分かれしているのが目立っています。

福浦灯台下11
  図11―福浦灯台下海岸の断層群の測量結果

志賀原発敷地西方海岸の断層分布
  図12―志賀原発敷地西方海岸の断層群の測量結果

 断層面に認められる条線の方向から、福浦灯台下海岸の断層群は、やや横ずれと縦ずれの両成分を持っています(図13)。
 
Fk-1断層面に見られる鏡肌と条線
  図13-Fk-1断層に見られる鏡肌と条線

 Fk-1とFk-2の断層間には、黄白色の細粒凝灰岩や火山礫凝灰岩が広く分布しています(図14)。この凝灰岩層にも、さらに小さな断層(Fk-6、Fk-7など)が発達しています。

Fk-1とFk-2断層間に発達する凝灰岩
  図14-FK-1とFk-2断層間に発達する凝灰岩

福浦灯台下海岸の断層群と志賀原発敷地西方海岸の断層群を比較すると、破壊の度合いや断層の延びの方向に違いが認められます。このことから、福浦灯台下海岸周辺のブロックと原発敷地およびその西方海岸周辺のブロックの間に小規模の断層が存在し、それぞれのブロックが異なった破砕を被った可能性があります。

  福浦灯台下海岸に見られる海食ノッチ(海食窪)

 海食崖には、海面の高さ付近で波の力によって削られた大きな窪み(海食ノッチ、または海食窪という)が、少なくとも2段認められます。低い方の海食ノッチは標高約3~4m、高い方は約6~8mです。低い方は約6000年前、高い方は12~13万年前の、それぞれ後氷期、間氷期と呼ばれる地球全体が今より暖かく、海面が高かった時代に作られたものと考えられます(図15)。
 福浦灯台下の海食崖に見られる海食ノッチ(1)
海食ノッチ(2)

  図15―福浦灯台下の海岸に見られる海食ノッチ(海食窪)(上)(下)

 福浦灯台下海岸において、2段の海食ノッチが認められることは重要な意味を持っています。低いの方の海食ノッチだけの1段しか存在していないと、約6000年前の海面がこの高さにあって、その後の隆起を考えなくてもよいと解釈することができます。しかし、高い方の海食ノッチがあれば、12~13万年以降の度重なる地震に伴う隆起を考えなければ説明できません。12~13万年前の海面は、約6000年前の海面とほぼ同じであったため、隆起がなかったら2段の海食ノッチが形成されることはないからです。
 志賀原発から福浦灯台下にかけての海岸地域に広く波食棚が認められること、12~13万年前の海の堆積物からなる海成中位段丘が15m前後(福浦灯台下)から20数m(原発敷地)の高さにあることは、この海岸地域全体が12~13万年前以降、地震の度に隆起してきたことを示します。約6000年前に形成されたと推定される低い海食ノッチも当然、隆起していることになります。
 図15(下)の2段の海食ノッチのうち、下の方の約6000年前にできたと考えられるノッチでは、幅40cm以上の断層(図16の矢印の間:図11のFk-4に相当)を境に高さが違っています。
福浦灯台下16
  図16-海食ノッチに見られる断層

 この断層が、同じ高さでできる海食ノッチに高さの違いを与えていれば、活断層ということになります。この
断層を観察した結果、古い時代に2m以上のずれをもたらしたことは確認できますが、断層面が固く癒着(固結)しており、約6000年前以降の新しい時代に動いたと考えるのはかなり無理があります。
 福浦灯台下海岸の断層群について、現時点では活断層であることを積極的に立証できるものは見いだせていません。

 福浦灯台下海岸の断層調査の到達点と今後の調査活動

 福浦灯台下海岸の断層調査の結果、この海岸が全体的に隆起していることが明らかになりました。また、志賀原発敷地西方の海岸部に比べて断層の密度が高く破砕が進んでいることも明らかになり、志賀原発敷地およびその西方海岸周辺のブロックと福浦灯台周辺のブロックの間に小規模な断層が存在し、それぞれのブロックが異なった破砕を被った可能性があることも示唆されました。
 今回の調査において2段の海食ノッチが認められたことも、重要な成果です。海岸周辺の隆起がなければ、ほぼ同じ海面高度であった約6000年前と12~13万年前に形成されたノッチが、同じ高さに並ぶと考えられます。従って、明らかに高度の異なる2段のノッチがあるということは、この海岸が(おそらく地震の度に)隆起してきたことを示します。また、各段のノッチの高さに差があるということは、その差をもたらす活断層が存在することを示唆します。一方、波の浸食作用で形成される海食ノッチの高さには幅があるため、約6000年前の海食ノッチの高さの差も、その幅の範囲内だという見解も成り立ちえます。
 福浦灯台下海岸の海食ノッチに見られる高さの差をもたらした原因を明らかにするため、引き続き活断層調査を行うことが必要であると考えます。
 また、志賀原発敷地を含む能登半島西岸の地域では、中位段丘面の標高が北に行くほど高くなり、富来川南岸断層をはさんで急に低くなっています。このことからすれば、2段ある海食ノッチも、同じように北に向かって高くなっていくはずです。このことから、福浦灯台のさらに北にある巌門、牛下、生神、七海などの海食崖の観察も行いたいと考えています。
 これらの海岸地域の全般的な隆起をもたらした活断層が、敷地の東にあって、南北に延びる福浦断層なのか、渡辺・鈴木(2012)※4が海岸の沖合に南北に延びると想定した富来川南岸断層の海域への延長によるものかは、現時点では不明です。断層モデルを作成し、海岸部がどのように隆起するのかのシミュレーションが行われることも期待されます。
※4渡辺・鈴木(2012):渡辺満久、鈴木康弘「能登半島西岸の地震性隆起海岸と活断層」日本地球惑星科学連合2012年大会 予稿
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

立石雅昭

Author:立石雅昭
立石雅昭のブログへようこそ!
 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR