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原発の耐震安全性-中越沖地震の教訓は生かされているか(1)

原発の耐震安全性-中越沖地震の教訓は生かされているか(1)

  原子力規制委員会は鹿児島県の九州電力川内原発に続いて、福井県の関西電力高浜原発が、1昨年7月に施行した「規制基準」に適合しているとの判断を示した。国民過半数の願いに反して、政府/電力事業者が原発再稼働の動きを加速している中、2007年の中越沖地震で新潟県の東京電力柏崎刈羽原発が被災した教訓を改めて共有しなければならない。先般、昨年の福井地裁による大飯原発運転差し止め判決に対する控訴審での関西電力の地裁判決への反論を読ませていただいたが、その内容は1995年の兵庫県南部地震以降地震学が長足の進歩を遂げ、地震の発震機構や、地下地質構造に関わる地震波の伝搬・増幅機構が良く理解できるようになったことから、それらの成果を取り入れた原発は、耐震安全性が十分確保されている、というものであった。まさに安全神話そのものである。原発を扱う事業者や規制機関がこのような立場にあるとすると、再び福島が再来することは目に見えている。

 特に、その関西電力の反論は中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災の教訓を無視していることから、ここでは2回に分けて、原発の耐震安全性を脅かす地震動に関わって未解明の問題を明らかにしておきたい。
  
  柏崎刈羽原発を襲った上下動

 下の図表は、中越沖地震後に東京電力が公表した1~7号機の各原子炉建屋基礎版での地震計記録である。
  基礎版での地震動の大きさ
  この記録をもとに、東京電力や原子力安全基盤機構は、その東西方向の水平動に注目して、1~4号機側は、5~7号機側に比して、有為に大きいとし、その要因解析を進めた。その解析結果の問題は次回に取り上げる。
 今回は、その上下動の問題を検討する。
 なお、この問題について、私は、新潟県の「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」のもとに設置された「地震,地質・地盤に関する小委員会」の第20回会合(平成21年7月24日)で、資料(http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/tateishi.pdf)を提出し、問題提起をしたが、議事録を見れば分かるように、満足のいく回答はなされていない。この問題は、以前から電力事業者の耐震安全設計に関わって分析を進め、問題を提起されてこられた東井怜さんの分析結果に基づいている。

 従来の耐震設計では、上下動地震動は十分に考慮されず、基準地震動を策定する際には、水平方向の1/2といった漠としたものであった。しかし、中越沖地震による地震動はこうした設定が誤りであることを明確に示している。
 さらに、水平動では1.5倍近い揺れを示した(とされる)1~4号機側が、上下動では逆に5~7号機側より揺れが小さかった。なぜ、こうしたことが起こるのか、解明されたとは言えない。

 ところが、東電によると、この原子炉建屋基礎版での観測値をもとに推定された、深さ約150~300 mの解放基盤面での揺れ(これをはぎ取り波と呼んでいる:次の表や図では推定波とされている)をみると、地震動の大きさが逆転する。解放基盤での推定値は、ほかの号機では基礎版観測値より大きくなるにもかかわらず、基礎版で最大の上下動を示した6号機だけは小さくなり、全体として、5~7号機側が1~4号機側より小さくなるのである。
 1~4号機側と5~7号機側では、その解放基盤の深さが違う。1~4号機側は総じて深く,およそ290m、一方、5~7号機側は浅いが、6号/7号は同じ167m。やや時代の古い硬い地層が浅いところにあると言うことになる。しかし、6/7号機は同じ傾向になるはず。

 次の表とそれをグラフ化した図は、新しい基準地震動Ssを算定した際の上下動の値である。修正前とあるのは、基準地震動Ssを算定するに当たって、当敷地に最も大きな影響を及ぼすと考えられた海底下のF-B断層の長さを修正する前の上下動推定値、修正後というのは、その断層の長さを,安全保安院の合同ワーキングなどでの指摘を受け、長くした場合の値である。表で分かるように、この修正後の、1~5号機の値は東電の報告書では示されていない。
 
上下動比較表

上下動比較

  これらの数値をつぶさに眺めると、操作が行われていることは明らかである。

  要するに、地震の上下動と地下地質との関係はほとんど解明されてないままであるし、また、原発への影響も明らかにされているとは言えない。
  なお、ここで、建屋基礎版で最大の上下動を記録した6号機が、7号機とともに、再稼働申請されていることを付言しておく。

柏崎刈羽原発東電の敷地周辺地質調査について(1)

柏崎刈羽原発、東電の敷地周辺地質調査について(1)

 原子力規制委員会の審査会合での指示を踏まえ、東京電力は、再稼働に向け、敷地並びに敷地周辺の地質調査を昨年3月以来続けてきた。全体の調査結果の報告にはまだしばらく時間がかかるであろうが、その報告の一部がすでに規制庁の審査ヒアリングで行われている。
 その報告の一部である、敷地東方の長峰背斜と高町背斜の活動性を検証する調査報告は、余りに恣意的であり、地質科学的に見て到底納得のいく解釈ではないので、柏崎刈羽原発活断層研究グループとして、規制委員会に厳正に審査するよう申し入れたい。

 問題になる、調査報告の一部。
 敷地の東方、西山丘陵と柏崎平野との境界に平行して背斜構造があり、その構造がいつ頃成長したものかが問われている。成長運動が現在まで続いているとすると、断層関連褶曲として,その断層活動も活断層の可能性が考えられるとして、詳細な報告が求められたものであろう。
  調査の一部は図に示す刈羽村五日市の丘陵で行われた。赤い実線は反射法地震探査測線で、赤丸はボーリング地点。
位置図 

ここが問題にされた理由の一つが、2007年の中越沖地震によって原発が被災したあと、周辺の地質も改めて調査した際に得られた下記の地震探査結果とその解釈断面に認められた断層。勿論、東電は,この断層は前期更新世の堆積物である灰爪層の下部は切っているが、若い上位の地層は切っていないので活断層ではないとしていた。
旧探査断面
  2007年中越沖地震後の反射法地震探査断面
旧解釈断面
  上の探査断面に対する,東電の層序解釈断面

 ただし、この時の探査は丘陵の南に沿って走る道路と田んぼの縁に沿って行われた。今回(昨年)は、丘陵上で行われている。その反射法地震探査断面と解釈断面は次のようなものである。
 新探査断面
  2014年に丘陵上で行われた反射法地震探査断面
新解釈断面
  丘陵上で行われた地震探査結果とボーリング掘削試料の解析結果を統合して得られた丘陵地下地質に関する解釈

 ボーリング結果を軸にして描いた地下地質断面は下図のようにされた。層序断面

 旧測線と新測線はたかだか150m~200mしか離れていない。勿論、断層が同じ規模で続くとは言えない。しかし、旧探査断面で見られる100m以上に達する落差を持つ断層が、200m離れると無くなり、奇妙な不整合?になっているという解釈。これはちょっとあり得ない地質構造だと思うのだが、いかがだろう。探査断面からは断層を読み取るのが至極当然に見えるのだが。東電は三次元的な解釈を示して説明するべきだろう。

 また、旧解釈断面と比べると、丘陵部にだけ、新しい時代の地層がたまっている。本来、丘陵を構成する地層が広く堆積し、氷河時代に海面が低下したときに川によって大きく削られ、その後、後氷期になって海面が上昇するにつれ、その谷を沖積層が埋める。それが平野。そうすると、古い解釈断面が違うのか、なんだか、東電の解釈は地層の形成とか、地質構造形成過程とかを無視して、無理矢理、断層を消そうとしているとしか見えないのだが。

 いずれにしても、早急に規制委への厳正な審査の申し入れ書原案を作成し、活断層研究グループの会合で検討してもらおう。2月から3月にはまた次の成果報告が出てくるだろうから。
 

 






柏崎刈羽原発、東電による追加調査(1)

東電、柏崎刈羽原発周辺の断層に関する追加調査ー進行状況(1)-


  4月20日付ブログで紹介した、柏崎刈羽原発の追加調査について、私たち研究グループがもっとも大きな問題として1月14日、規制委員会に調査解析を申し入れた刈羽村寺尾の断層露頭について、現状を簡単に報告しておきます。ここでは断層が地殻変動に伴う活断層ではなく、地すべりだとする東電の見解が問題になっていました。

 地元刈羽村の武本さんが、朝早く現地におもむき、貴重な写真で進行状況を報告頂いています。この月曜日、断層の調査を続けているグループで集まり、若干の検討を加えました。まだ、データが十分だとは言えないので、引き続き、検討することになっています。

 1993年当時の論文で、砂採取場で寺尾断層とした断層は、今では直接観察はできません。現状復帰ということで、段差を無くし、松などを植えつけていたからです。改めて、調査することとなって、大規模な伐採とはぎ取りがまず行われました。そのはぎ取り面のスケッチをした上で、どこにトレンチを掘るか、を決めます。3月から始まった調査ですが、ようやく、トレンチを掘る場所が確定したようで、トレンチを掘るための取り付け道路工事が終わったようです。まもなく、トレンチ掘削が始まるでしょう。年内に観察・記載が終わるかどうか、解析結果が報告されるのはどう見ても、来年春でしょう。

 安田層を切る活断層

 はぎ取りで現れた活断層です。これはかっての寺尾断層そのものとは異なります。
犬走り断層3

 左手のやや硬そうな岩石(砂岩層)は椎谷層と呼ばれるおよそ500万年前に海底で堆積した地層です。ここではその上を、右手に見られる、数cm大の角張った泥岩や砂岩礫からなる安田層が不整合で覆っています。安田層はおよそ40万年前から10万年前に浅い海から川で堆積した地層です。
 二つの地層の間に、明らかに直線的に伸びる断層があります。この写真では、断層を斜め上から見ていることになります。
犬走り断層2

  その断層の性状をさらに詳しく観察するために、掘り下げて、断面を観察したところです。
  断層を介して、右側のブロックが落ち込んでいることが分かります。

犬走断層1

  溝を掘って、反対側の断面を見たところです。
  
  角張った礫をたくさん含んだ地層は安田層ですから、この断層は明らかに安田層堆積後に活動した活断層だということになります。しかし、東電はこれは12万年前以降活動していないので、活断層ではないと主張するでしょう。この露頭の上部には安田層の泥岩中に、団子状に火山灰層が点々と含まれています。さらにその上には番神砂層と呼ばれるおよそ10万年前から5万年前の地層が重なっています。断層の連続性を追って、これらの地層との関係を検討する必要があります。仮に、これらの地層を切っていても、東電は、この断層は地すべり性だと主張するでしょうね。同じような性状を持っていた寺尾断層を地すべりだと主張してきたのですから。
 大飯原発敷地内断層で地すべり説を論じた、岡田篤正氏や千木良雅弘氏らに言わせれば、これも地すべりだと言うのでしょうね。聞いてみたいものです。

柏崎刈羽原発、敷地内外の断層の追加調査について

東京電力による柏崎刈羽原発の断層に関する追加調査
 ー地元研究グループの調査を反映・今後の注視が必要ー

 柏崎刈羽原発の再稼働を経営上の重要な戦略とする東京電力は、現在、原子力規制庁審査チームの指摘を受け、柏崎刈羽原発の敷地およびその周辺の断層について追加調査を進めています。この追加調査の内容は、柏崎刈羽原発の安全性に係わって、地元の研究グループや住民団体が長年にわたって解明を求めてきた諸点を含んでいます。ここでは、原発の危険に反対する取組として、柏崎刈羽原発についての断層調査に基づく運動を紹介し、各地での具体的な原発の危険に反対する取組を呼びかけます。

  注:この文章は原発問題住民運動全国連絡センター「げんぱつ」の4月25日号掲載予定のものですが、掲載されるものは編集の都合上、若干変わります。また、東電による下記掲載の図は誌面の都合上、掲載されていません。

追加調査計画 
青い楕円の範囲が敷地で、その調査計画は左上の表や図の左の表に書き込まれている。また、緑の円①が、刈羽村寺尾周辺の断層や褶曲の活動性を検証する調査地点。赤い円②が、真殿坂断層に関連した調査計画地点。

  
 規制委の指摘に基づく追加調査
 東京電力は昨年9月27日、原子力規制委員会に対して、柏崎刈羽原子力発電所の6・7号炉について新規制基準への適合性審査を申請しました。この申請に対して、規制委は11月28日、「申請内容に係わる主要な論点」として、地盤・地震関係9項目、津波関係1項目、プラント関係17項目を示し、今後特に詳細な説明を求めるとしました。この規制委の指摘に対して、東京電力は1月22日の事業者ヒアリングや1月24日の規制庁審査会合において、「敷地近傍および敷地の追加調査計画」を提出しました。そして、島崎邦彦規制委員を始めとする規制庁審査チームによる2月17日・18日の現地調査での「追加調査計画は概ね妥当」とする判断を受け、東京電力は現在、敷地内外で縦坑やボーリング掘削、トレンチ掘削などの追加調査を進めているのです。

 研究グループの長年の取組を反映
 規制庁審査チームが求めた追加調査は敷地近傍の断層や褶曲の活動性をあらためて評価することを目的としたものですが、この追加調査には重要な特徴があります。それは、ほかの原発に比して、柏崎刈羽原発では敷地内だけでなく、敷地外の断層の調査も求め、その調査計画についても審査チームが現地で確認したことです。再稼働に向けた東京電力や規制委の動きを受け、柏崎刈羽原発活断層問題研究会(代表:大野隆一郎)は、1月15日、原子力規制委員会に対して柏崎刈羽原子力発電所の敷地および周辺の断層について厳正な科学的審査を求める要請書(注:本ブログ内別記事に要請文や記者会見の模様あり)を送付するとともに、県庁で記者会見を行いました。この要請は、地元の研究団体である荒浜砂丘団体研究グループが1993年に学術誌に報告・記載した,敷地北東方600mの刈羽村寺尾の活断層など、原発敷地周辺の断層に関して、厳正な科学的審査を求めたものです。規制庁審査チームが、刈羽村寺尾の断層や、敷地の立地する丘陵と東の平野との境界部に想定される真殿坂断層などの追加調査が必要と判断したのは、この研究グループが地元住民団体と共同して長年にわたり敷地周辺の科学的調査を行い、原発の安全性に係わる問題点を指摘してきたからに他なりません。

断層の過小評価を続けた電力と国
 荒浜砂丘団体研究グループが1993年に報告した寺尾断層について、資源エネルギー庁は東京電力の調査報告を一方的に援用して、1994年、これを地すべりとする報告を出しました。更に中越沖地震後、荒浜砂丘団体研究グループが刈羽村西元寺で掘削したボーリングが立証した真殿坂断層の後期更新世における活動性に関しても、東京電力は地すべりとしました。追加調査は研究グループが指摘してきたこれらの断層の活動性についてあらためて調査を命じたということです。
 追加調査は敷地内とは別に、敷地近傍で5地点、おのおの10箇所ほどの群列ボーリングを行い、さらに刈羽村寺尾地点ではトレンチ掘削と群列ボーリングを行います。
 掘削したボーリング試料の分析や解析、掘削トレンチの壁面の観察・記載と解析、それらをもとにしたとりまとめには少なくとも半年以上はかかります。調査報告を受けた審査は現地調査を含めて2~3ヶ月は要するでしょう。勿論、問題とされる断層などについて追加調査を求めたからといって、東京電力による調査結果が科学的に厳密に審査される保障はありません。当然、東京電力の調査報告や規制庁審査チームの審査を引き続き注視しなければなりません。


 安倍自公政権は、規制委が新規制基準に適合していると判断した原発は再稼働させる、としている今、私たちはそれぞれの原発が抱える具体的な危険性について分析・解析し、再稼働を阻止する運動を住民、国民と共同して広げなければなりません。 
    立石雅昭 原発問題住民運動全国連絡センター代表委員

柏崎刈羽原発の活断層,厳密で科学的な調査を規制委に要望

 12月28日にも同趣旨のブログ、upしています。東京電力(株)も、原発の安全審査にあたってきた国も活断層評価がいかにでたらめか、是非、お読みください。不十分なところもあります。コメントいただければ幸いです。

 本日、原子力規制委員会宛送るとともに、柏崎刈羽原発規制事務所長に手渡すとともに、東電柏崎刈羽原発にも参考までにということで手渡し。
 何より厳正で科学的な調査を求めていきます。

       とりあえず、文章のみUpします。添付資料はあすまでおまちください。 

原子力規制委員会委員長
田中 俊一 様 

                   柏崎刈羽原発活断層問題研究会*
                         代表 大野隆一郎


      要 請 書
柏崎刈羽原子力発電所の敷地および周辺の断層に関する厳正な科学的審査について


 昨年9月27日、東京電力(株)は貴委員会に対し、柏崎刈羽原子力発電所の6・7号炉について、新しい規制基準への適合性審査の申請を行いました。
 この東京電力(株)の申請に対し、規制庁内に設けられた適合性審査チームは10月22日に「柏崎刈羽発電所6、7号機の地震等に係る新基準適合性審査に関する事業者ヒアリング(1)」をおこない、そこで、東京電力(株)から「申請の概要」や 「資料1  耐震安全性評価結果報告書と原子炉設置変更許可申請書(柏崎刈羽原子力発電所6,7号炉)の相違点-地質・地震動・地盤評価-」に沿って説明を受け、質疑を行った後、11月28日の「第52回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合」において、「東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6・7号機の申請内容に係る主要な論点」(資料2)を提示されました。
 この論点(地盤・地震関係)は、柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性に関って、2012年8月の安全保安院の「地震・津波意見聴取会」における杉山雄一委員ほかからの指摘も踏まえたものであり、原子力発電所敷地および周辺地域の断層に関わる問題点を指摘しているものと考えています。要は、これらの諸点にかかわる東京電力(株)からの調査・解析報告に対して、規制基準の基本的考えに立ってどこまで厳密に審査されるかです。審査チーム並びに貴委員会における科学的で厳正な審査を切に願います。

 柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性に係わって最も重要な点は、基準地震動を如何に算定するかです。柏崎刈羽原子力発電所の現在の基準地震動は佐渡海盆東縁の断層をもとに算定されていますが、この海域の震源断層の推定にもなお大きな疑問があります。さらには、柏崎刈羽原子力発電所が立地する西山丘陵を含むより広域の更新世中期以降の地殻変動に関する東京電力(株)や安全保安院の解釈にも疑念があります。しかし、ここでは11月28日の「論点」に示された、刈羽村寺尾の断層と敷地内の断層との関わりを中心に検討した結果をもとに、東京電力(株)の解析や当時の国のとらえ方のどこに問題があるかをあらためて指摘することとし、審査チーム並びに規制委員会としての科学的な調査・審査を要請するものです。
1994年1月27日、資源エネルギー庁は原子力安全委員会に対して「東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所付近の西山丘陵地域の断層について」と題する報告(以下、資源エネルギー庁「報告」と略記します)を提出しました。
 この資源エネルギー庁「報告」は、荒浜砂丘団体研究グループが1993年に「地球科学」誌上に掲載した論文「新潟県荒浜砂丘地域に発達する後期更新世の断層」で記述した「寺尾断層」について、研究グループの調査内容について確認することもなく、また、自ら現地で調査・確認することも行わないまま、東京電力(株)の調査報告「刈羽村寺尾西土取場トレンチにみられる断層について」ならびに補足説明「寺尾地点の断層について」(1993年4月5日)(以下、東電「調査報告」ならびに「補足説明」と略記します)に一方的に依拠して作成されました。まさにこの「報告」は電力事業者と一体化した国の原発推進姿勢を露骨に示したものです。貴委員会並びに審査チームが同じ轍を踏むことのないよう、要請します。

 具体的には柏崎刈羽原子力発電所敷地の敷地境界から北東600mの刈羽村寺尾の西方の長鉄工業(株)の土取場(添付資料1:現在は原状回復措置で埋め戻し・植栽されています)において、現地はぎとり並びにトレンチ調査を含む科学的調査を厳正に行い、必要に応じて、荒浜砂丘団体研究グループからの聴取も行うことを求めるものです。

 以下、資源エネルギー庁「報告」と、その「報告」がよって立つ東電「調査報告」ならびに「補足説明」について、地質科学的に見た問題点をあらためて検討した内容を報告します。なお、末尾に参考文献、ならびに報告を補足する資料を添付します。

1.資源エネルギー庁「報告」は地すべりを積極的に立証する科学的内容を欠いています
 資源エネルギー庁「報告」は、寺尾西の露頭にみられる断層を活断層とする荒浜砂丘団体研究グループの観察と考察の不十分さを多岐にわたって論じています。しかし、資源エネルギー庁の論証は、薄弱な科学的根拠をもとに、「寺尾に分布する断層は構造運動による」とする団体研究グループの見解を否定し、地すべりによる断層だと主張しており、「地すべり」説を立証するものではありません。
ここにあらためて強調しておきます。電力事業者並びに安全審査に責を追う国の機関は、柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性、すなわち、敷地ならびにその直近の断層には活動性がないことを積極的に立証しなければなりません。

2.資源エネルギー庁「報告」は尾根に向かって滑る地すべりという非科学的解釈
 寺尾西の土取場におけるA断層および並走する数本の断層(添付資料2)はいずれも現在の地形的高所、すなわち尾根に向かって傾き、その傾斜角は50°以上の高角をなしています。この点について、資源エネルギー庁「報告」は5頁下段で「現地形は新期砂層が堆積した結果として現れているのであって、地すべり性の断層は、地すべりが発生した当時の旧地形や基盤の上限面との関連によっては、現在の地形と調和的に分布しない場合もあり得る」としながら、地すべり発生当時の地形の復元という科学的論証無しで、地すべり説に固執しています。A断層は番神砂層下部(東京電力の現在の解釈では大湊砂層)を切断するだけでなく、さらにその露頭のより高いところに並走する断層群は番神砂層上部をも切断しています。従ってこれらの断層が、資源エネルギー庁が言うように「地すべり」だとすれば、数万年前の後期更新世に発生したこととなります。それ以降の地殻変動や堆積作用、浸食作用に伴って地形的壊変が進むことはありえますが、添付資料1に示すこの露頭の東の谷筋(現地形高度30m以下)から、高角の地すべりでもって、添付資料4のスケッチに示す第1トレンチ南面でのA断層の標高38.32mの高さに滑らせることは物理的に到底不可能です。ちなみに、A断層はこの大きな露頭の最も低いところに位置します(添付資料2)。露頭のより高いところに並走する西傾斜の断層をも含めてこれらの断層を地すべりとする資源エネルギー庁「報告」はこの一事を持ってしても、如何に荒唐無稽な論理を平然と使うかが明らかです。
 
3.断層による変位の累積に関する恣意的解釈
 A断層による変位が下位ほど大きいとする荒浜砂丘団体研究グループの調査結果に対して、資源エネルギー庁「報告」は東京電力(株)の「調査報告」と「補足説明」をもとに、否定しています。寺尾西の土取場の第1トレンチでは、安田層中の亜炭層(下底面)の垂直的変位は南面で約1.1~1.2mです。これは荒浜砂丘団体研究グループのスケッチ(添付資料4)でも、また、東京電力によるスケッチ(添付資料5)でも同様です。それに対して、安田層下底(椎谷層上面)の垂直的変位は南面の垂直的断層で約1.3m、枝分かれした緩傾斜の断層では約1.7mとなっています(添付資料5-1)。明らかにこの南面での断層による変位は、椎谷層の方が大きくなっています。にもかかわらず、資源エネルギー庁「報告」は椎谷層の変位を、東京電力(株)の資料を検証することもなく採用して、断層両側の泥岩と石灰質砂岩の薄そう組み合わせを対比し、断層による垂直的変位量を約90cmとし、A断層による変位の累積を否定しています(資源エネルギー庁「報告」4頁上段)。この椎谷層における変位量の算定はきわめて恣意的です。
 まず、東京電力(株)が対比に用いた泥岩と石灰質砂岩の組み合わせ層準は、断層の右ブロックでは荒浜砂丘団体研究グループの観察では凝灰質砂岩となっており(添付資料4:団体研究グループ報告には記述無し)、左側のブロックで対応するのは椎谷層上部の破線で描かれた層です。断層を挟んでこの泥岩と石灰質砂岩の組み合わせを対比することは誤りです。本来、こうした見解の相違を生み出している岩相について、自ら検証することなく、東京電力(株)の「調査報告」のみを採用する手法そのものが問われなければなりません。
 資源エネルギー庁「報告」は4頁のこの項では変位量のみを議論していますが、東京電力(株)「調査報告」が描いたその変位量がもたらす基本的問題については触れていません。90cmの変位をもたらした断層は番神砂層堆積後の地すべり活動の際に動いたのかどうか、動いたとすると、どういう動きをしたのかまったく言及していません。東京電力(株)の「調査報告」では、この点について、「上部で発生した地滑り性の断層が、下方の椎谷層上限面の急崖・風化により面なし断層が開口した亀裂を利用して椎谷層に達したものと考えられる。」という支離滅裂な説明、すなわち、「開口し、ずれが測定できる面なし断層」説について、資源エネルギー庁「報告」ではさすがに採用できなかったのか、触れていません。垂直の断層に沿って、亜炭が50cmは引きずり込まれているので、この断層が安田層堆積後に活動したことは明らかです。資源エネルギー庁はA断層を地すべりだと主張するなら、椎谷層中の変位量と地すべりとの関係を解析しなければならないのです。
 なお、資源エネルギー庁「報告」はこの変位量に関する項の最後に、構造性断層は下方から上方に向かって枝分かれするのが普通、とする空間的スケールを無視した一般論を展開しています。この「断層が上方に枝分かれしていないから、構造運動に伴う断層活動ではない」、という論理は、東京電力(株)がしばしば用いる論理ですが、数mスケールの露頭で議論するべきものではありません。もし、上方への枝分かれがあるか否かの議論をするならば、少なくとも、この露頭の上方で並走する数本の断層群とA断層との関わりを明らかにして議論するべきです。

4.A断層を切断する逆断層についても論拠無しに正断層と判断
 荒浜砂丘団体研究グループの第2トレンチの南面スケッチにはN40°E63°WのA断層を切断する断層が描かれており、そのうち、北傾斜のN48°W70°Nは、垂直的隔離40cm以上の逆断層です(添付資料4)。これについて資源エネルギー庁「報告」は4頁下段で、「北傾斜の断層は、見かけ逆断層の変位が示されているが、断層の走向・傾斜から幾何学的に正断層であると判定される。」と、何らの論証無しに逆断層を否定しています。資源エネルギー庁「報告」はまた、第2トレンチ北面の逆断層センスの断層についても、「東京電力のスケッチの走向・傾斜に基づき検討した結果、正断層であると判断される」、と断定しています。荒浜砂丘団体研究グループの第2トレンチ南面のスケッチ(添付資料4)をもとに、A断層を切る北傾斜の断層を3次元的に描いた図を添付資料6に示しましたが、これがなぜ、正断層なのでしょうか。
 一方、資源エネルギー庁の「調査報告」は「地すべり性の断層群の中でも局所的な応力によって逆断層が生ずることがあり得る」(4頁下から3行目)と又、一般論を示します。地すべりの末端や、大規模な地すべりに続く小規模なものの中には逆断層センスがあり得ますが、この寺尾西の断層について言えば、高角で滑っている途上にある地塊で元のすべり面、ここではA断層を切断する逆断層が地すべりでできる条件を示して議論するべきです。

5.褶曲軸と断層群の関係について
 資源エネルギー庁「報告」は、荒浜砂丘団体研究グループが、A断層は西に北東―南西に走る後谷背斜に並走する縦走断層としたことに対して、具体的な断層の走向が背斜軸と斜交することをあげ、「寺尾の断層は縦走断層とする」主張は妥当ではないとしています。確かに、後谷背斜の北東-南西方向に対して、A断層を含む、寺尾西の土取場でみられる断層群の走向は全体としてみると南北を中心に10°前後東西に振れた走向を示します。従って、縦走断層の定義はさておき、厳密な意味で「縦走断層」というにはあたらないといえます。しかし、問題は、寺尾西の土取場の断層群が、後谷背斜の成長に伴って形成されたと言えるかどうかです。この点については、東京電力(株)は2012年8月10日の安全保安院の「地震・津波に関する意見聴取会」で、敷地内の重要構造物の直下にある断層(現在の解釈で言えば、30万年~20万年前に活動)の形成過程について、褶曲軸に斜交する高角系断層(α・β)は地層が褶曲する際に形成される、という説を述べています(添付資料7)。古安田層堆積中に褶曲の成長に伴って断層が形成されたとするとらえ方です。東京電力(株)ならびに規制委員会・審査チームは最新の知見やとらえ方を加味して、寺尾の断層群と後谷背斜の成長との関わりを解析することが求められます。

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 以上検討したように、資源エネルギー庁「報告」は、刈羽村寺尾西の断層群について、「安全性」を確認したとは言い難いものです。私たちは、貴規制委員会ならびに審査チームが、柏崎刈羽原子力発電所の安全性について科学的に確認することを強く求めるものす。

以下、私たちが寺尾断層の活動性がなぜ柏崎刈羽原子力の耐震安全性にとって重要な問題だと考えるかについて、付言します。

 柏崎刈羽原子力発電所の敷地内には、「論点」で指摘されるように、原子炉建屋を含む重要構造物の直下に計23本の活断層が存在します。東京電力(株)の報告では、これらの断層の活動年代はいずれも、あらたに定義した「古安田層」の堆積中、すなわち、30万年ないし20万年前としています。これらの断層の活動年代を推定する上で上載する「古安田層」の分布や堆積年代についての層序学的問題もありますが、ここでは、敷地とその周辺の断層の活動性について、寺尾の断層群との関わりを検討します。

1.東京電力(株)は、敷地内およびその周辺に発達する番神砂層を切る後期更新世に活動した断層をいずれも地すべりとして、地震動やずれによる重要構造物への影響の解析を意図的に無視してきました。具体的には、添付資料8に示す3号炉の原子炉建屋や4号炉のタービン建屋直下に走る落差の大きい断層①、②、さらには、敷地3箇所で記述されている番神砂層を切断する断層(添付資料9)についても、地すべりということで、設置許可(変更)申請後ならびに中越沖地震後もその解析を怠ってきました。寺尾西の断層群の解析の非科学性を鑑みれば、重要構造物直下の断層や、敷地内の番神砂層を切断する断層の解析に大きな問題が潜んでいます。東京電力(株)のいう地すべりについて、規制委員会並びに審査チームとしてあらためて科学的な検討を求めます。

2.原子力発電所が立地する西山丘陵と、その東の別山川沿いの平野の間には丘陵側の隆起と平野の沈降をもたらした断層が推定されます。北部は真殿坂断層ですが、南部はこれまで明確には確認されていません。
 この丘陵と平野の境界に推定される断層は、別山川流域の平野地下において、安田層相当層が下位に分布し、沖積層が不整合で重なる層序関係(添付資料10:新潟県、2000)は、少なくとも安田層堆積以降の断層活動による沈降を物語るものであり、東京電力などが主張する、第四紀後期の変動はなく、安田層と沖積層は海水準の変動に伴う浸食地形を埋積したとする説明は非科学的です。さらに、荒浜砂丘団体研究グループが2009年刈羽村西元寺で掘削したボーリング資料の解析結果において、阿多鳥浜火山灰を含む安田層相当層が、近接した東京電力によるボーリングでの資料に比して、20m以上の落差を示したことは重要です(添付資料11)。荒浜団体研究グループが掘削して解析したこの落差について、東京電力(株)は科学的検証も不十分なまま、地すべりによると判断して、中越沖地震の被災後に柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に走った経緯があります。ここにも東京電力とそれに追随する国の審査体制の大きな欠陥が見えます。あらためて、規制委員会ならびに審査チームとして真殿坂断層を含む、丘陵と平野の境界に推定される断層についての科学的調査・解析を求めます。
 ちなみに、東京電力(株)は2011年8月11日、新潟県の地震、地質・地盤に関する小委員会において、添付資料12のような、敷地内小断層の形成過程に関わって、JNESの上田圭一氏による実験結果を参考資料として提出しました(添付資料12)。この資料に示された実験結果は、真殿坂断層の成長に伴って、敷地内を含む西山丘陵で表層部に断層が形成される可能性を示唆しています。これは当然、敷地内にとどまらず、寺尾西の断層群との関わりをも示唆します。



 以上、柏崎刈羽原子力発電所の安全性に関わって、刈羽村寺尾西の土取場の断層群と敷地内外の断層群との関わりについての検討結果をまとめました。貴規制委員会並びに新規制基準への適合性審査チームが、私たちの検討結果を真摯に受け止め、問題点について科学的に解明されることを要望します。

参考資料
1. 荒浜砂丘団体研究グループ(1993)新潟県荒浜砂丘地域に発達する後期更新世の断
      層。地球科学、47巻4号、339-343。
2. 東京電力、    刈羽村寺尾西土取場トレンチにみられる断層について。13頁。
3. 東京電力(1993) 寺尾地点の断層について。「補足説明」
              東京電力(株)柏崎刈羽原子力建設所。5頁。
4. 資源エネルギー庁(1994) 
      東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所付近の西山丘陵地域の断層について。
      資源エネルギー庁原子力発電安全企画審査課。23頁。 
5. 新潟県(2000) 新潟県地質図および地質図説明書(2000年版)。
      1/20万地質図2葉ならびに説明書200p. 新潟県。
6. 上田圭一(2011)模型実験による逆断層・活褶曲帯の発達過程の研究。
      電中研報告、N10049、32p.
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立石雅昭

Author:立石雅昭
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 福島原発の事故直後に新潟大学を退職。地質学を専門としています。それまでも原発の地盤問題に携わってきましたが、福島原発の事故はあらためてその恐ろしさを認識させてくれました。原発ゼロの運動を広げるために、新潟を中心に活動していますが、twitterやfacebookで書ききれない情報や思いを伝えられればとの思いからブログを始めました。よろしくお願いします。

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